2009年11月28日(土曜日)
楽天Webディレクション&デザイン2009: 常に改善、常に前進 変わり続ける楽天市場トップページ!
公開: 2009年12月12日23時30分頃
メールマガジンの話の後は、「常に改善、常に前進 変わり続ける楽天市場トップページ!」。楽天市場のトップページを改善してきたお話。
楽天市場トップページ
- トップページ担当: 5名
- 1997年5月開始: 13店舗、売上げ32万円。売上げの半分は三木谷氏購入という噂も……
- 現在は3万店舗、600億円に成長。
- 2008年の注文実績は8900万件、これは0.3秒に1回の購入実績
- トップページのPVは490万/1日、1秒に57回アクセスされている
変遷
- 2005年にはほぼ現在のスタイル
- 細かなチューンナップを繰り返す
- 大幅に変更してしまうと、蓄積されたユーザー学習効果が失われることにより、重要指標への影響リスクが大きい
改善の例
- 商品検索経由の購入転換率が高い
- 検索の利用率が上がれば流通アップ→目立たせたい
- 検索窓を大きく?
- ABテストを実施: 従来ページ90% / テストページ10% (テストパターンの数だけ案分)
注意事項
- 対象の母数を揃える (表示率を揃える)
- 他要素への影響度合いも比較する (検索は良くなったが、他は悪化→×)
- テスト期間やサンプル数を考慮する。期間が短い場合は表示率を上げる
成功事例
検索窓のサイズ
- 検索窓の幅を変更: A.昔のまま / B.幅が広いバージョン
- 結果: B の流通貢献度 +0.36%
- 0.36%は小さく見えるが、半年で13億円の改善。この規模の改善を10箇所で行えば、130億円のプラスとなる
テキストの修正
- A.シューズ / B.靴
- 結果: 「靴」の方がクリック率 +17.5%
- ただし、効果についてはこの項目単独で判断しているのではなく、他の要素のクリック率も考慮している
バナー
- デザイン・モーションの異なるパターンを作成してABテスト
- 半年かけてFlashバナーのスタイルを確立した
- 結果: 動的Flashバナー +0.24%
失敗事例
ジャンル一覧の改善
- ジャンルが探しづらいのでは?
- ジャンルをグルーピング化してアイコン化 → 長期間試したが、従来のものの方が良かった
- オンマウスでサブジャンルをポップアップ → サブジャンルへの移動は増えたが、戻ってくる率が非常に高かった
- そのようなニーズがなかった事が分かった
- とりあえずやってみる、の精神。仮説には限界がある。
- 失敗は成功のもと。失敗を繰り返すことによって成功要因を絞り込める。
- テストは小数でやっているので、リスクは大きくない。
- 事実に勝る根拠はない
テストの落とし穴
- 計算できる馬ハンス : 試験者を変更・目隠しをしてテスト・群衆の中でテストしても正解を出した。出題者らが答えを知らない状態で出題すると……。
- 数字だけを根拠にしていると、根本を疑うことができなくなる
- 結果を疑うことも大事
Q&A
- 全部署・全ページでABテストができているわけではない
- トップページにはサーバサイドのツールを入れている
- ABテスト中に「これは何?」などの問い合わせを受けたことはない。そもそも、それほど悪影響のあるテストはしていないし、おかしいと気付いても問い合わせするほどではないのではないか。
ABテストで結果を出してきたというお話ですね。興味深いのはジャンル一覧の改善が失敗したという話。実際には画面キャプチャつきで説明されていたのですが、ビジュアルつきで分類されたもののほうが明らかに良さそうなのに、それが負けたというのは驚きました。負けっぷりの詳細が分からないので何とも言えませんが、そもそもジャンルはメインで使われていないので目立たせても仕方ない、ということなのかもしれないですね。
- 「楽天Webディレクション&デザイン2009: 常に改善、常に前進 変わり続ける楽天市場トップページ!」にコメントを書く
楽天Webディレクション&デザイン2009: 1,000万人のメルマガ購読者を飽きさせない仕掛け
公開: 2009年12月12日12時45分頃
楽天ブックスの話の次は、「1,000万人のメルマガ購読者を飽きさせない仕掛け」。メールマガジン「楽天市場ニュース」のお話。
メルマガ2種類
- 楽天市場から送っているメルマガ
- 店舗から送られているメルマガ
メールマガジンの役割
- ユーザーリアクションによる売上げ貢献
- 広告媒体
- 新規ユーザー獲得
- 既存顧客育成
- マーケティングツール
- 売上げ比率に占める広告の割合が大きい。
- KPIとしては配信数、開封数・開封率、CTR、CVR、売上げ。
- メルマガからの売上げは順調に推移
- 流行発信・トレンド創出の役割も。例: ビリーズブートキャンプ、花畑牧場、六厘社つけ麺、端っこグルメ、訳ありグルメ&グッズ特集など
- テレビで放映された商品をいち早くお届け
- ニュース性のある話題をテキストメールで配信
楽天市場ニュースの規模感
- 2009年11時点で、1060万通を発行
- 朝日新聞の発行部数よりも多い
しかし配信数と反比例し、CTRは右肩下がり
媒体改善戦略
- 「送客」に絞って改善
- クリック数を上げてユーザーの定着をはかれないか?
