不況は人災です!
2011年9月1日(木曜日)
不況は人災です!
公開: 2011年8月28日21時50分頃
読み終わったので。
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日本を襲う不況の原因は構造改革と金融引き締めにあるとし、政策のミスが招いた人災であるとする主張です。景気回復に見えたものは製造機械が寿命を迎えた事によるリプレースのための投資であり、需要の回復による景気回復ではなかった (小売販売は増えなかった) のに、日銀の強気な引き締めでまた不況に舞い戻ってしまったという。
デフレ不況のメカニズムについては、流動性選好と流動性の罠、需要不足によるものというニュー・ケインジアンの立場を踏襲していて、新古典派の理論については批判的です。新古典派について、135ページでは以下のように述べられています。
いずれにせよ、世界の中堅・若手の経済学者が、入門段階の学生に教えている標準理論は、もはや新しい古典派のものではないわけです。
しかし、学問の最先端を担っている世代はまだ若すぎて、マスコミにも知られていないし、政府の審議委員にもなれていません。構造改革時代の世論と政治に影響力のあった経済学者は、かつて新しい古典派が押せ押せで快進撃していたころのアメリカに、新進気鋭として留学し、当時の最先端の動向を持ち帰った世代です。1970年代の大インフレを打開するための革新的な理論が、時間をかけてようやく世論に浸透し、政治を動かせるようになったときには、既にそれとはまったく逆のデフレ不況時代になっていたというわけです。学問自体はとっくにその次の段階に進んでいるのですが、まだまだそれは世間には知られていないのです。
以上、p135 より
途中の説明はグラフなどを多用して、非常に分かりやすいものになっています。ただ、最後の施策については、若干腑に落ちないものが残りました。基本的には「日銀がどんどんお金を刷れば良い」という話で、日銀にできなければ政府が百兆円玉 (!) を発行しても良いという冗談半分の話も出ているのですが、無から有を生み出せば解決する、というのはあまりにもうまい話すぎて、怪しく思ってしまいます。何か問題が起きたりしないのかどうか、もう少し丁寧な説明で不安を取り除いてもらえると良かったと思いました。
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