2010年9月2日(木曜日)
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 感想
公開: 2010年9月13日1時30分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、最後に私の感想を述べておきます。
JIS X 8341-3:2010の規格票自体は、あまり価値がないと思います。基準はWCAG2.0に対応しているので新規性はありませんし、単独で読んで理解できるようにも作られていません。WCAG2.0はWebコンテンツですからUnderstanding (www.w3.org)やTechniques (www.w3.org)にリンクが張られていて相互に行き来できますが、JIS規格票はそうではありません。仕事で厳密に参照したい場合には当然必要になりますが、アクセシビリティを確保したい、学びたいという場合にはWCAG2.0を見れば十分で、わざわざJIS X 8341-3:2010を参照する必要はないでしょう。
むしろ重要なのはWAIC (www.ciaj.or.jp)の活動とその文書です。規格票そのものではなく、WAICのドキュメントを注視して行く必要があるでしょう。
2004年版との差異については、以下の3点が大きなポイントになりそうです。
- 特定の技術に依存しないようになった
- 試験が可能になった
- 「準拠」とは何かが明確になった
達成基準も細かい部分では変わっていますが、それほど大きな違いはないと言ってしまって良いと思います。
最も重要なのは、「準拠」するために試験が必要ということでしょう。試験のためには実装チェックリストの作成が必要で、どの達成基準をどの方法でクリアするのかを事前に明確にしておく必要があります。つまり、「JISを満たせ」とだけ言ってあとは現場任せ (という名の放置)、ということはできないわけです。こういったことも含め、規格票以外の部分が重要になるということですね。
それから余談ですが、今回のセミナーでは、休憩時間や終了後などにいろいろな方とお話ができました。ヤフーの中野さん、インフォアクシアの植木さん、ミツエーリンクスの木達さん、といった方々とお話させていただき、貴重な意見交換ができました。ありがとうございました。
※実は木達さんと直接お会いしたのは2003年のW3C Dayのとき以来かも。
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規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 質疑
公開: 2010年9月13日0時35分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」の後は、そのまま1時間の質疑応答タイムに。
この手のセミナーの質疑はいまいちな場合が多いですが、今回の質疑はかなりレベルが高かったと思います。
PDFは含まれる?
- 技術は問わないので対象
- 代替コンテンツを用意するというアプローチはアリ
ではMicrosoft Word文書は?
- OK (達成基準を満たしさえすれば良い)。WordのほうがPDFよりもアクセシビリティ・サポーテッドな可能性はある
- しかしできればHTMLがおすすめ
別ドメインのサイトの扱いは?
- 「ウェブページ一式」の定義参照
- そのサイトの目的による
- 目的によっては別サイトとみなすこともできる
動画をYoutubeに置いた場合の扱いは?
8.1.3の第三者コンテンツ除外要件に該当するか? 第三者コンテンツを修正しようと思えばできるケースになるか?
- 再生されるコンテンツが第三者のものというわけではない
- 自分のサイトに埋め込んでいる場合、実装技術としてYoutubeを利用しているだけで、第三者のコンテンツとは言えない (3.1.3のウェブページの定義では、埋め込みコンテンツはウェブページに含まれる)
- 埋め込みではなく、Youtubeにリンクしているだけの場合は試験対象外
どの製品を対象とすれば良い?
- 自分でアクセシビリティ・サポーテッドを検証することもできるが、WAICのアクセシビリティ・サポーテッド情報を参照するのが良い
- WAICの判断に従っている、と言った方が楽
- 達成等級AとAAに関しては、WAICに情報がある
- アクセシビリティの構成要素のひとつであるユーザーエージェントは重要だが、JIS X9341-3はコンテンツの規格なので手が出せない
- WAICは現実とのギャップをできるだけ埋めたいと考えてる
- 日本の支援技術はレベルが低い。オープンソースのNVDAはどんどん手を入れられる
印刷物をそのままPDF化している場合、オリジナルがアクセシブルでない (たとえばコントラストが低い) 場合はどうするか
- 少なくともそのPDFは達成等級AAには適合できない
- AAを諦めるのも方法の一つ
- そもそも、スキャンしたPDFは画像情報なので代替テキストが必要になる
- PDFは非常に大きな問題
- 7.2.4.10 (セクション見出しに関する達成基準) がAAAなのは、見出しがない過去の文書を移行する場合などを想定している
スマートフォンなど特定デバイス用のコンテンツは?
