個体識別番号は個人情報と容易に結びつく
2010年5月12日(水曜日)
個体識別番号は個人情報と容易に結びつく
更新: 2010年6月1日11時35分頃
「KDDIの固体バカが言う「EZ番号はプライバシーに関する情報ではない」 (takagi-hiromitsu.jp)」。
「固体」ではなく「個体」が正解なのですが、KDDIのドキュメントには「固体」と記述してあるという。まあ、それは単なる変換ミスの類でしょうが、問題なのはその記述の内容の方ですね。
■EZ番号はお客さまがURLにアクセスした際にサイト提供元のサーバに通知され、会員のアクセス管理などに利用されますが携帯電話番号やメールアドレス、氏名などのプライバシーに関する情報は含まれておりませんのでご安心ください。
※2010-06-01追記: 上記の記述は削除されたようで、現在は確認できません。
確かに、EZ番号それ自体には個人情報は含まれていないでしょう。しかし問題は、個人情報と簡単に結びつくという点です。たとえば、以下のようにすると……
- 特定のURLを含んだメールを大量送信する
- そのURLに、送信先のメールアドレスを付与しておく (メールアドレスそのものである必要はない)
- URLにアクセスしてきた端末のEZ番号を取得し、URLに含まれるメールアドレスの情報と組み合わせて記録する
これでEZ番号とメールアドレスが結びつきます。そして、このEZ番号とメールアドレスの組みが他のサイトに提供されると……そのサイトでは、アクセスしてきた人のEZ番号を取得し、メールアドレスを知ることができるようになります。
この例はメールに記載されたURLにアクセスさせるという方法ですが、結びつけの方法は他にもあります。たとえば会員制のサイトでは、会員情報登録の際に入力した情報とEZ番号とを結びつけてDBに保存しています。これはどのサイトも普通にやっていることですが、SQLインジェクションでDBの内容が漏洩したりすれば、利用者にとっては厳しいことになります。
そのため、個体識別番号をそのままDBに格納するのではなく、ハッシュ関数を通してハッシュ値だけ記録するようにしているサイトもあるようです。ただ、キャリア側からそのような指導が行われている気配もありませんし、むしろ「安全です」と言ってしまっているわけですから、そのような取り組みの必要性は認識されていません。わざわざそのような処理をしているサイトは少ないでしょう。
EZ番号それ自体に個人情報が含まれるかどうかは、どうでも良い話なのです。それを個人情報と結びつけることが出来るか、実際に結びついているかが問題です。
ちなみに、CookieやIPアドレスも個人情報と結びつけることが可能です。もっとも、これらが個人情報と結びつけられても、その結びつきは限定されています。Cookieの場合はブラウザ側で削除できますし、そもそも発行したサイト以外からは読み取れません。IPアドレスの場合、同じ値がずっと使われるとは限りませんし、そもそも個人と一対一対応しているわけでもありません。
※プライバシーポリシーに「CookieやIPアドレスは個人情報ではありません」と書いている企業もあるようですが、それ自体が個人情報かどうかは問われません。そうではなく、「当社ではCookieやIPアドレスを個人情報と結びつけません」と書かなければなりません。
それに対して、EZ番号はどうでしょうか。削除できず、変更できず、どのサイトからも同じ値を読み出し可能であるとすれば、それはかなり強固な結びつきになるのではないかと思います。
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