- クリック数を上げる→活性化する→定着する→開封率が上がる
ナビゲーションの改善
- first viewで逃げられないように。first viewは雑誌の見出しのような役割
- これまで: 目次的な役割なのに情報が薄い
- 改善: first viewで多くの選択肢を見せる
- 多様なユーザーにいろいろな選択肢を提示する。例: ポイントアップには興味ないが、スイーツに興味がある
結果、17.2%アップ
コンテンツのマンネリを改善
- 掲載商品が偏りがちだった
- 異なる企画なのに、同じ商品・同じ価格 (出稿店舗の偏り、複数の店が同一の季節商品に注力)
- 改善: ユーザにマッチした企画、メルマガ読者限定のシークレットセール
パーソナライズの強化
- 男性版・女性版を出し分ける
結果、29.6%アップ
継続改善のための仕組み
- 号ごとに想定クリック数を算出 (過去のデータから予想)
- その目標に対するアクションを導き出す。プロデューサー・ディレクター
- 結果を分析
今後の取り組み
- 「楽天スーパーDB」を活用したコンテンツ供給 : グループ内でのユーザーの行動履歴を蓄積。たとえばトラベルで北海道旅行を購入 → 楽天市場でカニを表示
- メルマガのパーソナライズも強化 : ユーザを7種にカテゴライズしてパーソナライズ。パーソナライズでCTR67%、CVR130%アップ
しょっぱなのトークセッションで駄目出しされてしまったメールマガジンですが、いろいろ工夫しているのだというお話。
発行部数が1,000万を超えているというのは正直驚きますね。もっとも、そのうちの何人が自分の意思で購読しているのかは良く分かりませんが……。
つづきます: 常に改善、常に前進 変わり続ける楽天市場トップページ!
楽天Webディレクション&デザイン2009: 「楽天ブックス」ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善
公開: 2009年12月11日18時40分頃
楽天トラベルの話に続き、「『楽天ブックス』ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善」。UCD (user-centered design, ユーザー中心設計) とユーザーテストのお話ですね。
UCDについて
- 楽天グループのユーザビリティに関する取り組みは遅れている。
- 今年からSiteCatalystを全社導入。
楽天ブックスについて
200万点以上を取り扱うオンライン書店。Amazonと比較すると、以下のような点が特長。
- 楽天スーパーポイントが貯まる・使える。
- コンビニでの商品受け取りが可能。
- 楽天市場との連携 (市場での検索結果にブックスの商品が出る)。
利用者の男女比はほぼ半々で、これは市場とほぼ同じユーザ構成。
UCDに取り組むきっかけ
- 担当部署の要望がユーザーを向いていないことがあると感じた。
- サイトを使っているのはユーザー。使ってもらえなければ意味がない。
検索の改善
- ユーザテスト・データ解析を実施
- 当時、ログ解析レポートがほとんどなかった
- ユーザテストを依頼したいが、お金・時間がない……。
- 自分で実施!!
調査結果
- 中吊り・テレビを見て特定商品を求めて来る人が多い
- レビュー、画像・商品名を重視
- 検索→UUが多いのに流入率が低い
改善の方針
- 少ないステップで希望の商品をヒットさせる→インターフェイス改善
- 検索データの範囲を広げる
- ユーザニーズ
- 目的の商品を早く正確に見つけたい
- レビューを見たい
- 大きい画像で商品を確認したい
ビジネスニーズとすりあわせ
ペーパープロトタイピングの実施
- 検索窓をたくさん作った方が良い?
