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冷温停止は停止直後が勝負

2011年8月4日(木曜日)

冷温停止は停止直後が勝負

更新: 2017年11月21日17時35分頃

こんな記事が……「国民生活の悪化をもたらす電力使用制限。諸悪の根源は政府の原発政策が定まらぬことにあり。一刻も早く方向性を決めよ! (www.nikkeibp.co.jp)」。内容はまあ気にしないとして、気になったのは最後のこの部分です。

政府は、安全が確認されるまで浜岡原発を停止させるなど、原発停止をリスク軽減策として考えているようだが、それは大きな誤りだ。燃料の入った原子炉は、稼動していても、停止していても、ほとんどリスクは変わらない。冷温停止していた福島第一原発の4号機が、電源供給を失って水素爆発したのが、よい例だ。

以上、国民生活の悪化をもたらす電力使用制限。諸悪の根源は政府の原発政策が定まらぬことにあり。一刻も早く方向性を決めよ! より

これは意味が分かりませんでした。

そもそも、「よい例」といっている4号機についての認識が間違っています。4号機は2010年11月30日から定期検査に入っていて、炉心から核燃料が抜かれていました。「福島第一原子力発電所4号機の定期検査開始について (www.tepco.co.jp)」を見るとシュラウド (圧力容器の中で燃料集合体を支える部品) の交換などもしているわけで、燃料が入ったままで作業するのは不可能です。4号機の原子炉は空っぽで、核燃料は使用済み核燃料プールに移されていました。

それがどうして爆発したのかというと、実は良く分かっていません。湯気のようなものが観測されていたこともあり、当初は、プールの中の核燃料が高温になって水素が発生し、水素爆発を起こした……という説が有力でした。しかしその後の調査では、燃料棒が破損している形跡は認められませんでした (参考: 「4号機の激しい損壊、水素爆発以外の原因か (www.yomiuri.co.jp)」)。

※3号機と4号機はつながっているため、3号機で発生した水素が流れ込んだのではないか、という見方もあります。

原子炉から出して数ヶ月経った使用済み燃料は、崩壊熱を出し続けてはいるものの、すぐに溶融が起きるほどの熱量ではないということがわかります。

原子炉の中では放射性元素がどんどん生成されていますが、その中には半減期がきわめて短いものもあります。核分裂連鎖反応が止まった直後は膨大な熱を出しますが、熱量は急速に減っていきます。「MIT原子力理工学部による「崩壊熱」についての解説 (d.hatena.ne.jp)」のページに出ているグラフを見ると、停止直後に一気に下がり、その後は減り方が緩やかになることがわかるでしょう。なんとか1日耐えれば、熱量は2%以下になります。

※「崩壊熱発生率 (www.rri.kyoto-u.ac.jp)」などは対数グラフなので注意。

停止直後の膨大な熱を何とかできれば、あとは比較的安定します。その安定性の目安のひとつとされているのが100度という温度で、100度以下で安定した状態のことを「冷温停止」と呼んでいます。冷温停止状態になっても冷やし続ける必要はあるのですが、停止直後とは熱の量が全く違いますから、ここで冷却が止まっても時間の猶予があります。

つまり、停止直後が勝負だということです。冷却装置がきちんと稼働する状態で停止すれば、停止直後の膨大な熱もすみやかに冷却できますから、スムーズに冷温停止状態に移行することができます。実際、浜岡原発は停止してから1日と少しで冷温停止状態になっています (参考: 浜岡5号機、冷温停止に…冷却水に海水混入も (www.yomiuri.co.jp))。この状態でもまだ冷やし続ける必要はありますが、崩壊熱は2%以下になっていますから、リスクは全く違います。

対する福島第一原発1~3号機では、運転中に地震が起きてしまいましたから、十分な冷却が行われる前に冷却が止まり、核燃料は融けてしまいました。そして、少なくともその一部は圧力容器や格納容器の外に出てしまっていると考えられています。一度こうなってしまうと、冷却すること自体が困難になります。事故が起きてから慌てて冷やそうと思っても、手遅れになる場合があるということです。

まとめると、

ということです。最初の点だけを見ると「稼動していても、停止していても、ほとんどリスクは変わらない」と思えてしまうかもしれませんが、その考えは誤りです。リスクは全く違うと言って良いと思います。

※「止めても高レベル放射性廃棄物が残る問題は解決しない」という見方もあり、それはそれで正しいと思いますが、事故時のリスクとはまた別の話です。

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