- ガイドラインの対象
スマートフォン用コンテンツは3.1.4の「ウェブページ一式」に含まれる?
- 「スマートフォン用です」という別の目的とも考えられる
- JISの検査ではウェブページ一式の範囲を書くことになっているので、そこで決められる
- 規格票p33「JIS X 8341-3:2010 に基づく試験結果表示の例」を参照
機種依存文字は?
- アクセシビリティの問題とは、障害のない人と障害のある人が差別される問題。一般ユーザーにも読めないものはアクセシビリティの問題とは考えない
- ちなみに 7.2.4.4「文脈におけるリンクの目的に関する達成基準」の但し書きに「リンクの目的が一般的にみて利用者にとって
曖昧 な場合は除く」とあるのも同様で、元々意味不明なリンクの場合はアクセシビリティの問題ではないと考える
AjaxなどのTechinqueは?
- W3CのWAI-ARIAで策定中
- まもなくLast callのワーキングドラフトが出るはず
ブロックスキップの富士通の例は7.3.2.5との兼ね合いでどうなのか?
※富士通のブロックスキップのサンプルでは、tabキーでフォーカスを移動すると突如「本文へ」リンクが出現します。7.3.2.5は「利用者の要求による状況の変化に関する達成基準」で、「状況の変化は利用者の要求によってだけ生じるか,又はそのような変化を止めるメカニズムが利用可能でなければならない。」というもの。
- 抵触すると言えば抵触するようにも思えるが……
- 違うページに飛ばされたりするわけではないので「状況の変化」には該当しないと考える
画像化された文字を禁止できなかったのか。ナビゲーション等が拡大できないのは厳しいのではないか
- テキストサイズ変更については 7.1.4.4「テキストのサイズ変更に関する達成基準」、7.1.4.8「視覚的な表現に関する達成基準」で規定
- 画像化文字はテキストではないので含まれないが、7.1.4.5「画像化された文字に関する達成基準」で「できるだけテキストにするように」という基準がある
- WCAG2.0は、全部テキストにしろというところまでは踏み込んでいない
※7.1.4.9に「画像化された文字に関する例外のない達成基準」がありますので、「達成等級AAAの基準として存在する」という回答でも良かったような。
Webアプリケーションの試験については?
- ページ数が無限にあるようなケースもある
- Webアプリケーションの試験については整っていない部分もある
- AjaxについてはWAI-ARIAを待つ必要があり、まだ試験できない状態
HTML5は?
※「5」を「ファイブ」と発音していたのが口述筆記では「HTMLファイル」となってしまっていましたが、HTML5です。
- アクセシビリティの問題は、新技術が来たときに対応が遅れること
- 支援技術の対応も遅れている
- →やがてHTML5対応の実装方法も提案されるはず、後追いにはなる
- 正式勧告にならないと手がつけられない、というスタンスかもしれない
- 現状では、支援技術やブラウザサポートがまだまだという前提でやるしかない
- 達成基準を満たしていれば良いので、規格への適合はできる
- ゼロか一かではなく、少しでも規格を満たすことが大事
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 を用いた試験
公開: 2010年9月12日11時25分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「JIS X 8341-3:2010 の実装方法」の後は休憩を挟み、梅垣正宏さんによる「JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」。独特の話し方で面白かったのですが、メモはやや散漫です。
富士登山ガイド2004
- 達成基準: 富士山に行こう! 登ろう! → 5合目までA 8合目AA 山頂AAA
- 登山技術: 登山ルート、装備……
- 試験: スタンプ、GPS、証拠写真……
- 1万ページをどう試験する?
