2003年5月21日(水曜日)
障碍者のため「だけ」のアクセシビリティ
アクセシビリティと言うと
たとえば、「画像に代替テキストがないと読み上げできない」という話だけをしてしまうと、「うちの商品は目が見える人が対象だから問題ない」などという意見が出てきてしまうことがあります。貧困な発想だと思いますが、アクセシビリティ = 障碍者、という強いイメージを持ってしまっていると仕方がないのかも知れません。
しかし、そこに「画像に代替テキストがないと、ロボット型サーチエンジンは情報を得ることができない」という話を付け加えてみるとどうでしょう。これに対して「うちの商品を検索する人はいないから問題ない」などという人は、ほとんどいないでしょう。代替テキストの指定は、障碍のない人をも幸せにしてくれるのです。
同じ事が、ほとんど全てのアクセシビリティ項目について言えます。「コントラストが弱いと色覚特性のある人に読めない可能性がある」という話には「うちの商品は……」という反論があり得ますが、「モノクロプリンタで印刷すると読めなくなる可能性がある」という話に抵抗する人はあまりいないでしょう。
※商人は「ブランドイメージ」の低下という話にピンとこなくても、「営業機会の損失」という話には興味を示してくれることがあります。Web で見た商品が気になって、「実際に店舗で手にとって見てみたい」と思ったユーザは、商品スペックを印刷して持って行こうとするかも知れません。その時、印刷した内容が読めなかったらどうでしょうか。ユーザは印刷を諦めてスペックを紙にメモしてくれるかも知れませんが、商品を見ること自体を諦めてしまうかも知れません。
フレームを使うと「読み上げできない」「対応していないブラウザがある」「操作しづらい」という話になりがちですが、実は「URL が紹介できない」という話が重要になってくるかも知れません。
※ある商品に興味を持った人は、その Web ページの URL を誰かに紹介しようとするかも知れません。しかし商品紹介ページがフレームの中にあると、それだけで URL を紹介することが困難になります。ちょっと URL が紹介されただけで万単位のアクセスが発生することがあるので、馬鹿にできません。
個人的には障碍者のため「だけ」の施策であってもそれは必要だと思いますが、「障碍」だけを強調したアクセシビリティガイドラインを作ってしまうと、それがかえって「うちの商品は障碍者を対象にしていない」という意見を招いてしまうことがあります。私がいつも「障碍のない人も含めてみんなが幸せになれる」という点を強調するのは、そういう点を考えてのことです。
※Web ではあんまり言ってないか……。
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