脆弱性届出話
2004年9月13日(月曜日)
脆弱性届出話
更新: 2004年11月4日
「脆弱性情報届出制度は運用しながら改善を~パネルディスカッション (internet.watch.impress.co.jp)」という話ですが、
9月8日時点でのユーザーからの届出件数は、ソフトウェア製品15件、Webアプリケーション71件の計86件に上っており、うちソフトウェア製品1件(ウイルスバスター・コーポレートエディション)、Webアプリケーション5件について脆弱性の修正が完了したとのこと。
前に報道されていた話と比較すると、
- 件数が増えた
- 「個人情報漏洩に繋がる脆弱性は届け出られていない」という話が消えた(!)
というところでしょうか。後者はたまたま今回は言っていないだけという可能性もありますが、何となくそうではない気がします。
当然というか問題点がいろいろ出ているようで、
そして、実際に制度を運用してみての感想として、早貸氏は「Webアプリケーションの場合、同一プログラムを複数のサイトで利用しているケースも少なくなく、そういったケースでは1つ脆弱性が見つかると、利用しているサイトの数だけ届出が来てしまう」「Webサイトに連絡先メールアドレスが書かれていても、管理者がそのアドレス宛のメールを読んでいないケースが多く、その場合は連絡先の電話番号などをいちいち調べなければならず面倒」などといった問題が出ていると語った。
まあ前者は「頑張ってください」というより他ないですね。端から見て何が届け出られているのか分からないので、どうしようもありません。ひょっとすると、某サーバ屋のアレなんかみんなして届け出ていたりするのかもしれない……と思ったりするわけですが、だからといって「きっと届け出られているだろうから良いだろう」というのも外れているかもしれないわけで。届出の情報が公開されない限り、重複は回避できないでしょう。
それから後者、これ、悲しいことにホントに連絡が取れない場合というのが実際にあるようですね。その場合は
本件、以下の理由により取扱いを終了することになりましたので、ご連絡いたします。
理由:
ウェブサイト運営者と連絡を取るために、当該サイトの脆弱性関連情報通知先に連絡をしましたが、期限内に返信がなかったため、ウェブサイト運営者と連絡が取れないものと判断しました。
……ということになるのですが、そうなったときに発見者はどうすれば良いのかというのが気になるところです。
密かに修正ということはもう期待できませんので、放置なのか、公開なのかの二択になると思いますが……当然、発見者は放置したくないから届け出ているわけでして……情報を公開したほうが良いものかどうか悩みます。
ただし、未解決の課題として、高木氏は「ベンダーによる脆弱性情報の告知方法のガイドラインができておらず、依然としていわゆる『ヤミ改修』のような行為が行なわれる危険性は減っていない」「脆弱性情報の発見者が情報を公開する場合のガイドラインがないため、同じような欠陥を防ぐために必要なフルディスクロージャーをいつになったら行なっていいのかがわからない」「そもそも『不正アクセス行為に当たらない脆弱性の発見方法』が明確化されておらず、どこまでの行為が許されるのかがわからない」といった問題を列挙した。
これは激しく同意で、私も一番気になっているところです。高木さんは流石に発見者の気持ちが良く分かっていらっしゃるようで。
しかし少なくとも最初の項目については、ガイドラインで「個人情報漏洩の時は情報を公開する必要がある」としているわけです。逆に言えば、それ以外の時は公開しなくて良いということですから、むしろ制度として「個人情報が漏洩していない場合はヤミ改修で良い」と認めているものだと理解していました。
もっとも、脆弱性によって個人情報が漏洩したかどうかというのは非常に微妙な部分があります。たとえば XSS などはセッション Cookie が盗まれてセッションハイジャックが行われる可能性があり、ログインによって個人情報が閲覧できるなら、個人情報漏洩の可能性もあるはずなのです。しかし実際にはロクな調査もしないで、「XSS がありましたが実害なし」などという判断をして終了ということになるケースがほとんどです。XSS が発覚しても、「この XSS は Cookie を使ってログインするサーバとは別のサーバのものなので、セッションハイジャックのおそれはありません」などと言ってもらえれば、それはそれで安心できると思うのですが……。
※そう言ってもらえない場合というのは、漏洩の可能性が否定できない = 情報公開しようねということになるはず。
ちなみに、届け出られて修正された脆弱性が 5件あるということですが、そのうちの 1件は某 ISP (ニフティではありません) の検索フォームの XSS です。これも全く情報公開された形跡がないですね。
あと、面白いと思ったのは脆弱性情報の届出状況のグラフ (internet.watch.impress.co.jp)。所々にぼこっと大きな山ができているのは、「貯めていたものを一気に吐き出した」人がいるからなのかなぁと思ったり。手持ちの脆弱性がたくさんある場合は、まとめて一度に送るでしょうからね。
※2004-11-04 追記:「某サーバ屋のアレ」は届け出てみたところ、普通に取り扱われて普通に修正の連絡を受けました。つまり、私以外の誰も届け出ていなかったものと思われ……「誰かが届け出ているだろう」という発想はしちゃ駄目みたいです。
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