- 欧州UWEM(うーむ) 試験の方法 http://wabcluster.org (wabcluster.org)
- サンプリングEIAO WAM 自動化テスト http://www.eiao.net (www.eiao.net)
- 国内調達・A市の入札要綱(H21)
- 事業の背景: 「JIS X 8341-3に準拠できておらず……」5. JIS X 8341-3 のうち、必須要件 (18件) を満たすこと。
- 基準が不明瞭→真面目にやる会社は仕事が取れなくなる、目視から測定へ
検査の方法
箇条8で検査の方法について規定している
- 8.1.1 a) ウェブページ単体: 埋め込みコンテンツなど全て。代替コンテンツも含む。ちなみに2004年JISは「代替ページ」を認めていなかったが、これは、「JISに適合していないページを認めるのはおかしい」という意見があったため。2010年版JISでは代替ページを許容している。
- 8.1.1 b) 一連のプロセス: フォームなどは一連の流れ全てがアクセシブルでなければならない。リンクを辿る手順は含まれない。
- 8.1.2 ウェブページ一式単位: ひとかたまりのコンテンツ、ウェブサイト。
ウェブページ一式の検査
1万ページのサイトを全て試験するのは現実的でないので、抜き取り検査を行うことができる。UWEMの1.2と同じ選択方法
1. ランダムサンプリングによる抜き取り検査
どれだけの数を検査すれば良いのかは決められていない。試験実施ガイドライン(規格ではない)では以下のようになっている。
- 1~10 少ない
- 11~24 最低限
- 25~39 標準的
- 40~ 十分
しかしこの数字は規格ではないので、極端に言えば1ページでもJIS規格的にはOK。
2. ランダムでない選択
ランダム選択ではなく、特徴的なページを選択して検査する。実践的だが、試験対策が容易 (出題範囲が明確な試験のようなもの)。
設計方針から抜き出す。以下5点が必須。
- トップページ
- サイトマップ
- アクセシビリティ解説
- 問い合わせ
- ヘルプ
以下は推奨。
- サービスの利用に不可欠なページ (例: Webメールのサービスにおける受信ボックス)
- カテゴリトップ
- 各構造・スタイルの代表 (各テンプレートごとに1ページずつ)
- フォーム、フレーム、表、スクリプトを使用したページ
- 音声、動画を使用したページ
- 利用者のアクセスが多いページ
しかしこれは規格ではないので極端に言えば(以下略
3. 全ページを検証
全てのページを試験する。完全に検証できるがコストがかかる。
コストと、それによって得られる品質とのバランスが悪い。
ランダムと非ランダムの組み合わせがオススメ。確率による統計的な保証に加えて、重要ページは確実に検証できる。
問題が見つかった場合
- ランダムの場合 → 他にも問題が多数ある可能性があることを示唆している。その場所だけ直すという対応は不可。サンプリングをやり直して再試験
- 全試験、非ランダムの場合 → その場所を直せば良い
- いずれの場合も、試験で問題が発見されなくなるように対応する。ツールの自動チェックも併用すると良い。
- 試験をするコストそのものよりも、試験をパスするためのコストが問題。逆に言うと、「試験に通らない」というリスクを負ってでも試験するほどの自信があるということ
第三者がコンテンツを追加する場合
運営者以外の者がサイトにコンテンツを追加する場合、そのコンテンツがアクセシブルでない場合がある。たとえば配信される広告、Webメールのメール本文など。
- 運営者が修正できないコンテンツの場合のみ、除外して試験して良い。例: Webメールのテキストを事業者は書き直せない
- 運営者が修正できるコンテンツの場合、2営業日以内に修正する体制があれば除外して良い
- 相互に行き来できるなど、細かい要件がたくさんある(結構厳しい)
- 代替ページは最後の手段と考えるべき。たとえば、FlashならFlash自体をアクセシブルにする
依存していない技術
- 例: Flash でメニューを表示しているが、同じ機能をHTMLでも提供 (Flashに依存していない)
- 4つの基準を満たす場合(他のアクセシビリティを妨害しない)のみ除外して良い
試験の手順
- 技術を確認 (実装要件の確認)
- 実装チェックリストの作成 (どんな技術で実装するのか)
- 試験方法
- 自動チェック AC: Automated Check
- 自動発見 AF: Automated Find
- 人が検証 HC: Human Check
- 7.2.1.1 の実装チェックリスト例
試験結果の表示
- 表示 = 文書化して人に見せる (公開とは限らない)
