水無月ばけらのえび日記

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デフレの正体

2011年8月15日(月曜日)

デフレの正体

公開: 2011年8月20日19時30分頃

読み終わったのでメモ。

文章が妙に語りかけ口調で違和感がありますが、講演の記録をまとめたものなのだそうで。著者は地域振興のアドバイザーとして活動されている方で、本書でも地方経済の現状、地方と都市部の差、都道府県別の経済状況の差、といった観点から入っていきます。また、GDPのような総合的な指標ではなく、販売数量や貿易収支などのより具体的な数字を見て行きます。経済学の話というのは抽象的な理屈に終始することが多いですが、本書はまず現状を地方、現場のレベルから把握しようというところから入っていきます。

本書の主張はシンプルで、「デフレ不況の原因は生産年齢人口減少による需要不足」というもの。これだけではいまいち納得できないと思いますが、本書ではたくさんの傍証を出してこの論拠を支えており、個々の話も非常に分かりやすいので説得力があります。

不況の原因は生産年齢人口の減少による需要不足であり、生産力不足ではないため、構造改革やリストラによる生産性の向上は解決にはならないばかりか逆効果だと著者は説きます。

また、生産年齢人口の減少に歯止めをかけることも難しいと言います。出生率を上げれば良いと思われがちですが、出産適齢期の女性の数そのものが今後減り続けるため、出生率を多少上げても出生者数はさほど増えないというのです。そしてこう続けます。

子どもを増やすこと、少なくともこれ以上出生率が下がらないように努力すること自体は大事です。でもそれは団塊時代の加齢という目下の一大課題の解決にはまったくなりません。関係ないことを持ち出すのは、問題から目を背ける人を増やすだけで、事態を放置して悪化させるだけなのです。それなのになぜ出生率ばかりが取り沙汰されるかといえば、物言わぬ若い女性に責任を転嫁できて、男性、特に声の大きい高齢男性は傍観者気分になれるからではないでしょうか。そういう男ばかりだからさらに結婚しない女性が増えてしまっているのかもしれませんよ。

以上、p193~p194 より

これは痛烈ですね。

そして、対策として以下のようなものを挙げています。

最も印象に残ったのはこのあたりです。

今世紀前半の日本の企業社会の最大の問題は、自分の周りの環境破壊ではなく内需の崩壊なのですから、エコと同じくらいの、いやそれ以上の関心を持って若者の給与を上げることが企業の目的になっていなくてはおかしい。本当は「エコ」に向けるのと同様、いやそれ以上の関心を、若い世代の給与水準の向上に向けなければおかしいのです。「人件費を削ってその分を配当しています」と自慢する企業が存在すること自体が、「環境関連のコストを削ってその分配当しています」と自慢する企業と同じくらい、後々考えれば青臭い、恥ずかしいことなのです。

以上、p211~p212 より

著者はエコと言っていますが、より広く「CSR」(Corporate Social Responsibility, 企業の社会的責任) の観点からすれば、無いことではないと思います。実際、従業員満足度の充実をうたう企業は増えてきている印象があります。

あと、面白いと思ったのは、はっきり名前を出してWiiに言及しているところ。Wiiが売れたのは高齢者にも受け入れられたからだ、という話なのですが、実際、任天堂は「ゲーム人口の拡大」をスローガンにし、「Touch! Generations」というブランドを展開してきた経緯があります。その任天堂は今、ニンテンドー3DS (www.amazon.co.jp)が思ったほど売れずに苦戦しているという状況にあるわけですが……。

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