2011年10月5日(水曜日)
AppLogが何をしようとしているのか良く分からない
公開: 2011年10月10日11時30分頃
少し前から「AppLog」というものが話題になっていましたが、朝日新聞の記事になりましたね。
- アプリ利用時間や回数丸わかり 「アップログ」に批判 (digital.asahi.com)
記事を書かれたのは、岡崎市立中央図書館の事件でも活躍された神田大介さん。
そのAppLogのサイトはこちらのようです。
- AppLog (www.applogsdk.com)
見ていくと、いろいろ気になることが書かれています。
まず、どんな情報が送信されるかですが、以下のように説明されています。
- Android ID
- 端末の機種情報
- 端末のOS
- 端末にインストールされているアプリケーションの情報
- 端末で起動されているアプリケーションの情報
以上、AppLogSDKの概要 より
インストールされているアプリケーションの情報が送られるというのは、けっこう大きな話だと思います。さらに、こんなことも書かれています。
アプリケーションの使用状況から、統計的にユーザーの性別、年齢層、スマートフォンの利用頻度、アプリケーションへの興味、 有料アプリへの関心、などを推測することができます。
以上、AppLogオーディエンスターゲティング より
つまり、誰が誰だか分からないようにして統計に使うといった話ではなく、個々人についてインストールされているものを分析して、ユーザーの性別や年齢その他を推測するようです。こうなると、人によっては気持ち悪いと感じることもあるでしょう。
しかし、機微な情報を送信すること自体が駄目だというわけではありません。ユーザー自身にメリットがあって、ユーザーが承知の上で使うなら問題ないわけです。ただしその場合、ユーザーに内容を正しく理解させた上で、その同意を得るということが重要になってきます。
次に気になるのはビジネスモデル、マネタイズの仕組みです。
ユーザーから情報送信の許可を得られた端末1台につき1円を月額報酬としてお支払いいたします。 インストール数比例型の全く新しい収益モデルをアプリ開発者様に提供します。
以上、AppLogSDK導入のメリット より
エンドユーザーから情報を取得するのと引き替えに、アプリ開発者にお金が支払われる仕組みです。情報を取られているのはエンドユーザーなのに、その対価は開発者に支払われるというのは、いろいろな意味で画期的ではありますが、やはり違和感はありますね。
Q&Aにはこんな質問も出ています。
AppLogSDKが重複してインストールされた場合どういう動作となるのですか?
AppLogSDK が組込まれたアプリが複数同一端末にインストールされた場合
1番初めにインストールされ起動したアプリのみが AppLog の送信処理を行います。
2番目以降にインストールされ起動したアプリについては、1番目のアプリがアンインストールされるまでAppLog 送信の動作は行いません。
以上、AppLog Q&A より
要するに早い者勝ちなので、後から参入した開発者は不利になります。やがて参入メリットが無くなると思うのですが、そこはビジネスモデル的に大丈夫なのか少し心配ですね。
しかしもっと気になるのは、エンドユーザーに何のメリットもないように見える点です。このような情報提供に同意するユーザーがいるのでしょうか?
AppLogは以下のように説明しています。
取得したアプリケーション情報は、端末における広告配信の最適化など、端末のユーザー体験の向上に利用する事を目的として利用させて頂きます。
以上、AppLogSDKとは? より
「広告配信の最適化」が「ユーザー体験の向上」になるという理屈。ターゲットに合わせた広告を出すと、広告配信側の収益向上になるというのは分かります。しかし、ユーザー体験が向上するというのはどういう事なのでしょうか。「ユーザーにとっても、自身にマッチした広告が出た方が良いだろう」と言いたいのでしょうか?
ユーザーが最初から広告を見たいと思っていて、広告配信専用アプリをインストールしたというならば、その理屈は受け入れられるでしょう。しかし、AppLogはそういう使われ方を想定したものではないはずです。むしろ、広告を望んだわけではないユーザーに対し、アプリを無料で使わせる代わりに広告を配信する、というモデルなのではないでしょうか。
さらに別のページを見ると、こんなことも書かれています。
ユーザー様には、「AppLog」というアプリケーションの利用情報を送信する事で、利用しているアプリ開発者の収益化支援に協力する事ができ、より便利に「無料アプリ」を楽しむ事ができます。
アプリ内に表示される広告と異なり、初回の許諾画面以外は一切何も表示されないため、煩わしい広告表示でアプリの利便性が下がることもありません。
以上、For Users より
さっきは「広告配信の最適化」と言っていたのに、こちらでは「煩わしい広告表示でアプリの利便性が下がることもありません」と書かれています。広告は出るのでしょうか、出ないのでしょうか。
神田さんの (朝日新聞の) 記事ではこう書かれていますが……。
ミログはデータを解析して利用者の年齢層や性別、好きなアプリの傾向などを推定。KDDI子会社で携帯電話向け広告を手がける「メディーバ」(東京)がふさわしい広告を配信する仕組みだ。現在は本格サービスの準備中だが、たとえば株式アプリに熱中している人に証券会社の広告を集中して出す、などの使い方ができる。
これを見ると、広告を配信することは確定であるように読めます。AppLogを使用しているアプリケーションでは広告は出ずに、他のアプリケーションで広告が出るのでしょうか。仮にそうだとすると、そちらのアプリケーションで広告を拒否することは可能なのでしょうか。
AppLogのサイトにはプライバシーポリシーもあります。冒頭にPマーク (プライバシーマーク) が掲げられていますが、読んでみると、なかなか衝撃的な内容です。
弊社は、ユーザーから収集した本件情報を、以下の目的に利用いたします。なお、利用にあたっては、収集した本件情報を加工・分析する場合があります。
(1)ユーザーの趣味・嗜好等に合致した商品・サービスや、これらに関する情報の提供(ユーザーの趣味・嗜好等に合わせた広告の提供を主としますが、これに限られません。)
(2)商品・サービスの改善・新規開発
(3)取引先に対するプロモーション(販売促進活動)の提案
(4)第三者または弊社と第三者によって開発されるサービスの改善・新規開発
(但し、特定の個人を特定できない統計情報に加工されたデータとして利用する場合に限ります)
(5)その他ユーザーから得た同意の範囲内で利用すること
以上、Privacy Policy より
「ユーザーの趣味・嗜好等に合わせた広告の提供を主としますが、これに限られません」と書かれています。つまり、趣味指向のデータが広告以外にも使われ得ることがはっきりと示されています。しかし、具体的にどう使われるのかははっきりしません。極端な例としては、「趣味指向データを分析し、特定の病気を抱えていそうな人を抽出して、該当者のスマートフォンに直接電話し、健康食品を紹介する」という使われ方も許されるように読めます。
このプライバシーポリシーを読んだ上で、それでも情報の提供に同意する人はいるものなのでしょうか?
