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パクリ系

2003年10月29日(水曜日)

パクリ系

plagiarized site (shinzlogclips.blogspot.com)」。Web サイトのデザインを丸ごと plagiarize (剽窃(ひょうせつ)、盗用) されたという話。

見てみると、確かにそっくりですね。ヘッダ部からして似ているわけですが、見出しのスタイルなんか見ると色違いなだけだったり。

たとえば六本木ヒルズと「あるサイト」の「サイト更新情報」の見出しを並べてみると、色が水色と黄色、英語部分が小文字と大文字という違いだけでほぼ同じです。

実際にデザインしているところを見たわけではありませんが、いろいろなことを考えて、検討して、試して、たいへんな苦労して完成させたデザインなのでしょう。それがあっさり使い回されて「ただ乗り」されたのでは……。

しかし、木達さんも書かれています (kidachi.kazuhi.to)が、これを法的にどうにかするのは難しいのですよね。まず、不正競争防止法を適用してどうにかなる要素はないでしょう。Web サイト自体が六本木ヒルズと混同させるようなものではないですし。見出しのスタイルなどを意匠登録したりはしていないでしょうし、そもそも意匠として登録するような性質のものでもありませんから、意匠法も論外。

可能性があるとすれば著作権法なのですが、実は紙面レイアウトの剽窃については既に争われたことがあって、「知恵蔵事件」というのがあります。これは厳密に言うと「デザイナーとの契約が切れちゃった後に同じデザインで出し続けた」という話ですが、ともあれデザイナーが発行元である朝日新聞社を訴えて裁判になりました。長いですがそのまま引用しておきます。

著作権法にいう著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるが、控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状などが配置される本件レイアウト・フォーマット用紙及び控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、編集著作物である知恵蔵の編集過程における紙面の割付け方針を示すものであって、それが知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。

以上、H11.10.28 東京高裁 平成10(ネ)2983 著作権 民事訴訟事件 より

というわけで、レイアウト・フォーマットそのものに単独で「著作物性」を認めることはできないという判断です。ただし続きがあって、

控訴人の主位的請求原因が、一九九四年版と一九九五年版の知恵蔵に使用されたレイアウト・フォーマット用紙は控訴人が制作を担当した本件レイアウト・フォーマット用紙の複製であることを前提とするものである以上、控訴人の主張も、本件レイアウト・フォーマット用紙が、そのまま知恵蔵以外の他の書籍、特に被控訴人以外の出版社刊行の書籍に使用されるものであることを前提にしているものでないことは明らかである。

以上、H11.10.28 東京高裁 平成10(ネ)2983 著作権 民事訴訟事件 より

と言っています。このケースでは全く関係ないサイトに流用されてしまったわけですから、ちょっと事情が異なるとも言えます。判決は、言い換えれば「編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情」があれば著作物たり得ると言っているわけですから、そこに可能性が残されてはいます。

ただまあ、全体として「難しい」気はしますね……。

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