- 著者で検索 / 出版社で検索 / アーティストで検索、を用意→どれに入れて良いのか分からない、分かりにくいという結果に
- など、など
テスト環境を構築して再テスト
- 検索結果のレビューの星がクリックされる → リンクを設定
- 画像大小バージョンを用意 → 最初から画像が大きい方が良い、デフォルト大にした
ABテスト
- 新旧で画面の出し分け
- 新サイトでは流入率が約4%アップという結果
- リリースしたところ、流入率が約2倍になった
リリース後
- 再度ユーザーテストを実施
- おおむね好評
その後の改善検討事項
- 「もしかして」機能
- ジャンル間違いのケースに対応 → ジャンル内での検索結果がゼロ件の場合、全体検索候補を出す
UCDのメリット
- ユーザテスト → 問題点を客観的に判断できる
- エンジニアの考え方自体がユーザ寄りになってくる
- 社内で行うと短期間・低コストで実施可能 → 経理・人事・総務の人を活用
今後の課題
- UCDについての啓蒙 → 10月リニューアル後、ユーザテストの費用が出るようになった
- ユーザテストの技術、ノウハウ → 実施できる人は少数。増やしていきたい
Q&A
- ペルソナの想定は? → 2人。「小林真弓32歳 : 女性子持ち、月に1~2回本・雑誌を買う。テレビのはやりと文庫本」「加藤大介 : DVDマニア、安く早く。上司に言われてビジネス本も買う」
- 11月の楽天ブックス売れ筋は? → 巻くだけダイエット (www.amazon.co.jp)
- アマゾンとの差別化・意識している点は? → 楽天市場のユーザー、特にプラチナ会員の利用が多い。ポイント指向の人にアプローチ。
- 注意している点は? → ユーザーの「行動」を見る。「意見」は必ずしも聞かない。
- アイトラッキングなどは? → UserInsightはマウストラッキング可能だがアイトラッキングはできない。ユーザテストを専門のコンサルに依頼すると、アイトラッキングができるのが大きい。
- 自分でやる場合と外部に依頼する場合の差は? → 検索に関しては、あまり差がなかった。サジェストなど、機能的な部分でいくつか指摘があった程度。
楽天とUCDというのもなかなかしっくり来ない組み合わせだ、と思われる方もいらっしゃるかも知れません。最初のトークセッションでも「メールマガジンのチェックボックスが……」という話が出ていましたが、楽天グループはユーザビリティにはあまり熱心でないように見えがちです。
しかし実際には、ユーザビリティを高めたいと思っている現場の方はずっと前から大勢いらっしゃいました。前後のセッションにもありますが、今年になってアクセス解析やABテストの環境が整った、というタイミングです。これは、ユーザビリティ改善の結果を数値化しやすい環境になったということでもあります。
こういった背景から、あるいは今年は楽天のユーザビリティ元年として位置づけられるのではないかなと、そんなふうに思いました。
つづきます: 1,000万人のメルマガ購読者を飽きさせない仕掛け
楽天Webディレクション&デザイン2009: 日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス
公開: 2009年12月11日1時20分頃
アクセス解析の話の後は、「日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス」。
楽天トラベルについて
- 日本最大級を自負
- 国内・海外どちらも対応
- 国内宿泊中心
サイトの改善
- UIは論理の集積によって形をなすもの。感覚ではなく論理の集積
- 良いところを積み上げる
- 悪いところをつぶす
- フルリニューアルは、積み上げてきたものを失うリスクがある
- 改善の手応えがWebの醍醐味
サイト改善のフレームワークと実例
- 流通構成比 (発生する売上げの比率) を考慮し、その割合の大きい経路を選定
- 経路の分析と問題点の洗い出し
- 「問題児」の分析と改善案の検討
- 改善の実施
流通構成比のツリー
- トップ
- 日付検索 (X%)
- ワード検索 (Y%)
- 地図検索 (Z%)
もっとも多いのは日付検索 (XはYやZより大)。トップで日付を入力したあと……。
- (3割)→エリアを選択
- (8割)→プラン一覧
- (5割)→施設ページ
- (3割)→施設プラン
- (5割)→プラン詳細 (7割リターン)
- (3割)→施設プラン
- (5割)→施設ページ
- (8割)→プラン一覧
と、経路を確認した上で、「問題児」ページを発見する。
前後のページ、類似ページと比較して戻り率、ドロップ率が高いページが問題児。
