なぜ経営者は使えない情報システムを採用するのか
2011年8月3日(水曜日)
なぜ経営者は使えない情報システムを採用するのか
公開: 2011年8月7日23時20分頃
こんな記事を発見しました……「法人営業の「攻め方」 ――「買える人」「買いたい部署」を見極めなくては、「受注」はない。 (www.nikkeibp.co.jp)」
非常に興味深いと思ったのは、クラウドシステムの営業の話です。これを読んで、とある光景が思い浮かびました。
- 現場の声を聞かずにシステム導入を決定する経営陣
- 唐突に導入されるシステムに振り回され、しなくても良いはずの努力を重ねる現場
- 本来とは異なる形で無理矢理運用されるシステム (機能のほとんどは不要とされ、ごく一部だけが使われていたりする)
こういう光景、見たことがある方は多いのではないでしょうか。
情報システムの良し悪しを判断するのは、現場の人間であっても難しいものです。まして、現場を知らない経営陣が導入を決めれば、何が起きるかは目に見えています。経営陣だってそれは分かるでしょうに、なぜ現場の声を聞かずに採用してしまうのか。私は長いこと疑問に思っていました。
その疑問は、この記事を読んで氷解しました。
「クラウドシステムをどの部署に売り込みますか?」
「情報システム部です」
「クラウドのメリットは何ですか?」
「顧客のシステム運用要員を削減できます」
「どの部署が削減対象になるのでしょうか?」
「情報システム部です」
――これで「詰み」です。
クラウドシステムを情報システム部に売ろうとしても、システム導入で整理される人が受け入れるはずがないというお話。確かに一見、理に適っています。
……少し話は逸れるのですが、私はこの点は疑問に思います。多くの企業は、リストラには慎重です。「システム導入で業務の負荷が減れば、自分は不要になり整理される」と考えるよりも、「煩わしい業務から開放され、もっと別の課題に取り組めるようになる」と考えるほうが一般的なのではないでしょうか。ある情報システムが現場で歓迎されないのは、リストラを警戒しているのではなく、単にそのシステムが現場では役に立たないと判断されている可能性のほうが高いと思います。
と、異論はあるものの、純粋に売る側のロジックとしては、ある意味で筋が通っていると思います。いったん受け入れて続きを読みましょう。
話を戻しますが、それではこの場合、どこに売り込むのが正しいのでしょうか?
もちろん、クラウドシステムで運用要員を削減できることをメリットだと考える人です。
それはどこか。コストセンターである情報システム部の要員を削減して、プロフィットセンターに異動させる決定ができるのは、経営者。――つまり経営者に直接売り込むのがベストです。
経営者に直接売り込むべきであると。そしてこれが現場無視のシステム導入につながり、冒頭で述べたような光景が再現されるわけですね。
しかも、失敗だと思っているのは現場だけで、売った方も経営者も失敗を認識していません。情報システム導入の成果を正しく評価することは意外に難しく、導入前との比較はできても、他のシステムを採用した場合との比較は簡単にはできません。システムがひどくても、現場は仕事を回すために何とか頑張って運用しようとします。本来なら必要の無かった努力が行われ、その結果として何とか運用されている、というような場合も多いです。そのような場合、経営者はそれを成功とみなすでしょう。
※もっとも、あまりにひどいと運用でカバーしきれず、業務に支障が出るケースもあります。そうなればさすがに経営者も気付きます。
「現場の意見を聞かずに経営陣が導入を決める」というやり方は、売る側としては最適な行動でしょうが、買う側としてはリスクの高い選択です。
……と、分かってはいても解決するのはなかなか難しいというジレンマ。経営者が情報システムを正しく評価できるようになれば良いのでしょうが、それはなかなか難しいと思いますし。
※この話の場合は、経営陣と情報システム部門がお互いを全く信用していないのが問題のような気もしますが。
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