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トンデモの魔力とメモリンク

2001年11月5日(月曜日)

トンデモの魔力とメモリンク

世間一般には、どうもいわゆるトンデモ本の説得力を侮ってる人がいるような気がします。トンデモ本にもピンからキリまでありますが、それらはしばしば強力な説得力を有しています。パソコンに500円玉の写真を挿入、なんてのは分かりやすいのですが、ビッグバン理論を論理的に「論破」しているものなど、中途半端な知識で挑むと本気で信じさせられてしまいます。「ビッグバン理論などというのは矛盾だらけで、何度も論破されている。そのウソ・でっち上げ・デタラメぶりはとっくの昔に証明されていて、みんなが知っている。なのにどうしてそんな嘘がいまだに教科書に載っているのだ?」などと不思議に思っている人は実際に存在します。

トンデモに騙されないための指標の一つに、教科書があります。中学・高校あたりの教科書は文部省の教科書検定を通過しているわけです。ある種のトンデモ本は、少数説や異端の説をさも通説であるかのように書いたりしますが、そういうことをしていると検定意見がついて修正を求められますから、教科書に載っていることは比較的信頼性が高いと言えます。

石器捏造発覚のような事件がおきて通説自体が変化することもありますが、それは次の教科書には反映されますし、教科書の記述を見直すと言うこと自体がニュースになりますからだいたいあんしんです。

さてここで問題なのですが、この文章で s/ビッグバン理論/南京大虐殺/g とすると、説得力は増すでしょうか、減るでしょうか、それとも変わらないでしょうか。

……などと謎の語りを入れつつメモリンクするのが、教科書と「慰安婦」記述 (www.zephyr.dti.ne.jp)歌え君が代、掲げよ日の丸の文部省検定と闘いつつ前進してゆく様が良く分かります。

で、この後、つくる会などが「偏向している」「自虐的だ」と主張して、後退するわけです。全社の教科書に載っている記述が「偏向している」ように見えるというのが凄いと言えば凄いですが、中学教科書にセクシュアルな記述はよろしくない、という御意見だけはそれなりにまともであり、それなりに説得力があります(賛成するかどうかはともかく)。

※ちなみに、(はた)郁彦(いくひこ)日大教授による研究が「昭和史の謎を追う--第37回・従軍慰安婦たちの春秋」と題して『正論』に掲載されたのは1992年のことですから、時期的には全く合いません。むしろ教科書に従軍慰安婦の記述が出揃うのはこの後のことです。つまり、吉田清治氏の証言に対する否定的な研究は、通説には大きな影響を与えていないのです。どこかの漫画によって後退の理由を勘違いしている人がいそうなので念のため。

※もうちょっと補足すると、秦氏の研究はそれなりには影響を与えていて、吉田証言は根拠のない嘘とは言えないものの、「時と場所」という歴史にとってもっとも重要な要素が欠落したものとして、歴史証言としては採用できないというのがかねてより研究していた学者たちの通説となっています。有名な吉見教授はわざわざクマラスワミ氏に「吉田証言を採用するな」と助言しています。

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