問題児の解決
- 改善の目標を設定して取り組む。
- ページの存在意義を確認。このページでユーザーに何を提供する? 本当に必要? 場合によってはページをばっさりカットする勇気も。
改善する要素
- 重複性がないか : 他のページで訊いたことをまた訊いていないか? 例: トップで日付を選択しているのに、下位のページでまた訊かれる→Cookieに日付を保持して重複をカット。
- 有効な導線が死んでいないか : このページからどこへ流すのが効果的か
- ユーザーニーズを満たすサービス(機能)があるか? 例: プラン一覧に並び替え・絞り込み検索機能を実装
これら改善により、月間6億円の売上げアップ
AB分析の実施
- 旧ページ・新ページを両方用意
- 最初は新ページの比率を低めにしてスタート
- 良さそうなら新ページの比率を上げていき、最終的に100%に
要件の優先順位
- 上流から手を入れていく (上流の方が流量が多い)
- 効果と工数を軸に取ったポジショニングマップに各項目をプロットして、優先度を決定
体制
- 管理者・プロデューサー・フロントエンドエンジニアを組み合わせる
- 要件定義から一緒にやっていく
Q&A
- ABテストでは季節変動などの要因は考慮している? → 楽天トラベルの商品には季節要因があるので、ABテストを長めに行っている。3ヶ月やれば変動要因は吸収できると考えている。
- チームは社内? → 社内。
- 目標を腹に落とす、納得させる。いくら売上げを伸ばすのか、数字を出して、そこへ行き着くための手法を考える。今までのユーザーを離反させない・検索の使い勝手が重要。
- 楽天トラベルでは、10%は自由なことをして良い。iPhone、twitterなどへの取り組みはそこから生まれてきた。
いわゆる「PDCAサイクル」を実際に回していて、そのプロセスが確立されているというお話ですね。
印象に残ったのは、現状分析、目標設定、検証といった全てのプロセスで数値の裏付けがあるということ。特に、リニューアル実施前にABテストで数値を出すという点について、実施しているサイトはそう多くないのではないでしょうか。
前後の話にも出てきますが、楽天トラベルに限らず、楽天グループ全体として、行動の根拠として数値の裏付けが求められているようです。
※ECサイトでは売上げの数値がはっきり出るから、ということもあるでしょうけれど、前の話に出ていたように、インフォシークのようなサービスでは「送客率」を測定していて、やはり数値ベースの評価になるようです。
楽天Webディレクション&デザイン2009: 月間50億PV、社内ユーザー1000人のアクセス解析で分かったこと
公開: 2009年12月10日1時40分頃
RIAの話に引き続き、「月間50億PV、社内ユーザー1000人のアクセス解析で分かったこと」。
ちなみに、タイトルの「社内ユーザー1000人」というのは、アクセス解析の結果を利用するサイト運営者が1000人いるという意味です。
何故アクセス解析?
- 思いつきでの改善には限界がある、逆効果のこともある。KPI(重要業績達成指標)として使いたい
- SiteCatalystを導入。今年になってグループ全社導入を実施。サイト単位の解析ではなく、グループ全体での解析を進めている。「楽天経済圏」での測定
アクセス解析の導入
- ギャップ分析 : 事実がゴールとどうかけ離れているか
- 分析方法や深度が事業や人によりバラバラ : ツールも色々あった。GA、合併前から使われていた社内ツール、Analog等々。UserInsightは現在でも併用している。
- 標準化と知識共有に課題 : 成果を挙げた人への評価もできていない。
- 専任チームを結成 : 編成部 アクセス解析・最適化推進チーム 2009年頭に結成。Omnitureから2名常駐、ほか数名サポート
- グループ47社のうち、導入済みだったのは13社のみ。今年9月までかけて全社に導入。
- SiteCatalystをカスタマイズ導入。後半は「Test&Target」も
- 測定コール数 +27% (月間50億)、社内ユーザー数 1.5倍 (約1,400) に
アクセス解析の手法
- 流入分析 / SEO効果の測定
- SEOのゴールを設定 : 訪問・3000、売上げ5%アップなど
- フォーム分析 : SiteCatalystのプラグインで実現。どこでエラーが起きたのか、どの入力項目にフォーカスした状態で離脱したのかを測定。
- Excelによる定型レポート : 特集のURLを入れるとPV、流入もと、商品ごとのCTRなどが表示される。運用を楽にしないと普及は難しい。