- 調達では、試験結果を添付すること
- ウェブでは、公開すること
- 文書化すると証拠が残る。発注者や第三者が追試できる
適合性評価
- JIS Q 17000
- 認証機関はないのでJISマークは使えない
- 自己適合宣言: 自ら評価して宣言する (JIS Q 1000 など)。ただしコンテンツ以外にも「品質責任者がいる」「品質管理部門の出荷検査」など厳しいハードルがある
- 「JIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドライン」
- 適合
- 準拠 (試験全て合格)
- 一部準拠 (試験一部合格。満たせなかった理由と達成のスケジュールを追加表記)
- 配慮し試験 (試験結果は問わない)
- 配慮 (試験不要)
- いずれも「JIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドラインの表記法による」と書いて表示すること
やさしいだけじゃダメ
- 障害者制度改革推進会議「3. 障害を理由とする差別の禁止」……合理的配慮を提供されないことが「障害を理由とする差別」に含まれる旨を規定
- ウェブにおける合理的配慮とは? どの程度の配慮をしていれば「差別していない」と言えるのか
- 合理的配慮 = 過度の負担がなければやるべき、JIS X 8341-3:2010 はそのものさし
- 訴訟リスク → 試験による確認が有効、「ちゃんとやっている」と証明できる
- 総務省 みんなの公共サイト運用モデル (www.soumu.go.jp)
試験を生かす
- 真面目な会社と不真面目な会社を峻別できる
- 良いコンテンツを正当に評価できる
- 水が低い方に流れているのをなんとか戻したい(特に公共調達)
- 民間の品質マーク?
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 の実装方法
公開: 2010年9月11日17時5分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「ウェブアクセシビリティ基盤委員会の紹介、JIS X 8341-3:2010 入門」の後、お昼休みを挟み、インフォアクシアの植木真さんによる「JIS X 8341-3:2010 の実装方法」というお話。主に2004年版から変更になった点についてのお話です。
実装方法について
- 1. 目標とする等級を決定し、達成基準を確認。AAAを目標にすることは推奨しない
- 2. 依存するWebコンテンツ技術を決定
- 2004: JavaScriptオフでも同じ機能を使える必要がある
- 2010: 依存する技術を決める、「JavaScriptに依存して達成」も可能。慎重に判断すべきはFlash、PDF
技術非依存
- 2004版: 図版やサンプルコードが豊富
- 2010版: サンプル何もなし。具体的なコード = 特定の技術に依存
- 2004年版の例 (HTML依存): 「表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい」
- 2010年版では、「7.1.3.2 正確な読み上げ順序」「7.2.4.3 フォーカス移動順」の達成基準を満たせば良い
- 技術に依存しなくなったが、抽象的で分かりにくい表現になってしまった。規格表だけでは具体的な実装方法は分からない (序文で「この規格には記載していない」と明言している)。箇条6.の注記でWCAG2.0の関連文書群を参照する形になっている。
- WCAG2.0も、本体はRecommendationだが、関連文書はnoteとなっている。Recommendationは標準化プロセス抜きに更新すべきでないが、noteは随時更新することができる
似た規定だが微妙に異なるもの
- 2004年版 5.3.h ナビゲーション読み飛ばし: 「読み飛ばせるようにすること」
- 2010年版 7.2.4.1 ブロックスキップ: 「通過できるメカニズムが利用可能」
- 具体的なメリット: キーボード又はキーボードインターフェイスだけを使用している利用者
- 「達成基準の意図」が重要。どんなユーザーにどのようなメリットがあるのか、各達成基準の要件を正しく理解することが重要となる。
- 例: フォーカスを受け取ると出現するナビゲーションリンク(富士通が実装しているもの)
独自に実装しても良い
- 6.3注記、WCAG2.0にない実装方法を用いても良い
- ただし、利用者にとって利用可能であることを確認しなければならない。仕様上は定められているが実装されていない機能は駄目
アクセシビリティ・サポーテッド
- 実際にブラウザや支援技術がサポートしている (対応している、実装されている) ということ
