楽天Webディレクション&デザイン2009: 日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス
2009年11月28日(土曜日)
楽天Webディレクション&デザイン2009: 日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス
公開: 2009年12月11日1時20分頃
アクセス解析の話の後は、「日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス」。
楽天トラベルについて
- 日本最大級を自負
- 国内・海外どちらも対応
- 国内宿泊中心
サイトの改善
- UIは論理の集積によって形をなすもの。感覚ではなく論理の集積
- 良いところを積み上げる
- 悪いところをつぶす
- フルリニューアルは、積み上げてきたものを失うリスクがある
- 改善の手応えがWebの醍醐味
サイト改善のフレームワークと実例
- 流通構成比 (発生する売上げの比率) を考慮し、その割合の大きい経路を選定
- 経路の分析と問題点の洗い出し
- 「問題児」の分析と改善案の検討
- 改善の実施
流通構成比のツリー
- トップ
- 日付検索 (X%)
- ワード検索 (Y%)
- 地図検索 (Z%)
もっとも多いのは日付検索 (XはYやZより大)。トップで日付を入力したあと……。
- (3割)→エリアを選択
- (8割)→プラン一覧
- (5割)→施設ページ
- (3割)→施設プラン
- (5割)→プラン詳細 (7割リターン)
- (3割)→施設プラン
- (5割)→施設ページ
- (8割)→プラン一覧
と、経路を確認した上で、「問題児」ページを発見する。
前後のページ、類似ページと比較して戻り率、ドロップ率が高いページが問題児。
問題児の解決
- 改善の目標を設定して取り組む。
- ページの存在意義を確認。このページでユーザーに何を提供する? 本当に必要? 場合によってはページをばっさりカットする勇気も。
改善する要素
- 重複性がないか : 他のページで訊いたことをまた訊いていないか? 例: トップで日付を選択しているのに、下位のページでまた訊かれる→Cookieに日付を保持して重複をカット。
- 有効な導線が死んでいないか : このページからどこへ流すのが効果的か
- ユーザーニーズを満たすサービス(機能)があるか? 例: プラン一覧に並び替え・絞り込み検索機能を実装
これら改善により、月間6億円の売上げアップ
AB分析の実施
- 旧ページ・新ページを両方用意
- 最初は新ページの比率を低めにしてスタート
- 良さそうなら新ページの比率を上げていき、最終的に100%に
要件の優先順位
- 上流から手を入れていく (上流の方が流量が多い)
- 効果と工数を軸に取ったポジショニングマップに各項目をプロットして、優先度を決定
体制
- 管理者・プロデューサー・フロントエンドエンジニアを組み合わせる
- 要件定義から一緒にやっていく
Q&A
- ABテストでは季節変動などの要因は考慮している? → 楽天トラベルの商品には季節要因があるので、ABテストを長めに行っている。3ヶ月やれば変動要因は吸収できると考えている。
- チームは社内? → 社内。
- 目標を腹に落とす、納得させる。いくら売上げを伸ばすのか、数字を出して、そこへ行き着くための手法を考える。今までのユーザーを離反させない・検索の使い勝手が重要。
- 楽天トラベルでは、10%は自由なことをして良い。iPhone、twitterなどへの取り組みはそこから生まれてきた。
いわゆる「PDCAサイクル」を実際に回していて、そのプロセスが確立されているというお話ですね。
印象に残ったのは、現状分析、目標設定、検証といった全てのプロセスで数値の裏付けがあるということ。特に、リニューアル実施前にABテストで数値を出すという点について、実施しているサイトはそう多くないのではないでしょうか。
前後の話にも出てきますが、楽天トラベルに限らず、楽天グループ全体として、行動の根拠として数値の裏付けが求められているようです。
※ECサイトでは売上げの数値がはっきり出るから、ということもあるでしょうけれど、前の話に出ていたように、インフォシークのようなサービスでは「送客率」を測定していて、やはり数値ベースの評価になるようです。
つづきます: 「楽天ブックス」ユーザー中心設計アプローチの実践と商品検索UIの改善
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