Flashの計測
- Flashバナーのマウスオーバーやクリックを計測。HTMLのページよりも細かい単位で計測が可能となる。
動画の計測
- 例: オードリーの販促ビデオ
- 時間べつの再生時間 (何分まで見てくれたのか) を測定。内容が悪いのか、2分では長すぎるのか、などを判断。
- グループ内でのCV数・売上げが分かるため、動画クリック→オードリーのブログへ→商品リンクをクリック→購入、というルートも追跡可能。
- 動画は離脱率が低い。8割もの人が、続けて別の動画を見る。
オフライン成約データとの連携
- サイト→資料請求・電話→成約というルートも測定
- 通常は資料請求の回数しか取得できない。Salesforceと連携してIDを結びつけることで成約率を取得。
グループ全体の計測
- 通常はサイトごとに計測するので、楽天市場→楽天トラベルの遷移は楽天市場から見ると「離脱」になる。これを「送客」として測定 (グループ全体を一つのサイトとみなして測定する)。
- 楽天ブログ→市場の送客や時間をまたいだ購入なども測定。
- どのサービスがどのくらいグループ外からの流入に依存しているのか、グループ内外比率を測定できる。
- インフォシークなどは外からの集客を担う位置づけなので、外部比率が多い方が良い。他のサービスは、グループ内部からの流入を増やしたい。
- サービスの種類の組みあわせ (どのサービスからの流入なのか) によってCTRが変わる。
ABテスト
- 一部分だけを出し分けることもできる。AB50%ずつ、だけでなくパターンを増やしたり比率を変えたりする。
- Refererによって出し分ける、初回訪問時は出し分ける、なども可能
- 10%の危険率で検定して3%の効果、などという感じで数値を出す
やっていくこと
- 定点観測による早期警戒 : 定点観測によって異常な変化を検出し、警告を出す。たとえば、Google経由での「オーガニック」へのランディング数が急変→Googleのアルゴリズムが変わっていたことが判明
- データ計測 : データ量が限界に近付く (グループ全体で毎月50億PV)。BIなどの併用も検討
- 解析の底上げ : PV・UUなど旧来の考え方から脱却、手法のパターン化、共有
- ガバナンス : 経営判断に使えるようにフロー化
楽天グループはアクセス解析をガンガンやっていると思っていましたが、昔からやっていたのは市場やトラベルといった主要サイトだけで、グループ全体に行き渡ったのは今年に入ってからなのですね。
グループ全体で運営手法を統一していく、というのは巨大グループ企業に共通した課題だと思いますが、楽天の場合はサービス買収でグループを大きくしてきた経緯もあるので、運営側のツールを統一するだけでもかなり大変なようです。
つづきます : 日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス
楽天Webディレクション&デザイン2009: 楽天グループ、RIA表現への取り組み
公開: 2009年12月9日14時25分頃
twitterの話に引き続き、「楽天グループ、RIA表現への取り組み」。スピーカーの竹部さんは普段はIA(情報設計)の話をされることが多いそうですが、今日はRIA推進の立場でのお話でした。
時間が押していたためか話のペースがかなり速く、手元のメモもだいぶ歯抜けです。
チームのミッション
- 1. richUIの検討 : サービスUX向上、バックオフィス作業負荷軽減
- 2. 事例共有、ノウハウ蓄積 : 共有方法の模索・勉強会の開催
- 3. 効果測定・課題点 : SiteCatalystの導入、SEO・アクセシビリティの標準化、標準コンポーネントの整備
RIAに期待すること
- ユーザビリティとマネタイズ : 「儲からないでしょ?」→儲かるUX、概念モデルと行動モデルの乖離
- 新しいユースケース : AIR・Silverlight / 番組中でその商品を買わせる、GPSでレコメンド、などの新しい試みも出てきている
- Flex : ファッションサイトのデモ / 画面遷移に費やしていた時間を、なにを買おうか悩む時間に
- 楽天アフィリエイトで商品を出すパーツのUIをリッチなものに変更したところ、CVRが2.3倍になった
社内での共有
- SharePointを利用
- デザインパターンの事例を共有
課題点と今後の取り組み
- UXの評価方法。事前にROI(投資対効果)を示せるのか
- 定量評価なのか、定性評価なのか
- 「今はお金がないからお気に入りに入れました」→購入していないが評価すべき
