水無月ばけらのえび日記

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恩情じゃなーい

2003年12月25日(木曜日)

恩情じゃなーい

美味しんぼ 87巻 (www.amazon.co.jp)を読んでいて、激しく気になったところが。第二話「切れあじこそ"味"」では、こういう事件が起きました。

※その後包丁は別の人の手に渡るのですが、それはこの際あんまり関係ないので置いておきます。

その後当然のように二度売りが発覚して話が盛り上がって行くわけですが、こんな発言が……。

「だが、これは海原先生の恩情だよ。あの包丁、先生に権利があるのにそうおっしゃってくださるなんて。」

以上、美味しんぼ 87巻 第二話「切れあじこそ"味"」 より

これは要するに「包丁の権利は海原雄山にある」という主旨の発言なわけですが、これに誰も異議を差し挟まないのでした。この場合、先に契約したのは海原雄山なので、海原雄山に権利があると考えたのでしょう。

しかし実際には、この包丁の権利は海原雄山にはありません。とりあえず民法 178条を全読してください……といっても、民法 178 条の条文ってたったこれだけですが。

動産に関する物権の譲渡は其動産の引渡あるに非されは之を以て第三者に対抗することを得す

以上、三省堂 『模範六法2002平成14年版』 民法第178条〔動産物権の対抗要件〕 より

動産の二度売りの場合は引き渡しを受けた者、ぶっちゃけて言えば現物を持っている者が勝ちなのです。海原雄山は山岡に包丁の引き渡しを求めることはできず、骨董屋の店主に対して「債務不履行」ということで賠償 (返金) を求めるのが筋ということになります。 まあお願いしてみても良いのですが、山岡に応じる義務はありません。

※前ページの中川の態度はある意味正しいかと思いますが。

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