- 難題: テストファイルの制作工数
- Techinques項目300以上、全てを理解する必要がある
- ブラウザと支援技術の組み合わせ数は膨大、どこまで検証すれば良いのか。W3Cは目安すら示していない
- WAIC → jQueryと同じようなライブラリという発想
- テストファイルはW3Cも作成していないため、テスト項目はWAIC独自のもの
検証から分かったこと
- 全ての環境でサポートされる実装は意外に少ない
- 日本のスクリーンリーダーは機能面で劣る
- かといってコンテンツ制作側が頑張るのもどうなのか。ベンダー側の対応を期待しても良いのではないか
- 何をもってアクセシビリティ・サポーテッドとするのか。現在は初期設定でテストしているが、初期設定にこだわる必要はないのかもしれない
新しい達成基準
- 手話通訳 (AAA)
- 拡張した音声ガイド (AAA)……音声、副音声だけだは不足する場合、一時停止してナレーションを入れる (Flashによる実装のサンプルあり)。Flashに関しては「Flash Techniques for WCAG2.0 (www.w3.org)」が検討中。
- 複数のナビゲーション
- フォーカスを消さない
- 読解レベル、中学生にも分かるように(AAA) …… 漢字を簡単にするだけで良い、という話ではない。海外では readability test も行われている
- 音のコントラスト(AAA)
変わった基準
- 仕様への準拠 → Well-formed相当であれば良い
- ページタイトル → タイトルが固有であることを求めなくなった (とはいえ固有であることは推奨される)
- コントラストの具体化 → 4.5:1 など。リンクテキストのコントラストについての基準を見落としがちなので注意。アンダーラインを取る場合、リンクと他のテキストとのコントラストも3:1以上必要とされる
- リンクテキストと文脈 → 達成基準Aでは文脈も含めてリンク先の内容が分かれば良いとされた (「こちら」リンクを許容)。AAAではリンクテキスト単独で分からなければならない
- 画像化された文字 → 達成基準AAでは、テキストで表現できるならテキストにする。テキストでは意図通りにならない場合は画像にしても良い。達成基準AAAでは、ごくわずかな例外を除いて全てをテキストにする必要がある
- 収録済みの映像コンテンツ → A、AA、AAAで全て異なる基準。くわしくはWCAGを
- キーボード操作 → キーボードトラップ(例:Flashから出られない)、オンフォーカスでの遷移禁止
- 具体的な比較は付属書Cを参照
続きます……「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - ウェブアクセシビリティ基盤委員会の紹介、JIS X 8341-3:2010 入門
公開: 2010年9月11日13時40分頃
今日は会社をさぼって「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)」というセミナーに行ってまいりました。参加費4000円ですが、3150円の規格票が付いてくるので実質参加費は850円というなかなかお得なセミナーです。
※もっとも、個人的には8月20日の時点で規格票はダウンロード購入済みですが。
まず、午前中は東京女子大学の渡辺隆行教授による、「ウェブアクセシビリティ基盤委員会の紹介、JIS X 8341-3:2010 入門」というお話。以下、だらだらとメモ。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会の紹介
改正版JIS策定の背景
- 1999 WCAG1.0
- 2004 INSTAC WG が 8341-3を策定、公示
- 2008 WCAG2.0 JIS X 8341-3 の成果も取り入れられている
- 2010 JIS X 8341-3:2010 策定、公示
2004年版の取り組み
- 2003年夏まで: W3C と協調しない独自規格路線
- 2003年後半: WCAG1.0を参考、WCAG2.0草案も先取り
- 2004年 JIS 公示。しかし、試験については考えられていなかった (JISマークをつけられるのかどうかという問題)。
2005年からの取り組み
- WCAG WG との協調し、JIS の成果を WCAG2.0 にフィードバック (漢字文化圏の問題など)。サマータイムの朝5時からミーティングを行ったりした。
- WCAG2.0と国際協調
- 試験を行えるようにする
WCAG2.0と協調する理由
