2011年4月23日(土曜日)
風力の可能性
公開: 2011年4月24日23時15分頃
こんな記事が……「風力発電で原発40基分の発電可能 環境省試算 (www.asahi.com)」。
記事だけ見てもどのくらい現実的な数字なのかが良く分からないのですが、該当の試算は「平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書 (www.env.go.jp)」というもののようです。本体の報告書は出ていませんが、概要だけ公表されていますね。
概要を見ると、風力のシナリオはこんな感じの数値になっています。
- 導入ポテンシャル …… 190,000万kW
- FIT対応シナリオ …… 2,400~14,000万kW
- FIT + 技術革新あり …… 41,000万kW
- FIT + 補助金あり …… 13,000~59,000万kW
- FIT + 技術革新 + 補助金 …… 150,000万kW
いきなり意味が分かりませんが、「導入ポテンシャル」の定義は以下のようになっています。
・賦存量…設置可能面積、平均風速、河川流量等から理論的に算出することができるエネルギー資源量。現在の技術水準では利用することが困難なものを除き、種々の制約要因(土地の傾斜、法規制、土地利用、居住地からの距離等)を考慮しないもの。
・導入ポテンシャル…エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したエネルギー資源量。賦存量の内数。
つまり、居住地に近すぎたり険しい山だったりして設置できないようなケースを除外した、実際に作ることが可能な値が「導入ポテンシャル」ですね。ただし、これはあくまでポテンシャルであって、実際に採算が合うかどうかは計算していません。つまり採算を完全に度外視して限界まで作りまくった場合の数字で、これが19,000万kWとなります。
採算が取れるかどうかについては、FIT (再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度) を実施することを前提にした上で、技術革新と国の補助金がある場合と無い場合を仮定して計算し、プロジェクト内部収益率(PIRR) が8%以上となる場合に導入可能と判断しているようです。その結果が先に挙げた値です。
ということは、朝日新聞の記事に出ている2,400~14,000万kWというのは、補助金なし、技術革新もなしを想定した場合でも採算が取れるものだけを計算した数字ということです。そんなに夢物語の数字でもないようですね。
風力には騒音やバードストライクなどの課題がありますが、スパイラルマグナス (www.mecaro.jp)のような新しいタイプのものも開発されているようなので、けっこう期待できるのかもしれません。
ただし、こんな注釈もあります。
風力発電については極めて大きなポテンシャル等が推計された。但し、次頁図のとおり地域偏在性が極めて強く、例えば北海道や東北地方では従来の電力供給能力(北海道742万kW、東北1,655万kW)を上回る導入ポテンシャルが推計された。中短期の導入可能量は地域間連携設備能力の限界などを含めた検討が必要であるが、今回の試算では行っていない。
風力のポテンシャルは北海道や東北に偏っていて、日本全体の電力問題を解決できるかどうかはまた別の話ということですね。また、風力以外のエネルギーに関してはあまり思わしくない数字が出ているようです。
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