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複数デザイン案と捨て案

2012年11月8日(木曜日)

複数デザイン案と捨て案

公開: 2013年3月11日10時45分頃

「「IPA Web サイトコンテンツ移行・デザイン改訂業務」に係る事前確認公募 公募要領」という文書があるようで、PDFが以下に置かれています。

9ページ以降が要求仕様となっているのですが、いろいろ気になるところがありますね。

細かいところでいうと、2.1(1)の⑦のあたりとか。

⑦ JIS X 8341-3:2010 の等級A 以上に則ること。

以上、「IPA Web サイトコンテンツ移行・デザイン改訂業務」に係る事前確認公募 公募要領 より

「等級A 以上に則る」というのは何を意味するのでしょうか。「等級A以上」と言われても、A未満は存在しませんし……。おそらく、等級Aの達成基準全てを満たすということだろうとは思うのですが、もうすこし正確に表記したいところです。

2.1(1)の⑧もなんというか。

⑧ HTML4.0 Transitional 以上又はXHTML1.0 Transitional 以上の規格に準拠すること。

以上、「IPA Web サイトコンテンツ移行・デザイン改訂業務」に係る事前確認公募 公募要領 より

「以上」とは何なのでしょうね。HTML5は可なのか不可なのか、よく分からない記述です。

まあ、これらは別に重要ではなく、実際に受注したときにしっかり決めれば良いとは思うのですが、私が一番気になったのはこれ。

③ 新 Web サイトトップページのデザイン案を3 種類作成し、その3 案の中からIPA が選定する1案について、IPA の指示に従い必要な修正を行う。

以上、「IPA Web サイトコンテンツ移行・デザイン改訂業務」に係る事前確認公募 公募要領 より

3案とありますが、なぜ2案や4案ではなく3案なのでしょうか。3という数字に根拠はあるのでしょうか。

また、その中からIPAが1案を選定するということですが、いったいどうやって選定するのでしょうか。

これがコンペで、3者に提案させて1者に絞るというなら分かります。3者はそれぞれ異なる視点、異なるコンセプトで提案するでしょうから、最もマッチすると思った提案を選べば良いのです。

しかし、1者に3案を作成させてもあまり意味がありません。受ける方は3案を等しく作るのではなく、ほとんどの時間を1案に費やし、平行して「捨て案」を2つ作るという対応をします。

これは別に手抜きではなく、以下のような事情があります。

さらにもう一つ、先にも書いたように、発注側がどうやって選ぶのかという問題があります。デザインは課題を解決するために行うもので、本来、個人の好みとは関係がないものです。3つを眺めて気に入ったものを選ぶ、という方法は適切ではありませんし、そう簡単には結論が出せません。

問題を解決する方法のひとつは、プロであるデザイナーがあらかじめ選んでおくということです。デザイン作業の時点で本命を1案に絞り、残りを明確に劣ったもの (コンセプトとずれたもの) にすれば、発注者が自然にひとつを「選ぶ」ことができるわけです。つまり、捨て案には「発注者が迷わず本命案を選べるようにする」、もっと言ってしまえば「発注者が自ら選んだと錯覚させる」という効果があります。

また、もう少し積極的な意味として、本命のコンセプトが明確になるという側面もあります。捨て案の駄目な部分を確認し、それがなぜ駄目なのかを理解すれば、本命案の意図やコンセプトも理解しやすくなるでしょう。

とはいえ、捨て案はもとより捨てられる前提のものであり、作らなくても良いものです。捨て案とはいえデザインとして成立させなければならないわけで、その作成にはかなり時間がかかります。その時間を1案のブラッシュアップに費やした方が、最終的なクオリティは高くなる場合が多いでしょう。

RFPを作る際は、複数案を出させることが本当に必要なのかどうか、よく考えてから決めた方が良いと思います。

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