- アクセシビリティの世界に de our standard (ISOなど) はなく、de fact standard を作っているのはW3C
- 日本独自規格を作ると……
- 制作者: 日本向けと世界向け複数の規格に対応する必要がある、非関税障壁
- ユーザー: 海外製の支援技術を国内で使うことが難しくなるかもしれない
- 国際協調すれば、オーサリングツール、評価ツールも一つの規格に沿えばよいことになる
課題
- WCAG2.0 は完成度が低い、文章が悪い
- WCAG2.0 は技術非依存、利点でもあるが分かりにくい
- 解説資料や技術資料がないと分かりにくい。WCAG2.0は補助文書を公開しているが、JIS は規格しか作ることができない。規格は簡単には書き換えられない
- 支援技術の問題
- 日本のユーザーは少ない、英米圏よりも遅れている
- WCAG2.0のTechniquesに日本の支援技術は対応しているのか? 例: img の alt には対応しているが longdesc にはほとんど対応していない
- WCAG2.0 のアクセシビリティ・サポーテッド情報に相当するものを作らなければならない→INSTAC の WG では作成できなかった
- 規格の限界の問題
- 高齢者・障害者配慮設計指針 = ネジの規格とは異なる
- 工業製品ではなくWebというメディアの世界
- JISの枠組みを超えた活動が必要
基盤委員会の立ち上げ
- INSTAC WGの後継活動として、日本の現場で改正版JISを適用する際に必要な活動を支援する組織
- 公的団体 情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ作業部会 を再立ち上げ
- 2010/8/4からウェブアクセシビリティ基盤委員会として活動を強化
- 3つのワーキンググループ、WG1=理解と普及、WG2=実装、WG3=試験、を担当
- 膨大な資料を公開。特に Understanding は規格の理解に必須
- 試験可能になった。JIS Q シリーズによる適合性評価の他、試験を行った場合の「準拠」、行わない場合の「配慮」表示が可能。
JIS X 8341-3:2010 入門
アクセシビリティとは
- アクセシビリティ: 様々な能力を持つ最も幅広い層の人々に対する製品、サービス、環境又は施設のユーザビリティ
- ユーザビリティ: 特定コンテキストにおいて、特定のユーザによって、ある製品が、特定の目標を達成するために用いられる際の、効果・効率・ユーザの満足度の度合い
- 多彩なユーザ: 主に高齢者、障害のある人および一時的な障害のある人
- 特別な配慮を必要としないユーザ
- 感覚機能に配慮すべきユーザ 視覚、視力、聴覚、聴力
- 運動機能や体格に配慮すべきユーザ 車いす、手が使えない、左利きetc
- 認知機能に配慮すべきユーザ 初心者、外国語
- これらのユーザが知覚し、理解し、操作できること
- WCAGはコンテンツについてしか言っていないが、オーサリングツール、評価ツール、UA、支援技術の対応がなければアクセシビリティは成立しない。例:longdesc属性をつけても使われない、普通のにブラウザには見出しジャンプ機能がない、など。
日本工業規格
- 大事なのは全員が同じ規格を使うこと
- ネジの大きさに正解はない、同じ大きさであることが重要
JIS X 8341-3:2010の特徴
- WCAG2.0の利点
- テスト可能な達成基準
- 特定の技術に依存しない (新技術にも対応できる)
- 視覚障害以外にも配慮
- サイト開発の各プロセスで注意すべき事項を記載 (箇条6)
- 欧州の考え方も取り入れた試験 (箇条8)
用語定義
- JIS規格の用語定義は、JISの世界全てで共通の用語となる
- WCAG2.0の用語は用語と言うより規定ではないかと思われるものを含むため、整理して減らした
- JISの規格票ではリンクを張れないし下線も引けないため定義された用語を明示できていないが、分かりにくい用語はたいてい定義されているので用語の定義を参照すると良い
- Level → 達成等級
- 等級Aは最低限のもの
- 公共分野では等級AAを目指すべき
- AAAを全て満たすのは難しい
- robustの訳語は他のJISと合わせたもの
- 箇条7がWCAG2.0のガイドラインに相当し、7を取るとそのままWCAG2.0の番号になる
errata
規格票51ページの表、2004年度版の個別要件に 5.2c) とあるのは 5.9e) が正しい
続きます……「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 の実装方法」。
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