2011年2月25日(金曜日)
岡崎市立中央図書館事件で共同声明、ただし被害届はそのまま
公開: 2011年3月9日14時30分頃
岡崎市立中央図書館事件、いわゆるLibrahack事件で大きな動きがあったようです。
- "Librahack"共同声明に関する詳細情報 (www.libra-sc.jp)
- 図書館ホームページ閲覧障害に係る経過等について (www.library.okazaki.aichi.jp)
- 岡崎市立中央図書館と相互確認したこと (librahack.jp)
問題とされたクロールについて、図書館は以下のような見解を発表しています。
1 閲覧障害につながった行為について
事案発覚当時は、当館としては原因の詳細が分かりませんでした。しかし、現在では、ご本人様が行った図書館サイトへのクローリングが、技術的に一定の配慮が施されたもので、その意図も図書館システムの利便性を補おうとするものであったことと理解しています。
以上、図書館ホームページ閲覧障害に係る経過等について より
基本的にはクロール行為への正しい理解がなされ、「クロール行為は犯罪ではない」ということが確認され、円満な解決に至ったものだと思います。この点は非常に高く評価したいです。
ただ、気になるのはこの部分。
被害届を取り下げない理由
被害届の扱いには、きわめて慎重な判断を要します。同時にそれは、提出の必要があれば実施をためらってはならないものです。もし、今回これを取り下げることになると、次に何かあったときに「本当に出していいのか」と、提出をためらうことがあるかもしれません。
もし、被害届の提出をためらった結果、市民生活に多大な悪影響が出るとすれば、これは大変なことです。中川氏は、その危うさを理解し、行政の判断を受け入れました。そもそも中川氏は「取り下げ」という形にこだわっておらず、この声明は実質的な要求に応えるものとなっています。
以上、"Librahack"共同声明に関する詳細情報 より
中川さんは納得されているようですので、これはこれで問題はないと思います。ただ、市側の説明が私には理解できませんでした。
被害届を取り下げてしまうと次回提出がためらわれるというのですが、普通に考えると逆なのではないでしょうか。間違った被害届を取り下げできないということになれば、届出は慎重に行わなければならないはずです。ためらわずに被害届を出すためには、間違っていたら後から取り下げできるという方が良いはずです。市の説明は論理的に筋が通らないように感じます。
あえて整合性のある理由を探すなら、警察・検察との関係性を配慮した、というあたりでしょうか。
今回の事件では、既に警察によって逮捕勾留が行われ、検察によって嫌疑ありの状態のまま起訴猶予処分になっています。共同声明では犯罪性を否定するコメントが出ましたが、警察は「声明には関与していない。被害届が出たので対処したまでだ」とコメントすれば済むでしょう。しかし、被害届を取り下げてしまうと、警察は「関与していない」という態度は取れなくなります。
つまり、このタイミングで被害届を取り下げると、警察・検察との関係性が悪化する可能性があるわけです。そうなれば、次回に被害届を出しにくくなるでしょう。というわけで、「ここで被害届を取り下げると警察・検察との関係が悪化してしまい、今後の被害届を出しにくくなる」という話であれば、理屈としては理解できます。
もちろん、これは想像に過ぎず、実際にそんな背景があったのかどうかは分かりませんが。
いずれにしても、中川さんは元々「世の多くの技術者の方に迷惑をかけたくない」という考えを表明されていましたから、被害届の取り下げよりも、「クロール行為は犯罪ではない」という声明が出ることを重要視されていたのだと思います。できるだけ早く声明を出すことを優先され、その結果としてこのような落としどころになったのでしょう。これはこれでアリだと思いますし、評価したいと思います。
- 「岡崎市立中央図書館事件で共同声明、ただし被害届はそのまま」にコメントを書く
関連する話題: Web / セキュリティ / 法律 / 岡崎市立中央図書館事件 / librahack
- 前(古い): 2011年2月24日(Thursday)のえび日記
- 次(新しい): 2011年2月26日(Saturday)のえび日記