ミログ「第三者委員会」、驚きの提言
2011年12月19日(月曜日)
ミログ「第三者委員会」、驚きの提言
公開: 2012年1月3日17時20分頃
AppLogやApp.tvが話題になったミログですが、「第三者委員会報告書」というものが出たようで。
- 第三者調査委員会の調査結果に関するお知らせ (milog.co.jp)
報告書はPDFで、以下にあります。
- 株式会社ミログ 第三者委員会報告書 (milog.co.jp)
委員会の名称が「第三者調査委員会」なのか「第三者委員会」なのか良く分かりませんが、いずれにしても中立的な第三者による調査ということですね。
しかし内容を見ると、かなり違和感のあることが書かれています。
ミログがapp.tv 及びAppLog を用いて行おうとしていたターゲティング広告それ自体については、ユーザーに対しても有用な広告が配信されるといったメリットが与えられるものであり、ユーザーに対し、収集される情報に関して十分な説明が行われ、その上でユーザーの同意が取得される場合には、これを否定すべき要素はない。
以上、株式会社ミログ 第三者委員会報告書 より
「ユーザーに対しても有用な広告が配信されるといったメリットが与えられる」?
app.tvにしてもAppLogにしても、ユーザーは広告を見たいわけではありません。app.tvではユーザーは動画を視聴したいだけ、AppLogではアプリケーションを利用したいだけで、広告はない方が良いはずです。
ターゲティング広告のほうが良いというのは、ターゲティング広告の方がCTRやCVRが高いからであって、それは広告を配信する側の理屈でしょう。
ユーザーが「広告はない方が良い」と思っているのに、「有用な広告が配信されるといったメリットが与えられる」と説明するのは、ユーザーの視点からは明らかにずれています。広告配信側を弁護する立場であるように見えてくるわけで、この時点で第三者としての中立性に疑問符がつきます。
※こういうのを「おためごかし」と言うのだなあ、としみじみと思ったりしました。
そして「提言」がまた……。提言は1~4まであるのですが、その2と3の内容にびっくりです。
2 上記の明示的な通知のある限り、オプトイン(通知時に利用者に同意するかを確認し、同意しない場合は情報収集を行わない)かオプトアウト(通知時に利用者に同意するかを確認しないが、その後手続を行えばそれ以後の情報収集を行わない)かは本質的な違いとならないので、いずれも許容される2。但し、オプトアウトの場合は、情報収集の停止が可能である旨を最初の通知時に明示し、また情報収集の停止手続を利用者が随時行なえる実質的な機能を有していることが条件となろう。
以上、株式会社ミログ 第三者委員会報告書 より
いやいや、オプトインとオプトアウトは本質的に違うでしょう。オプトアウトの場合はデフォルトが送信で、ユーザーが面倒な操作をして停止するまでの間は、情報が送信されてしまいます。
メールマガジンが送られてくるような場合なら、頻度は高くないでしょうし、一度くらい送られてきても大した問題はないでしょう。しかし、プライバシー情報の送信はそうではありません。ユーザーは、一度たりとも情報を送信したくないと考えているわけで、「ちょっとの間なら情報が送られてもOK」ということはないでしょう。最初から一瞬たりとも送信しない、ということが可能でなければ駄目なはずです。
注釈として説明も書かれているのですが、これがまた……。
* オプトアウトだとしても、手続が明示されていればすぐに情報の収集を停止できる。行動履歴情報の収集の際には、一定程度の期間の情報収集が必要であり、直ちに情報の収集の停止ができれば、オプトアウトであるから全く許されないという制限は必ずしも必要ないものである
以上、株式会社ミログ 第三者委員会報告書 より
すみませんが、これは理解できません。「行動履歴情報の収集の際には、一定程度の期間の情報収集が必要」って……情報が送信されるのが一瞬だけなら統計が取れないから、情報を収集する側では役に立たないということですか?
それは、情報を収集する側の論理ですよね。
送られた情報が役に立つとか立たないとかは、ユーザーの知ったことではないのです。少しだけ送られても利用側では役に立たないからOKとか、そういう理屈はユーザーには受け入れられないでしょう。
オプトインかオプトアウトかは、情報を収集する側には本質的な違いではないのでしょうが、情報を送信するユーザーにとっては本質的な違いとなるので、そこを理解してほしいところです。
※「手続が明示されていればすぐに情報の収集を停止できる」と簡単に言ってしまっていますが、オプトアウト機能に対するアクセシビリティの観点も抜けているように思います。
3 継続的な情報収集が行われる場合は、利用者の不安感の払拭のため、オプトイン方式をとって利用者の同意を得た場合であっても、以後も情報収集の停止を請求できる手続を用意しておくことが望ましい。
* 行動履歴の収集は、比較的長期間に行われることによってデータが蓄積され、個人のプライバシーの侵害が起こるのではないかとの不安も大きくなるといえる。この点に対する対処として、一旦同意を行ったあとでも、それを取り消して将来の情報収集の停止を請求できるようにすることが望ましいといえる。
以上、株式会社ミログ 第三者委員会報告書 より
「利用者の不安感の払拭」? 「侵害が起こるのではないかとの不安」への対処!?
後から情報送信をやめたくなる正当な理由はいくらでもあるでしょう。最初にオプトインしたときと都合が変わったとか、ゆっくり考えたらやっぱりメリットがないと気付いてやめたくなったとか。そういう時に送信を停止できないと、ユーザーは困るはずです。不安とかそういう話ではないはずです。
それを「不安感への対処」と言ってしまうのは、もう完全に情報収集側のスタンスですよね。その事を隠そうともしていないですよね。
はっきり言って、これは「第三者」を冠する内容としては問題があると思いますし、ユーザーに受け入れられる内容ではないと思います。委員を全部入れ替えて作り直した方が良いのではないでしょうか。
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