なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか
2011年3月31日(木曜日)
なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか
公開: 2011年4月3日16時50分頃
平積みされている新書が何となく目に付いて、何となく買う事ってありますよね。そんな感じで買ったのがこの本です。
- なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか (www.amazon.co.jp)
あえてはっきり言いますが、トンデモ本でした。
……誤解も多いようですが、「トンデモ本」の定義は「著者の意図とは異なる視点から楽しむことができる本」です。必ずしも内容が間違っているということを意味しません。はっきりしているのは「楽しめる」ということです。以下、私が楽しいと思った記述を少し引用してみます。
「民団」とは、いうまでもなく「在日本大韓民国民団」のことである。民団の設立は、一九四六年十月と歴史は古い。
ウィキペディアの情報によると、韓国政府が、運営資金の六割から七割を負担し、日本国内の、三〇〇を超える拠点で活動を行っている。
以上、p66 より
ウィキペディアって。なんでウィキペディアなんですか。百歩譲って、せめていつの時点での情報なのか書いてくださいよ。
パチンコ店の店員も依存症になる。ミイラ取りがミイラになるのである。それだけ、パチンコには人を虜にするものが潜んでいる。筆者は、リーチの動きに、サブリミナル効果のようなものが仕組まれていると睨んでいるのだが……。
以上、p81 より
「ミイラ取りがミイラになる」って……? と思っていたら、「サブリミナル効果のようなものが仕組まれていると睨んでいる」と来て爆笑してしまいました。もちろん、これは単に著者が「睨んでいる」というだけであって、根拠は示されていません。
オムロンは、次のように報告している。
出願番号・特許出願二〇〇二-五七六七四
(~中略~)
これは、以前はオムロンのホームページで紹介されていたが、現在は載っていない。
以上、p108 より
「報告している」って……これ、どう見ても特許でしょう。特許・実用新案公報DB (www.ipdl.inpit.go.jp)にアクセスして、文献種別「A」、文献番号「2003-251059」を入力すれば、今でもちゃんと見られますよ。
※JSが有効でないと動かない上に、やたら使いにくいですけどね。
ネットで、次のような書き込みがあった。
俺さ、パチンコ屋で働いていたのよ。お客さんの中にさ、負けても負けても、毎日通ってくるオバちゃんがいたのね。
(~中略~)
んで、ある日、「今日はあのオバちゃんこないねぇ」って言ってたら、次の日、隣町のパチンコ屋のトイレで首つってたよ。
(~中略~)
実にリアルな書き込みである。気のいいパチンコ店員の若者が、パチンコ店の現状を直視して、ついに耐えられなくなって辞めたことが素直に書かれている。
以上、p85 より
出典を明示していない時点でどうかと思いますが、これを読んで「実にリアル」と思うあたり、著者はちょっと人が良すぎるのではないかと思いました。どうしてオバちゃんは毎日通っていた店ではなく「隣町のパチンコ屋」で死んだのでしょうか。そして、この人はどうやってオバちゃんの死を知ったのでしょうか。……と、いきなり疑問がわいてくる感じなのですが。
サムスンの特徴は広告費の高さにある。儲かっているから気前よく広告費を使う。世界の主要な空港では必ずと言っていいほど、サムスンの巨大な広告が目を引くことになる。
サムスンの広告宣伝費は、売上高の3%といわれている。売上げが一〇兆円あるので、三〇〇〇億円が広告宣伝費に使われていることになる。これでは、日本のメーカーが適うわけがない。
以上、p172 より
いやいやいや。概算すぎるというのは置いておくとしても、せめて日本のメーカーの数字を挙げて比較してくださいよ。それなしに「適うわけがない」と言われても納得できませんよ。後で自分で調べてみよう……と思ったのですが、それには及びませんでした。
二〇〇九年一月のデーターでは、年間の広告宣伝費の一位がトヨタで四八四五億円。二位のソニーが四六八七億円。三位のホンダが三七五七億円である。
以上、p183 より
ちょ、ソニーのほうが広告宣伝費が多くなっているじゃないですか。サムスンの1.5倍以上あるじゃないですか。わずか10ページ前に言ったことを否定するデータですよね。
……とまあ、こんな感じで、トンデモ本としては非常に面白いです。
テーマ自体も非常に面白いと思いますし、興味深い話もたくさんあるのですが、役に立つ本かどうかといわれると厳しいところではあります。韓国と日本との違いなどをもう少しきちんと分析できていれば良かったかもしれません。
※データまわりに関しては、編集者がもう少し頑張れたのではないかという感じもするのですが。
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