規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 を用いた試験
2010年9月2日(木曜日)
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 を用いた試験
公開: 2010年9月12日11時25分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「JIS X 8341-3:2010 の実装方法」の後は休憩を挟み、梅垣正宏さんによる「JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」。独特の話し方で面白かったのですが、メモはやや散漫です。
富士登山ガイド2004
- 達成基準: 富士山に行こう! 登ろう! → 5合目までA 8合目AA 山頂AAA
- 登山技術: 登山ルート、装備……
- 試験: スタンプ、GPS、証拠写真……
- 1万ページをどう試験する?
- 欧州UWEM(うーむ) 試験の方法 http://wabcluster.org (wabcluster.org)
- サンプリングEIAO WAM 自動化テスト http://www.eiao.net (www.eiao.net)
- 国内調達・A市の入札要綱(H21)
- 事業の背景: 「JIS X 8341-3に準拠できておらず……」5. JIS X 8341-3 のうち、必須要件 (18件) を満たすこと。
- 基準が不明瞭→真面目にやる会社は仕事が取れなくなる、目視から測定へ
検査の方法
箇条8で検査の方法について規定している
- 8.1.1 a) ウェブページ単体: 埋め込みコンテンツなど全て。代替コンテンツも含む。ちなみに2004年JISは「代替ページ」を認めていなかったが、これは、「JISに適合していないページを認めるのはおかしい」という意見があったため。2010年版JISでは代替ページを許容している。
- 8.1.1 b) 一連のプロセス: フォームなどは一連の流れ全てがアクセシブルでなければならない。リンクを辿る手順は含まれない。
- 8.1.2 ウェブページ一式単位: ひとかたまりのコンテンツ、ウェブサイト。
ウェブページ一式の検査
1万ページのサイトを全て試験するのは現実的でないので、抜き取り検査を行うことができる。UWEMの1.2と同じ選択方法
1. ランダムサンプリングによる抜き取り検査
どれだけの数を検査すれば良いのかは決められていない。試験実施ガイドライン(規格ではない)では以下のようになっている。
- 1~10 少ない
- 11~24 最低限
- 25~39 標準的
- 40~ 十分
しかしこの数字は規格ではないので、極端に言えば1ページでもJIS規格的にはOK。
2. ランダムでない選択
ランダム選択ではなく、特徴的なページを選択して検査する。実践的だが、試験対策が容易 (出題範囲が明確な試験のようなもの)。
設計方針から抜き出す。以下5点が必須。
- トップページ
- サイトマップ
- アクセシビリティ解説
- 問い合わせ
- ヘルプ
以下は推奨。
- サービスの利用に不可欠なページ (例: Webメールのサービスにおける受信ボックス)
- カテゴリトップ
- 各構造・スタイルの代表 (各テンプレートごとに1ページずつ)
- フォーム、フレーム、表、スクリプトを使用したページ
- 音声、動画を使用したページ
- 利用者のアクセスが多いページ
しかしこれは規格ではないので極端に言えば(以下略
3. 全ページを検証
全てのページを試験する。完全に検証できるがコストがかかる。
コストと、それによって得られる品質とのバランスが悪い。
ランダムと非ランダムの組み合わせがオススメ。確率による統計的な保証に加えて、重要ページは確実に検証できる。
問題が見つかった場合
- ランダムの場合 → 他にも問題が多数ある可能性があることを示唆している。その場所だけ直すという対応は不可。サンプリングをやり直して再試験
- 全試験、非ランダムの場合 → その場所を直せば良い
- いずれの場合も、試験で問題が発見されなくなるように対応する。ツールの自動チェックも併用すると良い。
- 試験をするコストそのものよりも、試験をパスするためのコストが問題。逆に言うと、「試験に通らない」というリスクを負ってでも試験するほどの自信があるということ
第三者がコンテンツを追加する場合
運営者以外の者がサイトにコンテンツを追加する場合、そのコンテンツがアクセシブルでない場合がある。たとえば配信される広告、Webメールのメール本文など。
- 運営者が修正できないコンテンツの場合のみ、除外して試験して良い。例: Webメールのテキストを事業者は書き直せない
- 運営者が修正できるコンテンツの場合、2営業日以内に修正する体制があれば除外して良い
- 相互に行き来できるなど、細かい要件がたくさんある(結構厳しい)
- 代替ページは最後の手段と考えるべき。たとえば、FlashならFlash自体をアクセシブルにする
依存していない技術
- 例: Flash でメニューを表示しているが、同じ機能をHTMLでも提供 (Flashに依存していない)
- 4つの基準を満たす場合(他のアクセシビリティを妨害しない)のみ除外して良い
試験の手順
- 技術を確認 (実装要件の確認)
- 実装チェックリストの作成 (どんな技術で実装するのか)
- 試験方法
- 自動チェック AC: Automated Check
- 自動発見 AF: Automated Find
- 人が検証 HC: Human Check
- 7.2.1.1 の実装チェックリスト例
試験結果の表示
- 表示 = 文書化して人に見せる (公開とは限らない)
- 調達では、試験結果を添付すること
- ウェブでは、公開すること
- 文書化すると証拠が残る。発注者や第三者が追試できる
適合性評価
- JIS Q 17000
- 認証機関はないのでJISマークは使えない
- 自己適合宣言: 自ら評価して宣言する (JIS Q 1000 など)。ただしコンテンツ以外にも「品質責任者がいる」「品質管理部門の出荷検査」など厳しいハードルがある
- 「JIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドライン」
- 適合
- 準拠 (試験全て合格)
- 一部準拠 (試験一部合格。満たせなかった理由と達成のスケジュールを追加表記)
- 配慮し試験 (試験結果は問わない)
- 配慮 (試験不要)
- いずれも「JIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドラインの表記法による」と書いて表示すること
やさしいだけじゃダメ
- 障害者制度改革推進会議「3. 障害を理由とする差別の禁止」……合理的配慮を提供されないことが「障害を理由とする差別」に含まれる旨を規定
- ウェブにおける合理的配慮とは? どの程度の配慮をしていれば「差別していない」と言えるのか
- 合理的配慮 = 過度の負担がなければやるべき、JIS X 8341-3:2010 はそのものさし
- 訴訟リスク → 試験による確認が有効、「ちゃんとやっている」と証明できる
- 総務省 みんなの公共サイト運用モデル (www.soumu.go.jp)
試験を生かす
- 真面目な会社と不真面目な会社を峻別できる
- 良いコンテンツを正当に評価できる
- 水が低い方に流れているのをなんとか戻したい(特に公共調達)
- 民間の品質マーク?
続きます……「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 質疑」
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