- RIA開発の標準化 : UI・インタラクションのコンポーネント / UXガイドラインの整備 / マルチデバイス対応
Q&A
- Q. IAとして意識していることは? → ナビゲーション部分。RIAは画面遷移が発生しないので、アニメーションなどでユーザに説明する。
全体的には、これからという印象。そもそも楽天とRIAとが結びつくイメージがあまりないかもしれませんが、実は楽天もRIAC (www.ria-jp.org)の会員企業 (www.ria-jp.org)なのですよね。
楽天グループでは数値が重視される傾向にあるようですが、RIAの導入でどれだけ数字(売上)が出るのか定量的に予測することはなかなか難しいようで、その点が大きな課題となっているようです。
楽天Webディレクション&デザイン2009: 「楽天トラベル」つぶやきながら見えてきたTwitter活用3つのポイント
公開: 2009年12月8日13時50分頃
トークセッションの後は会場AとBに分かれて、それぞれで異なる話が聞けるという形になっていました。つまり、二者択一でどちらかを選ぶ必要があります。
私が選んだのは、「『楽天トラベル』つぶやきながら見えてきたTwitter活用3つのポイント」。楽天トラベルの林さんのお話です。プログラムを見ると30分の話のように見えますが、実は30分で2話入っているので、実質15分。ほとんどライトニングトークですね。
楽天トラベル公式twitterアカウント
- 楽天トラベル公式twitterアカウントは @RakutenTravel (twitter.com)
- 「つぶやき娯レンジャー」と称して5人で担当。林さんはアカ。
- 2009年8月3日に、公式twitterアカウント開設の提案を行った。
- 目標は、「多くの人に楽天トラベルを好きになってほしい」ということ。売上げ目標は持っていない。
つぶやきの特徴
- 時間と共に注目度が低下する。
- ただし、RT されると注目度が復活、長持ちする。RTされやすいつぶやきが重要。
※RT = retweet、他人のつぶやきを転載すること。頭に RT: と書いて retweet であることを明示するのがならわし。
方針
- 1. reply、フォロー返しもする。「旅行に行く予定が無くても、フォローしていて楽しいアカウント」を目指す。
- 2. つぶやきたくなる企画を考える。頭文字俳句のようなネタなど。ただし、企画自体を知ってもらうのが難しい。他のメディアと組み合わせる試みが必要かもしれない。
- 3. 中の人の個性を出す。フレンドリーな対話を通じて信頼につなげて行く。「オフィスにバナナトラップを仕掛けてみました」「ちょ、楽天トラベル何やってるの」というようなやりとりも。
twitterのメディア特性を理解する
- 流れていく / 堅苦しくない / つぶやく瞬間が大事
- twitter自体がこれから成長していくメディア。リスクを恐れず試行錯誤して行く
Q&A
- Q. つぶやきにどのくらいの時間を割いている? →業務の合間でつぶやいたりしている。業務に支障を来さない範囲で。twitterの特性上、短時間に大量につぶやくのはNGなので、時間をまとめて、というのはしていない。
- 予約への貢献は? → 正直難しい。たまに、すぐに予約につながる反応があることもある。タイムセールのようなものには効果がありそうだが、未知数。
メモだけだと分かりにくいですね……。実際は写真やグラフなども交えてのプレゼンテーションだったのですが。
replyやフォロー返しもしている、というのがポイントでしょうか。企業の公式アカウントでのフォロー返しには賛否両論ありそうですが、目標が明確にされているので、迷わずにこの方針で行けているのでしょう。
後で出てくるのですが、楽天トラベルでは就業時間のうち10%を好きな研究に宛てることができるそうで、twitterの活用はその中から出てきたものだそうです。そういう経緯だからこそ、具体的な売上げ目標がなく、自由にできているのかもしれません。
つづきます: 楽天グループ、RIA表現への取り組み
楽天Webディレクション&デザイン2009: トークセッション
公開: 2009年12月8日0時50分頃
「楽天Webディレクション&デザイン2009 (corp.rakuten.co.jp)」(RWDD2009)というイベントがあったので参加してみました。
楽天のテクノロジー系カンファレンスは何度も開かれているのですが、今回のRWDDは編成部の方が開催されたものです。システム開発の部門ではなく、実際に普段サイトの運用を行っている現場の方たちのお話が中心です。
最初はトークセッション。三木谷氏、iモードの立ち上げに携わった夏野剛氏、元スクウェア社長の鈴木
