規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 質疑
2010年9月2日(木曜日)
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 質疑
公開: 2010年9月13日0時35分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」の後は、そのまま1時間の質疑応答タイムに。
この手のセミナーの質疑はいまいちな場合が多いですが、今回の質疑はかなりレベルが高かったと思います。
PDFは含まれる?
- 技術は問わないので対象
- 代替コンテンツを用意するというアプローチはアリ
ではMicrosoft Word文書は?
- OK (達成基準を満たしさえすれば良い)。WordのほうがPDFよりもアクセシビリティ・サポーテッドな可能性はある
- しかしできればHTMLがおすすめ
別ドメインのサイトの扱いは?
- 「ウェブページ一式」の定義参照
- そのサイトの目的による
- 目的によっては別サイトとみなすこともできる
動画をYoutubeに置いた場合の扱いは?
8.1.3の第三者コンテンツ除外要件に該当するか? 第三者コンテンツを修正しようと思えばできるケースになるか?
- 再生されるコンテンツが第三者のものというわけではない
- 自分のサイトに埋め込んでいる場合、実装技術としてYoutubeを利用しているだけで、第三者のコンテンツとは言えない (3.1.3のウェブページの定義では、埋め込みコンテンツはウェブページに含まれる)
- 埋め込みではなく、Youtubeにリンクしているだけの場合は試験対象外
どの製品を対象とすれば良い?
- 自分でアクセシビリティ・サポーテッドを検証することもできるが、WAICのアクセシビリティ・サポーテッド情報を参照するのが良い
- WAICの判断に従っている、と言った方が楽
- 達成等級AとAAに関しては、WAICに情報がある
- アクセシビリティの構成要素のひとつであるユーザーエージェントは重要だが、JIS X9341-3はコンテンツの規格なので手が出せない
- WAICは現実とのギャップをできるだけ埋めたいと考えてる
- 日本の支援技術はレベルが低い。オープンソースのNVDAはどんどん手を入れられる
印刷物をそのままPDF化している場合、オリジナルがアクセシブルでない (たとえばコントラストが低い) 場合はどうするか
- 少なくともそのPDFは達成等級AAには適合できない
- AAを諦めるのも方法の一つ
- そもそも、スキャンしたPDFは画像情報なので代替テキストが必要になる
- PDFは非常に大きな問題
- 7.2.4.10 (セクション見出しに関する達成基準) がAAAなのは、見出しがない過去の文書を移行する場合などを想定している
スマートフォンなど特定デバイス用のコンテンツは?
- ガイドラインの対象
スマートフォン用コンテンツは3.1.4の「ウェブページ一式」に含まれる?
- 「スマートフォン用です」という別の目的とも考えられる
- JISの検査ではウェブページ一式の範囲を書くことになっているので、そこで決められる
- 規格票p33「JIS X 8341-3:2010 に基づく試験結果表示の例」を参照
機種依存文字は?
- アクセシビリティの問題とは、障害のない人と障害のある人が差別される問題。一般ユーザーにも読めないものはアクセシビリティの問題とは考えない
- ちなみに 7.2.4.4「文脈におけるリンクの目的に関する達成基準」の但し書きに「リンクの目的が一般的にみて利用者にとって
曖昧 な場合は除く」とあるのも同様で、元々意味不明なリンクの場合はアクセシビリティの問題ではないと考える
AjaxなどのTechinqueは?
- W3CのWAI-ARIAで策定中
- まもなくLast callのワーキングドラフトが出るはず
ブロックスキップの富士通の例は7.3.2.5との兼ね合いでどうなのか?
※富士通のブロックスキップのサンプルでは、tabキーでフォーカスを移動すると突如「本文へ」リンクが出現します。7.3.2.5は「利用者の要求による状況の変化に関する達成基準」で、「状況の変化は利用者の要求によってだけ生じるか,又はそのような変化を止めるメカニズムが利用可能でなければならない。」というもの。
- 抵触すると言えば抵触するようにも思えるが……
- 違うページに飛ばされたりするわけではないので「状況の変化」には該当しないと考える
画像化された文字を禁止できなかったのか。ナビゲーション等が拡大できないのは厳しいのではないか
- テキストサイズ変更については 7.1.4.4「テキストのサイズ変更に関する達成基準」、7.1.4.8「視覚的な表現に関する達成基準」で規定
- 画像化文字はテキストではないので含まれないが、7.1.4.5「画像化された文字に関する達成基準」で「できるだけテキストにするように」という基準がある
- WCAG2.0は、全部テキストにしろというところまでは踏み込んでいない
※7.1.4.9に「画像化された文字に関する例外のない達成基準」がありますので、「達成等級AAAの基準として存在する」という回答でも良かったような。
Webアプリケーションの試験については?
- ページ数が無限にあるようなケースもある
- Webアプリケーションの試験については整っていない部分もある
- AjaxについてはWAI-ARIAを待つ必要があり、まだ試験できない状態
HTML5は?
※「5」を「ファイブ」と発音していたのが口述筆記では「HTMLファイル」となってしまっていましたが、HTML5です。
- アクセシビリティの問題は、新技術が来たときに対応が遅れること
- 支援技術の対応も遅れている
- →やがてHTML5対応の実装方法も提案されるはず、後追いにはなる
- 正式勧告にならないと手がつけられない、というスタンスかもしれない
- 現状では、支援技術やブラウザサポートがまだまだという前提でやるしかない
- 達成基準を満たしていれば良いので、規格への適合はできる
- ゼロか一かではなく、少しでも規格を満たすことが大事
続きます……「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - 感想」
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