みんなのウェブというサイトを教えてもらいました。
トップページには「みんなのウェブはこんな所です」という文章があって、こう書かれています。
WWWは、高齢者や障害を持つ人たちにとっても大切な情報源になっています。私たちは、年齢や障害の有無に関わらず、誰にでも使いやすく、伝えたい情報がきちんと伝わるウェブを作る実験を進めています。
この実験は、ウェブページを作ったり、利用している人なら、誰でも参加することができます。誰にでも使いやすいウェブを実現するために、ぜひあなたも実験にご参加ください。
要はアクセシブルなサイトを作るためのサイトなのですが、このサイト自体が異様に使いにくいと感じてしまった私って……。
タイトルは「サンプルサイト」ですが、実際にはこのリソースはサンプルサイトの各ページに対する解説になっています。ほとんどの人は、この解説を読みながら「サンプル」を見たいと思うはずです。私もそう思いました。
ところがサンプルページを見る際にはいちいち前のページに戻らなくてはなりません。リンクがないのです。どうしてなのでしょう。理解に苦しみます。
そうして見ると、いろいろなところが気になるもので……。
点検項目一覧をダウンロード(Windows版)
が怖くてダウンロードできませんでした。たとえば「自己解凍・エクセルデータ」などと書かれていれば良いのですが、そういう情報なしに拡張子 exe のファイルを置かれても困ります。ウィルスにドキドキしながら実行しても読めるかどうか分からないわけですから。
これら二つのリソースにはどちらにも大きな画像があり、同じ「実証実験プランのイラスト」という alt がついています。この alt は適切なのでしょうか。
いずれも、かなりの情報が盛り込まれた図のように見えます。しかし、alt属性からはその情報は得られませんし、longdesc属性も「Dリンク」もありません。
クライアント側イメージマップが存在していますが、それに気づく人は少ないでしょう。map 属性に指定されたリンク先が存在せず、動作していないからです。
アクセシビリティ AAA のサイトには、こういった「間違い」がないことも要求されるのではないでしょうか。
サイトマップというリソースがあります。名前から内容はわかる……と言いたいところですが、待ってください。たとえばこのサイトをブックマークに登録したとして、これが何のサイトマップか、後になってもわかるでしょうか。
たとえば「みんなのウェブ・サイトマップ」とした方が良いでしょう。
このサイト、全般的にレイアウトに table を使っています。それだけならまだしも、width="545" などとして横幅を固定しています。画面幅 545px を確保できない環境ではアクセスしづらい可能性が高いでしょう。
コントロールにラベルがついていません。特にチェックボックスにラベルがあると格段に操作性が向上します(ブラウザにもよりますが)。
で、きわめつけがこれ。
<br> <span class="boldred">登録に当たってのお願い</span><br>
駄目。失格。最悪。strong や em でマーク付けしたほうが……という前に、これ見出しなのでは?
「見栄えにはスタイルシートを使うべし」と言われているのは理解しているようですが、その理由までは理解できていないのではないででょうか。
その証拠にこのサイト、全体として文字がレイアウト用の(!)テーブルのセルの中に文章がだらだら入っているだけで、段落も見出しも全くありません。検索エンジンは見出しを拾えませんし、ユーザスタイルシートで p のマージンを変えようとしても無駄です。
WCAG1.0 を参考にしているだけあって、内容的には目新しくも無い代わりに変なところもありません。ただ何点か気になったところとしては……
特に、HTMLで文字の大きさを固定サイズで指定すると、文字拡大がしにくくなり、問題になります
…… とありますが、HTML ではそんなことは出来ないはずです。
CSS を使えば出来ますし、すべきでない、というのには異存ありませんが……。わざわざ「HTMLで」と限定したのには何か意味があるのでしょうか。
「色覚特性」という語のほうが望ましい、とする人もいますが、それはともかく。
基本的に間違ってはいないと思いますが、ウェブページ上でこれらの色の組み合わせが用いられていると
……問題が発生します。
と断言するのは早計ではないかと思います。緑と赤の組み合わせでも、暗い緑と明るい赤であるとか、その逆であるとか、コントラストがはっきりしていれば割となんとかなるようです。
例えば、画面と一緒にBGMや効果音が流れていても気がつかないといった問題です。
……もろちん「情報を音声だけで伝えるのは避ける」、というのは重要でしょう。しかし重要な情報でないなら気づかなくても問題ないはずです。そしておそらく、BGM は重要ではないでしょう。
むしろ、BGM が流れることによって、読み上げその他が訊きにくくなる可能性に配慮したほうが良いのではないでしょうか。
言っていることはべつに間違ってはいないのですが、分析や実践がいまひとつ出来ていない感じがします。「総務省情報通信政策局情報通信利用促進課」という長い名前が出ていますが、インパク以来の「お役所が絡むとどうも……」という印象は、なかなか拭い去れないようです。
もちろん、サイトをアクセシブルなものにしようという試み自体は評価できるので、自ら実践してがんばっていって欲しいと思います。