2011年12月4日(日曜日)
ターゲティング広告を利用して属性と個人を結びつける
公開: 2011年12月11日22時55分頃
「サードパーティCookieの歴史と現状 Part3 広告における利用、トラッキング、ターゲティング広告におけるプライバシーリスク (d.hatena.ne.jp)」。サードパーティCookieやターゲティング広告の問題点についてのmalaさんのまとめ。良くまとまっていて参考になります。
特に、「パーソナライズされた広告配信によって広告出稿者がユーザーの個人情報を取得することが可能」という指摘は鋭いと思いました。ターゲティング広告では、対象者の属性を絞って広告を出すわけですから、その広告をクリックしてきた訪問者はその属性を持っている確率が極めて高いと言えます。すなわち、以下のようなことが起きると個人と属性が結びつきます。
- 属性を絞って広告を出稿する
- その広告をクリックしてランディングページにたどり着いたユーザーを追跡する
- そのユーザーが商品を購入するなどして個人情報を入力する
ポイントは、事前に個人を識別しておく必要がないという点でしょう。広告が出た時点では個人を識別できていないのですが、その時点で属性情報を収集しておけば、その後に個人が特定された時点で結びつけられます。
これはもちろん普通に起きることなので、ターゲティング広告を出稿している側は、結びつけ放題です。絞る属性の種類によっては問題ない事もあるでしょうが、機微な嗜好の情報など、結びつけて欲しくないものもあるでしょう。しかも、ある広告がターゲティング広告なのかどうか、どのような属性を指定しているのか、といったことはユーザーには分かりませんから、自衛するのも難しいわけですね。
この点、Googleは自主規制しているそうで、
ただし、人種、宗教、性的嗜好、健康、金融など、機密性の高い情報に基づくインタレスト カテゴリをブラウザや匿名 ID に関連付けたり、インタレスト ベース広告の掲載にそれらの情報を使用したりすることはありません。
このように「やりません」というポリシーを明示することが必要になってくるでしょう。
malaさんは以下のように述べられていますが、
「特定個人を識別できるかどうか」ばかりが問題になり、広告主が訪問者のユーザー属性を収集することが出来るという点があまり問題視されていない。
以上、サードパーティCookieの歴史と現状 Part3 広告における利用、トラッキング、ターゲティング広告におけるプライバシーリスク より
これはその通りだと思います。個人の識別さえされなければ何をしても良い、と言っているようにしか思えない論説はよく見ますね。
もっと言うと、その「個人を識別」という部分の理解も怪しくて、「住所や実氏名が分からなければ個人を識別したことにならないから問題ない」といったような主張をする人も多いように思います。実際には、個人情報保護法でも以下のような定義になっているのですが。
この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
以上、個人情報の保護に関する法律 より
括弧内に注目。「Cookieでは個人の識別はできない」などと平然と書いている事業者をたまに見ますが、実際にはそれで識別できる場合があるから問題なわけで、そのあたりきちんと理解してもらいたいと思います。
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