2011年8月25日(木曜日)
不況のメカニズム
公開: 2011年8月28日19時50分頃
読み終わったのですが……。
- 不況のメカニズム ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ (www.amazon.co.jp)
新古典派経済学を批判しつつ、ケインズの「一般理論」を再解釈してその欠陥を補完する理論……だと思うのですが、新古典派の知識がないとなかなか理解しづらいです。本書から読み取った限りでは、こんなことを言っているように思います。
- 新古典派経済学では、企業の生産調整や価格調整によって需要と供給のバランスがコントロールされるので、長期的に見れば売れ残りは発生せず、生産したものは全て消費される
- 新古典派経済学では、労働市場も需給バランスでコントロールされる。職探しや転職にはコストがかかるため、自発的な失業や一時的な失業は起こり得るが、非自発的な失業が続くことはない (完全雇用)。労働が流動化すれば失業は減る
- 新古典派経済学では、貯蓄と投資のバランスは利子率だけで決まる。人々が消費を減らせば投資が増え、その結果生産が増え、所得が増えて需要が回復する
- 新古典派経済学では、供給不足は起こるが需要不足は起こらない
このような世界観では、生産力を上げれば経済が活性化することになりますし、労働力の流動化を強めれば (解雇規制を弱めれば) 失業が減ることになります。本書はそのような世界観を批判する流れなのですが、私には批判されている元の理屈が良く分かっていないので、批判が妥当なのかどうかも良く分からないです……。
ともあれ、こんな感じの話が出てきていると思います。
- 投資せずに貨幣をそのまま持っていると、好きなときにすぐに使えるというメリットがある (流動性がある)。そのため、人は所得のうち消費しなかった分全てを投資するのではなく、一部は貨幣のまま持とうとする (流動性選好)。
- 流動性が高いことはメリットであるが、その価値は利子率などによって変化する (利子が高ければ、流動性のメリットは相対的に低くなる)。このような流動性の価値を「流動性プレミアム」と呼ぶ
- 人々の貨幣保有への欲求が強まると、投資と消費の双方が減って需要不足が生じる
- 需要不足が起きると、恒久的な非自発的失業が発生する。この状態では生産性が向上しても失業が増えてしまう
- ケインズは「乗数効果」が存在すると主張し、失業保険よりも公共事業のほうが常に良い (どんなに無駄な事業でもやらないより良い) と主張するが、乗数効果は幻であり存在しない
- 公共事業の効果は、単純にその成果のみで測ることができる。非自発的な失業がある場合 (人が余っている場合)、少しでも成果の得られる公共事業ならば実施する価値がある
後半では日本での小泉改革の時期の出来事について、批判的な論評が展開されます。
- 夕張市は積極財政で復興を目指したが、その投資は市外の市民を潤し、しかしながら周辺の市では節約を行ったために破綻した。周辺の市も協調して積極財政を行っていれば
- 日産のゴーン改革は解雇による生産の効率化。日産一社の行動としては間違っていないが、多くの企業がこのような行動を取ると不況が深刻化する (合成の誤謬)
- 不況の波は世代交代によって生じる。不況が続いても、世代が交代して、不況の記憶を持たない (節約しない) 世代が主流になると好況になる。が、やがてバブルが弾けてまた不況になる
と、こんな感じだと思うのですが、どうも私の理解不足感が否めません。もう少しいろいろ勉強してからまた戻ってきたい感じです。
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