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2018年12月26日(水曜日)

AS情報を作成するためのテストへのご協力のお願い

公開: 2019年1月6日21時50分頃

ウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC) から、「AS情報を作成するためのテストへのご協力のお願い」という文書が出ました。

この背景などを少し補足しておきます。

AS情報とは?

Webは基本的にはアクセシブルなものなのですが、時には、アクセシビリティを確保するために配慮が必要になることもあります。たとえば、画像をCSSなどで背景として実装する必要がある場合、この画像にはalt属性をつけることができません。こんなときは、WAI-ARIAという技術でフォローすることが可能です。aria-label属性で読んでほしいテキストを指定すと、これを読んでくれることが期待できます。

しかし、この技術は比較的新しいものなので、全てのブラウザやスクリーンリーダーが対応しているとは限りません。最近のスクリーンリーダーとモダンブラウザの組み合わせでは対応していても、古いものではうまく読んでくれないことがあります。仕様的に正しいと思って実装しても、支援技術の側が対応していないと、期待した動作が得られないわけです。

そこで、ある実装方法に対して、支援技術がどの程度対応しているのかという情報を知りたくなります。このような、支援技術の対応状況に関する情報を、WCAGでは「アクセシビリティ・サポーテッド情報」と呼んでいます。これは「AS情報」と略して呼ばれることもあります。用語の正確な定義は以下をご覧ください。

WAICが公開するAS情報

WAICでは、その「アクセシビリティ・サポーテッド情報」を公開しています。

これは2008年版のJIS規格改定に合わせて作業を行ったもので、2014年に更新しています。しかし、情報としては相当古いものです。先ほどWAI-ARIAという技術の例を出しましたが、このAS情報にはWAI-ARIAの情報も入っていません。

WAICのセミナーなどでも、このAS情報を紹介することがあるのですが、情報が古いのではないか、最新版に更新しないのか、というお問い合わせをいただくことがしばしばありました。

テストファイルの更新について

新しいAS情報がほしいというニーズは私たちも認識しており、作業部会2 (WG2、実装作業部会) では、AS情報を更新することを目的として、作業を続けていました。

その過程で浮き彫りになってきたのは、現状のテストファイルにさまざまな問題があるということです。そのまま新しい支援技術でテストしても、知りたい情報が得られないのではないかという状況でした。そこで、私たちの手で新たにテストファイルを用意する必要があるという結論になり、その作成の作業を進めてきていたのです。

この作業はGitHubで公開して進めてきましたので、GitHub上でその経緯の一端を見ることもできます。

このテストファイル、まだ全て完成したわけではないのですが、全てが完成するまで待たなくてもテストは開始できるだろうと言うことで、今回、その一部を公開したものです。

テストの実施について

ということで、あとはテストをすればいいのですが、テストをするのも大変です。テスト環境 (支援技術) の用意も必要ですし、人と時間が必要です。WAIC内部だけでテストを実施しようとすると、非常に長い時間がかかりそうです。

そのため、ここは外部の人も交えてテスト結果を集めるという方向にできないかと模索しており、そこで今回のお知らせとなりました。

今回の試みは、試験的な意味合いも強く、実際にこれでテストが回るのかどうか見てみたいという意味合いも強いです。正確なテストをしなければならないと身構える必要はないので、精度はあまり気にせず、カジュアルに参加してみていただけると嬉しいです。

お気づきの点は……

なお、テストファイル自体に不備があるなど、何かお気づきになる点があるかもしれません。

そんなときは、お気軽にお問い合わせください。WAICのお問い合わせ (waic.jp)からメールでお知らせいただいても良いですし、GitHubの使い方が分かるという方でしたらGitHubのissue (github.com)が解放されていますので、直接issueを立てていただいても構いません。

ご意見、ご感想、そしてテスト結果をお待ちしております。

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