私的録画補償金支払い拒否訴訟で東芝勝訴、しかし……
2010年12月27日(月曜日)
私的録画補償金支払い拒否訴訟で東芝勝訴、しかし……
公開: 2010年12月30日22時45分頃
デジタル専用のDVDレコーダーに対する私的録画補償金の支払いをメーカーが拒否していた事件、一審判決が出たようで。
- デジタル録画機の著作権料訴訟、支払い拒んだ東芝勝訴 東京地裁判決「法的強制力はない」 (www.nikkei.com)
私的録画補償金というのは、著作権法30条2項で定められているものです。
2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
以上、著作権法第30条2項 より
しかし、デジタル録画専用機の場合、全てのコンテンツにコピーコントロールがかかります (ダビング10)。法の趣旨としては、デジタルは劣化なしに無制限にコピーできるから補償金の対象なのであって、コピーを制限している場合は補償金の対象にすべきでないのではないか……というのが争点のひとつです。
それから、メーカーの協力義務については著作権法第104条の5に規定があります。
第百四条の五 前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。
以上、著作権法第104条の5 より
この「協力しなければならない」という規定には強制力があるのかどうか、というのがもう一つの争点ですね。
で、結論としては、このような判示がなされたようで。
大鷹裁判長は判決理由で「デジタルDVDレコーダーは、利用者が著作権料を負担すべき機器に該当する」と述べ、著作権法施行令が定める補償金徴収の対象機器に当たると認定。そのうえで「著作権法はあえて『協力』という抽象的な文言にとどめており、法的強制力を伴わない義務と解すべきだ」と結論付けた。
30条については「デジタル専用でも補償金の対象」という判断をしつつ、しかしながら104条の5については「あくまで協力であり、強制力はない」という判断をしたわけですね。まあ、文言をストレートに解釈すればそうなるだろうとは思いますが。
しかしこれ、よく考えると「メーカーには徴収義務はないが、利用者には支払い義務がある」という話なので、利用者としては負けているも同然のような……。
※もっとも、実際にはメーカーの協力なしに徴収するのは難しそうですが。
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