2010年12月27日(月曜日)
村木事件最高検検証と検察リーク
公開: 2010年12月31日20時55分頃
村木事件最高検検証の全文、検察庁のサイトで公開されていますね。もっとも、紙をスキャンしっぱなしのPDFのようですが……。
- いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(pdf) (www.kensatsu.go.jp)
全体的に日本語が非常に厳しいです。たとえば、証拠改竄の意図、動機についてはこんなふうに書かれています。
また、前田検事が、A氏が本件に関し無実であることを認識しながら、殊更A氏を罪に陥れる意図を有していたか、という点に関しては、前記のとおり、前田検事は、本件の捜査の開始に当たり、大坪部長の指示により、A氏の検挙を最低限の使命として、それを達成しなければならないと考えながら捜査を進めたものであり、また、前田検事の判断については、前記のとおり、供述証拠と客観的証拠の整合性を軽視するなど、証拠関係の評価に問題があったものと認められるが、本件の捜査の経緯や証拠関係等からすると、前田検事によるそのような証拠の評価自体がありえないとまで言うことは困難であり、前田検事がA氏の後半の紛糾及び上司の叱責を避けるために本件FDのデータを改ざんしたという供述を覆すに足りる積極的な根拠も存在しないことからすると、前田検事において、A氏の関与がなかった、あるいはその関与がなかったかもしれないと、現実に考えていたと認めることは困難である。
これで一文なんですよね。途中何を言っているのか良く分かりませんが、結論としては「村木さんが犯人だと思ってました」ということなんですかね。良く分かりません。
この検証報告に対する村木さんのコメントも出ています……村木厚子さんのコメント全文 (www.47news.jp)。
ところで、個人的に気になったのは「適正化のための方策」のこの部分です。
5. 当初の見立てに固執することなく、証拠に基づき、その見立てを変更し、また、引き返す勇気を持って、その捜査から撤退することなど、適切な指導及び決済の在り方を周知徹底する。
この部分に関連して、ちょうど良いタイミングでこんな話が出ていますね……「元検察官、三井環さんが語る「リーク」の実態 (jbpress.ismedia.jp)」。
「こっちが話を作る必要もないんだ。ちょっと話をリークすると、60%はホント、後の40%はふくらましや憶測で記事を書いてくれる。1社だけにリークして特ダネで書かせると、他社が追いかける。そうやってだんだんと話が大きくなる」
──世論の追い風が必要なのですね。
「そうやって記事が出ると、もうどんどんクロというか、有罪のような認識が広まるでしょ。被疑者じゃない関係者の協力を得る時でも、そうやって周りが騒いでいると、抵抗しにくいというか、そっちの流れになっていくんです」
被疑者が既に有罪であるかのようなマスコミ報道をよく見かけますが、検察はそういう報道が出ることを狙って意図的にリークしている場合があるというお話。ストーリーを作った後で、こうやってマスコミも共犯にして広めてしまうわけですから、なおのこと無かったことにしづらくなりますね。
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私的録画補償金支払い拒否訴訟で東芝勝訴、しかし……
公開: 2010年12月30日22時45分頃
デジタル専用のDVDレコーダーに対する私的録画補償金の支払いをメーカーが拒否していた事件、一審判決が出たようで。
- デジタル録画機の著作権料訴訟、支払い拒んだ東芝勝訴 東京地裁判決「法的強制力はない」 (www.nikkei.com)
私的録画補償金というのは、著作権法30条2項で定められているものです。
2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
以上、著作権法第30条2項 より
しかし、デジタル録画専用機の場合、全てのコンテンツにコピーコントロールがかかります (ダビング10)。法の趣旨としては、デジタルは劣化なしに無制限にコピーできるから補償金の対象なのであって、コピーを制限している場合は補償金の対象にすべきでないのではないか……というのが争点のひとつです。
それから、メーカーの協力義務については著作権法第104条の5に規定があります。
第百四条の五 前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。
以上、著作権法第104条の5 より
この「協力しなければならない」という規定には強制力があるのかどうか、というのがもう一つの争点ですね。
で、結論としては、このような判示がなされたようで。
大鷹裁判長は判決理由で「デジタルDVDレコーダーは、利用者が著作権料を負担すべき機器に該当する」と述べ、著作権法施行令が定める補償金徴収の対象機器に当たると認定。そのうえで「著作権法はあえて『協力』という抽象的な文言にとどめており、法的強制力を伴わない義務と解すべきだ」と結論付けた。
30条については「デジタル専用でも補償金の対象」という判断をしつつ、しかしながら104条の5については「あくまで協力であり、強制力はない」という判断をしたわけですね。まあ、文言をストレートに解釈すればそうなるだろうとは思いますが。
しかしこれ、よく考えると「メーカーには徴収義務はないが、利用者には支払い義務がある」という話なので、利用者としては負けているも同然のような……。
※もっとも、実際にはメーカーの協力なしに徴収するのは難しそうですが。
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