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2013年4月

2013年4月16日(火曜日)

PDF技術の翻訳がなかったことになっているウェブアクセシビリティ方針

公開: 2013年9月29日10時40分頃

JIS X 8341-3:2010では、各サイトごとに「ウェブアクセシビリティ方針」を定めることを求めており、それを公開することを推奨しています。

企画段階においてウェブページ一式の責任者は,ウェブアクセシビリティ方針を策定し,文書化しなければならない。ウェブアクセシビリティ方針には,目標とするウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級を含まなければならない。

注記 ウェブアクセシビリティ方針は,ウェブサイトではサイト上,ウェブアプリケーションではマニュアル,パッケージなどで公開するとよい。

以上、JIS X 8341-3:2010 6.1 企画 より

最近ではJIS X 8341-3:2010に準拠、もしくは配慮しようとするサイトも増えてきて、ウェブアクセシビリティ方針が公開される例も増えてきました。大変ありがたいことだと思います。

しかし、実際に公開されたウェブアクセシビリティ方針を見ていると、いろいろ気になることがある場合もあります。たとえばこんな記述。

なお、PDFファイルについては、W3C Working Group Note「PDF Techniques for WCAG 2.0」に関するガイドが情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会実装ワーキンググループにおいて正式に公開されたのち対応方針を検討します。

以上、科学技術振興機構ウェブアクセシビリティ方針 より

PDFの掲載方針が定まっていないため、PDFの掲載方法等について統一されていない問題があります。W3C Working Group Note「PDF Techniques for WCAG 2.0」の翻訳が情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会実装ワーキンググループにおいて正式に公開されたのち対応方針の検討を行います。

以上、宮城県公式ウェブサイト ウェブアクセシビリティ方針について より

Techniques for WCAG2.0 (www.w3.org)には元々PDFに関する実装方法はありませんでしたが、2012年1月のバージョン (www.w3.org)からは、PDFに関する実装方法も含まれるようになりました。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会はこの翻訳を公開しておりまして、PDFに関する更新を含むバージョンについては2012年5月15日の19時頃に公開しています。

PDF技術だけの全部入りページはないのですが、個々の実装方法についてはきちんと全部あります (「FLASH1: 非テキストオブジェクトに名前プロパティを設定する (waic.jp)」など)。

というわけで、本家の更新からは時間がかかってしまっていて申し訳ないと思いつつも、それでもずいぶん前に公開しているわけです。それがいまだ公開されていないかのようなことを書かれると残念です。PDF Technology Notesの翻訳はまだ公開されていないのかどうか、調べてから公開されても良いのではないでしょうか。

ちなみに、ずっと昔に総務省が公開したウェブアクセシビリティ方針にも同じような記述が入っていました。

PDFファイルについては、W3C Working Group Note「PDF Techniques for WCAG 2.0」の翻訳が情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会実装ワーキンググループにおいて正式に公開されたのち対応方針を検討する。

以上、総務省ウェブアクセシビリティ方針 より

総務省は早くから取り組んでいましたので、これが公開されたときは、確かに翻訳が公開されていない状況だったはずです。

しかし今は違います。現在ではこれをコピペして公開することは許されないと思いますし、そもそも、ウェブアクセシビリティ方針は何も考えずにコピペして良いものではありません。個々のサイトによっても異なりますし、時代によっても異なってくるものです。

というわけで、何も考えずに他サイトのウェブアクセシビリティ方針をコピペするのはかっこわるいよね、というお話でした。

※そもそも総務省にしても、翻訳の公開を待たなければ方針が決められないのかという疑問があるわけでして。PDFにいろいろな意味でやっかいな事情があるのは分かりますが、この逃げ方はどうなのかと思います。

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