規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 の実装方法
2010年9月2日(木曜日)
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 の実装方法
公開: 2010年9月11日17時5分頃
規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 (www.ciaj.or.jp)、「ウェブアクセシビリティ基盤委員会の紹介、JIS X 8341-3:2010 入門」の後、お昼休みを挟み、インフォアクシアの植木真さんによる「JIS X 8341-3:2010 の実装方法」というお話。主に2004年版から変更になった点についてのお話です。
実装方法について
- 1. 目標とする等級を決定し、達成基準を確認。AAAを目標にすることは推奨しない
- 2. 依存するWebコンテンツ技術を決定
- 2004: JavaScriptオフでも同じ機能を使える必要がある
- 2010: 依存する技術を決める、「JavaScriptに依存して達成」も可能。慎重に判断すべきはFlash、PDF
技術非依存
- 2004版: 図版やサンプルコードが豊富
- 2010版: サンプル何もなし。具体的なコード = 特定の技術に依存
- 2004年版の例 (HTML依存): 「表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい」
- 2010年版では、「7.1.3.2 正確な読み上げ順序」「7.2.4.3 フォーカス移動順」の達成基準を満たせば良い
- 技術に依存しなくなったが、抽象的で分かりにくい表現になってしまった。規格表だけでは具体的な実装方法は分からない (序文で「この規格には記載していない」と明言している)。箇条6.の注記でWCAG2.0の関連文書群を参照する形になっている。
- WCAG2.0も、本体はRecommendationだが、関連文書はnoteとなっている。Recommendationは標準化プロセス抜きに更新すべきでないが、noteは随時更新することができる
似た規定だが微妙に異なるもの
- 2004年版 5.3.h ナビゲーション読み飛ばし: 「読み飛ばせるようにすること」
- 2010年版 7.2.4.1 ブロックスキップ: 「通過できるメカニズムが利用可能」
- 具体的なメリット: キーボード又はキーボードインターフェイスだけを使用している利用者
- 「達成基準の意図」が重要。どんなユーザーにどのようなメリットがあるのか、各達成基準の要件を正しく理解することが重要となる。
- 例: フォーカスを受け取ると出現するナビゲーションリンク(富士通が実装しているもの)
独自に実装しても良い
- 6.3注記、WCAG2.0にない実装方法を用いても良い
- ただし、利用者にとって利用可能であることを確認しなければならない。仕様上は定められているが実装されていない機能は駄目
アクセシビリティ・サポーテッド
- 実際にブラウザや支援技術がサポートしている (対応している、実装されている) ということ
- 難題: テストファイルの制作工数
- Techinques項目300以上、全てを理解する必要がある
- ブラウザと支援技術の組み合わせ数は膨大、どこまで検証すれば良いのか。W3Cは目安すら示していない
- WAIC → jQueryと同じようなライブラリという発想
- テストファイルはW3Cも作成していないため、テスト項目はWAIC独自のもの
検証から分かったこと
- 全ての環境でサポートされる実装は意外に少ない
- 日本のスクリーンリーダーは機能面で劣る
- かといってコンテンツ制作側が頑張るのもどうなのか。ベンダー側の対応を期待しても良いのではないか
- 何をもってアクセシビリティ・サポーテッドとするのか。現在は初期設定でテストしているが、初期設定にこだわる必要はないのかもしれない
新しい達成基準
- 手話通訳 (AAA)
- 拡張した音声ガイド (AAA)……音声、副音声だけだは不足する場合、一時停止してナレーションを入れる (Flashによる実装のサンプルあり)。Flashに関しては「Flash Techniques for WCAG2.0 (www.w3.org)」が検討中。
- 複数のナビゲーション
- フォーカスを消さない
- 読解レベル、中学生にも分かるように(AAA) …… 漢字を簡単にするだけで良い、という話ではない。海外では readability test も行われている
- 音のコントラスト(AAA)
変わった基準
- 仕様への準拠 → Well-formed相当であれば良い
- ページタイトル → タイトルが固有であることを求めなくなった (とはいえ固有であることは推奨される)
- コントラストの具体化 → 4.5:1 など。リンクテキストのコントラストについての基準を見落としがちなので注意。アンダーラインを取る場合、リンクと他のテキストとのコントラストも3:1以上必要とされる
- リンクテキストと文脈 → 達成基準Aでは文脈も含めてリンク先の内容が分かれば良いとされた (「こちら」リンクを許容)。AAAではリンクテキスト単独で分からなければならない
- 画像化された文字 → 達成基準AAでは、テキストで表現できるならテキストにする。テキストでは意図通りにならない場合は画像にしても良い。達成基準AAAでは、ごくわずかな例外を除いて全てをテキストにする必要がある
- 収録済みの映像コンテンツ → A、AA、AAAで全て異なる基準。くわしくはWCAGを
- キーボード操作 → キーボードトラップ(例:Flashから出られない)、オンフォーカスでの遷移禁止
- 具体的な比較は付属書Cを参照
続きます……「規格の策定者が解説する JIS X 8341-3:2010 - JIS X 8341-3:2010 を用いた試験」
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