水無月ばけらのえび日記

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正義について

2001年11月26日(月曜日)

正義について

墓場で『朝日新聞の正義』についてちょろっと(記憶のみで)書いたりしましたが、そのときに思い出したことを書いておきます。

前者は典型的な右翼思想のステレオタイプ、後者は左翼思想のそれですが、どちらも絶対的な「正義」が存在するという前提で物事を見ている(そして自分を正義だと思っている)という点では共通しているのだなぁ、などと思ったりしたものでした。※もっとも、今日び、そんな露骨なことを言っている人はあまりいないと思いますが。

……などと書くと、びいさんあたりに「そういうキミはどうなのよ」とか訊かれそうなので書いておきますが、私は絶対的な正義なんてものは存在しないと思っています。

たとえば「人の命を大事にしよう」などという価値観は絶対的な正義だと思う人もいるかもしれませんが、「望まない子を中絶してはいけないのか?」と問われると、多くの人は立ち止まらずにはいられないでしょう。平和主義も同じで、「コソボの悲劇を黙って見ているつもりなのか?」と言われれば、やはり多くの人が立ち止まることになるでしょう。

立ち止まった結果として「やはり命は大事だから中絶は駄目」という価値を選択することになっても、逆に「望まない子を生む義務はない」という価値を選択することになっても、はたまた「その妊娠が極めて不幸な条件下で起こったものである場合のみ認める」という条件をつけてみても、それはそれで構いません。いずれの選択肢も、論理的に矛盾したりはしてはいません。が、いずれもひとつの考え方に過ぎません。

ここで重要なのは、自分と違う選択肢を選ぶ人がいるのは当然で、それ自体は責められるようなことではないという考え方です。もちろん、自分の選んだ選択肢のメリットを強調して相手を説得し、別の選択肢を選ぶように働きかけることはあるでしょう。その結果として、「普遍的な正義」が生まれる可能性はありますが、それもたまたまその時点で多くの人によって支持されているに過ぎず、絶対的なものではないのです。人、場所、時が変われば廃れることもあるでしょう。

こういう考え方は割と多くのもののけに支持されているような気がするのですが(気のせいかも)、分類的にはリベラルとかオルタナティヴという潮流に近いのではないかと思います。

もちろん、「絶対的な正義など存在しない」という考え方自体も価値観のひとつに過ぎません。当然、他の価値観によって否定されたり批判されたりすることもあるでしょう。特に、国民全員が一丸となるべしと説く全体主義とはなじみません。

また、絶対的な正義など存在しないということは、同時に絶対的な悪が存在しないということでもあります。

私はアメリカのアフガン攻撃に反対しています。が、それはこの戦争がろくな結果を生まないと思うからに過ぎません。実は戦争そのものを否定しているわけではないのです。戦争が良い結果を生むなら、やって良いと思います。もっとも、私は戦争が良い結果を生むことは滅多にないと思っているのですが。

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