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ほんとにあった怖い話は本当に怖い話かもしれない

2011年9月3日(土曜日)

ほんとにあった怖い話は本当に怖い話かもしれない

公開: 2011年9月5日0時35分頃

なんとなくテレビを見たら、「ほんとにあった怖い話」という番組が放送されていました。実際の体験談というふれこみなのでしょうか、再現VTRの所々に体験者 (VTRの主人公) 本人によるナレーションが入るという体裁です。私が見たのは「怒りのルビー」と題された短編で、ざっくり言うとこんな感じのストーリーでした。

怪談なので、指輪の前の持ち主の霊 (?) だとかそういう話だったのだろうと思います。しかし、私はこのVTRを見ていて、恐怖感とは異なる奇妙な感覚に襲われていました。どうも、以前に似たようなものを見たような気がしてならなかったのです。漠然とした既視感を覚えつつ、何となくもやもやしながら見ていたのですが、途中でその感覚の正体に気がつきました。

主人公の指輪が急にきつくなり、締め付けられるシーン。それを見て、私は反射的にこう思ったのです。「これは指にむくみが出ているのではないか?」と。

そこで既視感の正体がはっきりしました。私は、NHKの「総合診療医 ドクターG (www.nhk.or.jp)」を連想していたのです。

この番組では、不思議な症状を抱えた患者について、研修医たちがディスカッションをしながら、何の病気なのかを推理して行きます。その推理に先立ってVTRが流され、患者が体験した症状や、病気に関係がありそうなもの、なさそうなものを含めた様々な出来事が、本人のナレーションを通して語られます。

そのVTRの体裁が、「ほんとにあった怖い話」のVTRとよく似ていたのですね。

本人が再現VTRを通して過去の体験を語る、という体裁は共通していますから、似ているのも頷けます。ただ、興味深いのは「病気のヒント」の部分までが似ていることです。「総合診療医 ドクターG」のVTRの中では、患者の何気ない動作や体験の中に、病気のヒントが隠されていることがあります。たとえばこんな感じです。

このような視点で、「怒りのルビー」の話を改めて振り返ってみると……。

……という具合に、恐怖を煽る要素だったはずの奇妙な出来事が、ことごとく病気のヒントに見えてきます。総合診療医が実際にこのVTRを観たら、診断を確定するところまでは行かないにしても、ある程度のところまで病名を絞れてしまったりするのではないでしょうか。

※「総合診療医ドクターG」でも、VTRだけでは病名を絞りきれないことが多いです。最後に検査をして病名を確定するというのがいつものパターンです。

もっと言うと、この方が体験したのは心霊現象などではなく、何かの病気の症状だった可能性があるのではないか、とも思えてきます。

そう考えると、これは別の意味で怖い話になります。奇妙な体験をオカルトに結びつけて理解してしまうことで、深刻な病気が見過ごされてしまう、ということが起こり得るからです。最近、ホメオパシーによる医療ネグレクトが問題になっていますが、これも同じような話になりかねません。

以前、いわゆる心霊写真をプロの写真家が鑑定するという番組があったそうです。同じように、心霊体験を総合診療医が鑑定する番組があっても良いのかもしれないですね。

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