2019年6月
2019年6月30日(日曜日)
ファミコン版ファイアーエムブレムと線形合同法
公開: 2019年6月30日22時55分頃
Nintendo Switch Online (www.nintendo.co.jp)に加入していると、「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online (www.nintendo.co.jp)」というサービスが利用できます。要するにファミコンのソフトが動くエミュレータなのですが、それなりの数のタイトルが配信されていて遊び放題になります。
配信されているタイトルの多くは昔プレイしたものなのですが、実は当時とは違った楽しみ方ができます。というのも、このエミュレータには「どこでもセーブ」という機能があり、任意のタイミングで状態をセーブ・ロードできるのです。この機能を活用すると、難しかったゲームを簡単にクリアできるようになったり、通常はできないプレイができるようになったりします。あのやたら難しかった「リンクの冒険」も、この機能を活用すれば残機を全く失うことなく最後までプレイできるのです!
※もっとも、ゲームバランスは大きく崩れる可能性があるので、クリアしたことのないタイトルで多用するのはお勧めしません。
この機能でゲーム性が大きく変わってくるタイトルのひとつが、「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」です。
このゲーム、レベルアップ時の成長がランダムになっているのが大きな特徴のひとつです。能力の成長率はキャラクター毎に異なり、成長しづらいキャラクターはほとんど育ちません。それゆえ、成長率の低いキャラは敬遠されがちです。
しかし、「どこでもセーブ」を活用すれば、レベルアップを何度でもやり直せます。レベルアップ前にセーブ、成長が悪かったらロードしてやれば、成長率が低いキャラも、最強キャラへと変身させることができるはずです!
……と、そう考えていた時期が私にもありました……。
実際にやってみると、以下のような露骨な傾向が見えてきます。
- 全ての能力が同時に上がることは絶対にない
- 逆に、何も上がらないということもない (一部の成長率が低いキャラを除く)
- 守備力が上がると力は必ず上がるが、HPは決して上がらない (一部の成長率が高いキャラを除く)
- 敵を必殺の一撃で倒すと、決して力や守備力が上がることはない
- 力、素早さ、運、守備は同時に上がりやすい
- HP、技、武器レベルは同時に上がりやすい
どうも使われている乱数が偏っていて、小さい数字と大きい数字を交互に繰り返すという性質があるように見えます。
※守備力とHPが同時に上がらないのは、この2つが連続判定されているためです。守備力の成長判定で小さな値が出ると成長に成功しますが、その場合には、続くHP判定で必ず大きな数字が出るため、HPの成長判定には失敗します。同様に、必殺判定と力の成長が連続判定されているため、必殺判定に成功したときは力の成長判定に失敗します。
これは線形合同法の典型的なパターンです。このゲームの乱数がどうなっているのかはよく分かりませんでしたが、リメイクのSFC版では以下のような計算で出しているようです。
x = (x + 143) mod 256
リメイクがこれなので、おそらく本作も同様なのでしょう。ということで、本作では乱数にこのような性質があるため、いくらリセットを繰り返しても全能力アップの成長はできないのでした。
それでもリセットを駆使すればある程度は制御できるので、そこそこ使えるレベルでよければ育成できます。皆さんも好きなキャラを育ててみてはいかがでしょうか。
参考までに、8章(ワーレンの港町)でレベル20になったビラクのステータスを載せておきます。
- 「ファミコン版ファイアーエムブレムと線形合同法」にコメントを書く
関連する話題: ゲーム
2019年6月23日(日曜日)
4.5:1に苦しむデザイナーの皆様へ
公開: 2019年6月23日23時40分頃
WCAG 2.0 の達成基準 1.4.3 にはカラーコントラストの基準があり、背景と文字とに4.5:1以上のコントラスト比を持たせることを要求しています。
1.4.3 コントラスト (最低限) : テキスト及び文字画像の視覚的提示に、少なくとも 4.5:1 のコントラスト比がある。ただし、次の場合は除く: (レベル AA)
- 大きな文字: サイズの大きなテキスト及びサイズの大きな文字画像に、少なくとも 3:1 のコントラスト比がある。
- 付随的: テキスト又は文字画像において、次の場合はコントラストの要件はない。アクティブではないユーザインタフェース コンポーネントの一部である、純粋な装飾である、誰も視覚的に確認できない、又は重要な他の視覚的なコンテンツを含む写真の一部分である。
- ロゴタイプ: ロゴ又はブランド名の一部である文字には、最低限のコントラストの要件はない。
最近、デザイナーの方から、この基準に苦しんでいるという話を良く聞きます。コントラスト比4.5:1を満たすような色の選択は簡単なように思えるかもしれませんが、元々定義されているブランドの色が基準を満たせていない場合など、かなり難しい場合があるようです。
話を聞いていると、どうも、4.5 という数字が強く意識され過ぎているように思います。
4.5という数字は便宜的に設けられた基準値で、絶対的な意味があるわけではありません。
見え方は人により、環境によりさまざまです。コントラストが高ければ、より多くの人が、より多くの環境で読むことができるようになります。そこにハッキリした境界はありません。4.4:1になると全く読めなくなるとか、4.5:1なら誰にでも読めるということではないのです。コントラストをあげればあげるほど、より多くの人に、より多くの環境で読まれるようになります。
とはいえ、基準を満たすかどうか判定する際には 4.5 という数値が使われ、少しでも下回れば基準を満たさないことになります。ですから、「WCAG 2.0のAAレベルの基準に適合せよ」という要件がある場合にはこの数字が重要な意味を持つこともあるでしょう。しかしそれは、あくまで、基準を満たすという観点での意味しかありません。
なお、WCAG 2.0 には1.4.6 コントラスト (高度) (waic.jp)という達成基準もあり、こちらでは7:1のコントラストを推奨しています。4.5 よりも 7 のほうが望ましいですし、もっと大きくても良いわけです。また、WCAG 2.1には非テキストのコントラスト (waic.jp)という基準もあります。
まとめると、
- WCAG 2.0 の 4.5 は、達成基準を満たすかどうか試験するときに使われる値であり、それ自体に絶対的な意味があるわけではない
- 4.5を下回ったら全く無意味というわけではなく、4.5を上回れば十分というわけでもない
- コントラストは高ければ高いほど、より多くの人が、さまざまな環境で読めるようになる
4.5を上回れなければ取り組みをする意味がない、ということはありませんので、あくまで参考値として、少しでも高いコントラストを目指していただければと思います。
関連する話題: アクセシビリティ
- 前(古い): 2018年12月のえび日記
- 次(新しい): 2019年7月のえび日記