以下、気になったところを断片的にメモ。話がつながっていないように見えるのはメモの品質が低いせいです。その他、不正確な部分もあるかもしれません。
パネリスト自己紹介
- 鈴木さんと夏野さんが知り合ったのはiモード版のファイナルファンタジーをつくったとき。
- 楽天立ち上げ当初は、ファイルをいかに軽くするか考えていた。更新感、ライブ感を重視 (当時は更新がほとんどされないサイトが多かった)。売っている人の顔が見えるような、親近感を重視 (楽天用語で「
人気 」と呼んでいる)。 - iモードは11年目。コンシューマビジネスの面白いところは、ウソが通用しないところ。手を抜いたり、「システムの都合で……」などといって妥協したりすると、売り上げに直結する。それが逆に面白い。結果が出せるので、やる気がある人に向いている。実は当時は、iモードがうまく行くとは思っていなかった。これは「ドコモを育てた社長の本音 (www.amazon.co.jp)」という本にも書いてあることで、秘密でも何でもない。「当時としては」ぎりぎりのところまで妥協しなかった、というのが成功の理由だと思っている。
楽天の良いところ、駄目なところ
- 楽天は日本を変えている。流通の構造を変革させた。夏野さんは都会の店ではなく、広島や岡山のワイン店からワインを買う。ワインは知識がないと、立地が良くても仕入れができない。楽天が提供するのは共通プラットフォーム。店ごとにカード番号や送り先を入れ直さなくて良い。
- ネットの利点は、こまめに改善が効くこと。ある程度の完成度で出して改修を加えていく、というやり方が可能。いかに早く・細かく・データに基づいて直していくかが重要。
- 小さな実験ができる。1日やるだけで、だいたいわかる。CTR・CVRを見る。
- 楽天で買い物するとき、メールのチェックボックスを毎回外す (会場笑)。楽天から来るメールのクオリティが悪すぎる。ショップから来るメールは良いが、楽天からのメールはばっくりしすぎていて刺さらない。デフォルトオンを押し通すのは良いことだと考えるが、メールのクオリティが低いことが問題。
- iPhone向けはトップページだけで終わり? →今やってます。→供給側から見ると提供のスピードは早いのだが、ユーザー側から見ると、もっと早くしてほしいとなる。
- そろそろWebオンリーの時代は終わる? 専用アプリで、というのも考えている (特に、店舗側のインターフェイス)。
- Webでもできる。今はWebで専用アプリと遜色ないインターフェイスが作れる時代。
- 組織が大きくなると硬直化してくる。新しいトレンドを若い人からどうやって吸い上げるか。楽天では「執行役員2.0」という試みをしている
- 日本には大きなポテンシャルがある。個人金融資産1500兆円。国内に金は唸っている。
- 金を払わなくても働くエンジニアがいる。勤労意欲のレベルが高い。ITのインフラが整っている
- 日本から世界に冠たるIT企業が出てこないのは? → 国内競争に疲弊したり・テレビ業界にいじめられたり(会場笑。TBSの件と思われる)。
人材の話
- 自分で目標設定してやりとげる人。自分のサービスに誇りを持って出していける
- 探求心を持つ人。
- 大義・何のために仕事をするのか。
- ただし必ず障害がある。
終わりに
- 多角化によるシナジー。楽天経済圏。次のミッションは、オフラインとオンラインをつなげ行くこと。Edy の買収もその一環?
- 楽天の中だけでサービスを完結させるのは難しくなった。オープン性が必要。たとえば Yahoo! との協力、twitterとの連携など。
- ITは世直し。しかし抵抗勢力がいる。厚生労働省とか。
- 300兆のうち6兆のみがeコマース。まだまだ行ける。
以下、私の感想。
「メールのチェックボックスを毎回外す」という話が印象に残りました。楽天市場で買い物をする際、確認画面にメールマガジンを受け取るかどうかのチェックボックスがあるのですが、それがデフォルトでオン (受け取る) になっているという話ですね。楽天の話をすると必ずと言って良いほど出てくる話ですが、こんな楽天のオフィシャルなイベントで出てくるとは。
もっとも、今日の話の大きな流れは「楽天のユーザビリティを改善して行く」という話であるので、流れとしてはきわめて妥当な話ではあります。後のセッションでは、そのメールマガジンの話も出てきます。
つづきます: 「楽天トラベル」つぶやきながら見えてきたTwitter活用3つのポイント
- 前(古い): 2009年11月27日(Friday)のえび日記
- 次(新しい): 2009年12月3日(Thursday)のえび日記