情報が何に使われるのかがはっきりしない状態で同意を求められても、本来なら判断のしようがないはずです。判断をせず、やみくもに「同意」ボタンを押すユーザーはいるでしょうが、それはユーザーが契約内容を正しく理解した上で同意の意思表示をした、とはみなせないでしょう。
そもそも、エンドユーザーにメリットが無いように見える時点で問題です。「エンドユーザーには何のメリットもないのに、アプリ開発者はそのユーザーの同意を得る必要がある」というのでは、ビジネスモデル自体に無理があります。そのようなビジネスを成立させるには、「メリットがあるのかのように錯覚させる」とか「深く考えさせないようにして、とにかく同意の意思表示をさせる」とか「同意を強く迫る」といったことが必要になってくる可能性があります。しかも、それを実行するのはAppLogの提供者ではなく、AppLogを利用する開発者になるでしょう。
まとめると、AppLogのビジネスモデルで気になる点は以下の2つです。
- 取得した情報を何に使うのかはっきりしない (プライバシーポリシーには広告に限らない旨が明記されている)
- エンドユーザーにどういうメリットがあるのか分からない (ユーザーが「同意」する動機が存在しないように思える)
この手の話ではFacebookやGoogleなどのサービスが引き合いに出されることも多いのですが、そういったサービスでは、ユーザーにどういうメリットがあるかは明らかです (もちろん、その明らかになっている目的以外に使用されれば問題になります)。あえて目的を告知しなくても十分だと言える場合も多いでしょう。
しかし、AppLogはそうではありません。もとより、様々な異なるアプリケーションによって利用される想定なのですから、情報を何にどのように使うのか、アプリケーションの性質から明らかになるということが期待できません。AppLogの側で事前に明示しておくことが必要になると思います。
ところで、神田さんは最後にこのようにまとめられています。
スマートフォンを巡っては、彼氏や彼女の位置情報や通話履歴を確認するアプリ「カレログ」(配信停止中)に批判が集まるなど、プライバシー保護の不十分さが問題視されている。
スマートフォンというか、Androidなんですよね。カレログもAndroidです。こういったアプリが次々と出てくると、「Androidアプリを入れるときは、意図に反する動作をしないものかどうか十分に注意・確認してから使うように」という注意喚起をせざるを得なくなってきます。実際、既にそういう状況ではあると思いますが……。
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大つけ麺博 その7 日本ラーメン協会ドリームチーム by 一風堂×天神下大喜 / 鶏祭麺(チーサイメン)
公開: 2011年10月9日21時40分頃
「大つけ麺博 (dai-tsukemen-haku.com)」その7。
今日は「日本ラーメン協会ドリームチーム by 一風堂×天神下大喜 (dai-tsukemen-haku.com)」の「
スープは鳥系で、鶏の挽肉が沈んでいます。イメージよりも濃厚で塩辛いです。
麺はふすま (麦の皮) 練り込み、ですが特に強い風味があるというわけでもなく、けっこう普通。
問題は具。鳥つくねの串がドンと1本入っています。まずいわけではないのですが、麺に合っていないと思いました。チャーシューなら麺と一緒に食べて一体感を味わえるのですが、この鳥つくねは薄味でやわらかく、麺と一緒に食べても存在感を感じられません。麺とは別にオカズとして食べる分には良いと思いますが、つけ麺の具材としては今ひとつな印象が否めませんでした。
トッピングの鳥もつ煮も微妙。こちらは味はしっかりついていて存在感がありますが、むしろ存在感がありすぎです。かなりの歯ごたえがあるので、麺と一緒に口に入れて噛むと、もつだけが口の中に残る結果になります。
タマゴもまた微妙。かなり柔らかめの半熟ゆでタマゴなのですが、味付けでない上に、黄身が流れ出すほどやわらかいです。これはこれで鳥つくねには合うのかもしれませんが、麺やつけ汁とはマッチしない感じがしました。
という感じで、つけ麺それ自体は美味しいと思うのですが、具材には再考の余地があるように感じました。
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