楽天Webディレクション&デザイン2009: 「楽天ブックス」ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善
2009年11月28日(土曜日)
楽天Webディレクション&デザイン2009: 「楽天ブックス」ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善
公開: 2009年12月11日18時40分頃
楽天トラベルの話に続き、「『楽天ブックス』ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善」。UCD (user-centered design, ユーザー中心設計) とユーザーテストのお話ですね。
UCDについて
- 楽天グループのユーザビリティに関する取り組みは遅れている。
- 今年からSiteCatalystを全社導入。
楽天ブックスについて
200万点以上を取り扱うオンライン書店。Amazonと比較すると、以下のような点が特長。
- 楽天スーパーポイントが貯まる・使える。
- コンビニでの商品受け取りが可能。
- 楽天市場との連携 (市場での検索結果にブックスの商品が出る)。
利用者の男女比はほぼ半々で、これは市場とほぼ同じユーザ構成。
UCDに取り組むきっかけ
- 担当部署の要望がユーザーを向いていないことがあると感じた。
- サイトを使っているのはユーザー。使ってもらえなければ意味がない。
検索の改善
- ユーザテスト・データ解析を実施
- 当時、ログ解析レポートがほとんどなかった
- ユーザテストを依頼したいが、お金・時間がない……。
- 自分で実施!!
調査結果
- 中吊り・テレビを見て特定商品を求めて来る人が多い
- レビュー、画像・商品名を重視
- 検索→UUが多いのに流入率が低い
改善の方針
- 少ないステップで希望の商品をヒットさせる→インターフェイス改善
- 検索データの範囲を広げる
- ユーザニーズ
- 目的の商品を早く正確に見つけたい
- レビューを見たい
- 大きい画像で商品を確認したい
ビジネスニーズとすりあわせ
ペーパープロトタイピングの実施
- 検索窓をたくさん作った方が良い?
- 著者で検索 / 出版社で検索 / アーティストで検索、を用意→どれに入れて良いのか分からない、分かりにくいという結果に
- など、など
テスト環境を構築して再テスト
- 検索結果のレビューの星がクリックされる → リンクを設定
- 画像大小バージョンを用意 → 最初から画像が大きい方が良い、デフォルト大にした
ABテスト
- 新旧で画面の出し分け
- 新サイトでは流入率が約4%アップという結果
- リリースしたところ、流入率が約2倍になった
リリース後
- 再度ユーザーテストを実施
- おおむね好評
その後の改善検討事項
- 「もしかして」機能
- ジャンル間違いのケースに対応 → ジャンル内での検索結果がゼロ件の場合、全体検索候補を出す
UCDのメリット
- ユーザテスト → 問題点を客観的に判断できる
- エンジニアの考え方自体がユーザ寄りになってくる
- 社内で行うと短期間・低コストで実施可能 → 経理・人事・総務の人を活用
今後の課題
- UCDについての啓蒙 → 10月リニューアル後、ユーザテストの費用が出るようになった
- ユーザテストの技術、ノウハウ → 実施できる人は少数。増やしていきたい
Q&A
- ペルソナの想定は? → 2人。「小林真弓32歳 : 女性子持ち、月に1~2回本・雑誌を買う。テレビのはやりと文庫本」「加藤大介 : DVDマニア、安く早く。上司に言われてビジネス本も買う」
- 11月の楽天ブックス売れ筋は? → 巻くだけダイエット (www.amazon.co.jp)
- アマゾンとの差別化・意識している点は? → 楽天市場のユーザー、特にプラチナ会員の利用が多い。ポイント指向の人にアプローチ。
- 注意している点は? → ユーザーの「行動」を見る。「意見」は必ずしも聞かない。
- アイトラッキングなどは? → UserInsightはマウストラッキング可能だがアイトラッキングはできない。ユーザテストを専門のコンサルに依頼すると、アイトラッキングができるのが大きい。
- 自分でやる場合と外部に依頼する場合の差は? → 検索に関しては、あまり差がなかった。サジェストなど、機能的な部分でいくつか指摘があった程度。
楽天とUCDというのもなかなかしっくり来ない組み合わせだ、と思われる方もいらっしゃるかも知れません。最初のトークセッションでも「メールマガジンのチェックボックスが……」という話が出ていましたが、楽天グループはユーザビリティにはあまり熱心でないように見えがちです。
しかし実際には、ユーザビリティを高めたいと思っている現場の方はずっと前から大勢いらっしゃいました。前後のセッションにもありますが、今年になってアクセス解析やABテストの環境が整った、というタイミングです。これは、ユーザビリティ改善の結果を数値化しやすい環境になったということでもあります。
こういった背景から、あるいは今年は楽天のユーザビリティ元年として位置づけられるのではないかなと、そんなふうに思いました。
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