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楽天Webディレクション&デザイン2009: 月間50億PV、社内ユーザー1000人のアクセス解析で分かったこと

2009年11月28日(土曜日)

楽天Webディレクション&デザイン2009: 月間50億PV、社内ユーザー1000人のアクセス解析で分かったこと

公開: 2009年12月10日1時40分頃

RIAの話に引き続き、「月間50億PV、社内ユーザー1000人のアクセス解析で分かったこと」。

ちなみに、タイトルの「社内ユーザー1000人」というのは、アクセス解析の結果を利用するサイト運営者が1000人いるという意味です。

何故アクセス解析?
  • 思いつきでの改善には限界がある、逆効果のこともある。KPI(重要業績達成指標)として使いたい
  • SiteCatalystを導入。今年になってグループ全社導入を実施。サイト単位の解析ではなく、グループ全体での解析を進めている。「楽天経済圏」での測定
アクセス解析の導入
  • ギャップ分析 : 事実がゴールとどうかけ離れているか
  • 分析方法や深度が事業や人によりバラバラ : ツールも色々あった。GA、合併前から使われていた社内ツール、Analog等々。UserInsightは現在でも併用している。
  • 標準化と知識共有に課題 : 成果を挙げた人への評価もできていない。
  • 専任チームを結成 : 編成部 アクセス解析・最適化推進チーム 2009年頭に結成。Omnitureから2名常駐、ほか数名サポート
  • グループ47社のうち、導入済みだったのは13社のみ。今年9月までかけて全社に導入。
  • SiteCatalystをカスタマイズ導入。後半は「Test&Target」も
  • 測定コール数 +27% (月間50億)、社内ユーザー数 1.5倍 (約1,400) に
アクセス解析の手法
  • 流入分析 / SEO効果の測定
  • SEOのゴールを設定 : 訪問・3000、売上げ5%アップなど
  • フォーム分析 : SiteCatalystのプラグインで実現。どこでエラーが起きたのか、どの入力項目にフォーカスした状態で離脱したのかを測定。
  • Excelによる定型レポート : 特集のURLを入れるとPV、流入もと、商品ごとのCTRなどが表示される。運用を楽にしないと普及は難しい。
Flashの計測
  • Flashバナーのマウスオーバーやクリックを計測。HTMLのページよりも細かい単位で計測が可能となる。
動画の計測
  • 例: オードリーの販促ビデオ
  • 時間べつの再生時間 (何分まで見てくれたのか) を測定。内容が悪いのか、2分では長すぎるのか、などを判断。
  • グループ内でのCV数・売上げが分かるため、動画クリック→オードリーのブログへ→商品リンクをクリック→購入、というルートも追跡可能。
  • 動画は離脱率が低い。8割もの人が、続けて別の動画を見る。
オフライン成約データとの連携
  • サイト→資料請求・電話→成約というルートも測定
  • 通常は資料請求の回数しか取得できない。Salesforceと連携してIDを結びつけることで成約率を取得。
グループ全体の計測
  • 通常はサイトごとに計測するので、楽天市場→楽天トラベルの遷移は楽天市場から見ると「離脱」になる。これを「送客」として測定 (グループ全体を一つのサイトとみなして測定する)。
  • 楽天ブログ→市場の送客や時間をまたいだ購入なども測定。
  • どのサービスがどのくらいグループ外からの流入に依存しているのか、グループ内外比率を測定できる。
  • インフォシークなどは外からの集客を担う位置づけなので、外部比率が多い方が良い。他のサービスは、グループ内部からの流入を増やしたい。
  • サービスの種類の組みあわせ (どのサービスからの流入なのか) によってCTRが変わる。
ABテスト
  • 一部分だけを出し分けることもできる。AB50%ずつ、だけでなくパターンを増やしたり比率を変えたりする。
  • Refererによって出し分ける、初回訪問時は出し分ける、なども可能
  • 10%の危険率で検定して3%の効果、などという感じで数値を出す
やっていくこと
  • 定点観測による早期警戒 : 定点観測によって異常な変化を検出し、警告を出す。たとえば、Google経由での「オーガニック」へのランディング数が急変→Googleのアルゴリズムが変わっていたことが判明
  • データ計測 : データ量が限界に近付く (グループ全体で毎月50億PV)。BIなどの併用も検討
  • 解析の底上げ : PV・UUなど旧来の考え方から脱却、手法のパターン化、共有
  • ガバナンス : 経営判断に使えるようにフロー化

楽天グループはアクセス解析をガンガンやっていると思っていましたが、昔からやっていたのは市場やトラベルといった主要サイトだけで、グループ全体に行き渡ったのは今年に入ってからなのですね。

グループ全体で運営手法を統一していく、というのは巨大グループ企業に共通した課題だと思いますが、楽天の場合はサービス買収でグループを大きくしてきた経緯もあるので、運営側のツールを統一するだけでもかなり大変なようです。

つづきます : 日本最大級の総合旅行サイト「楽天トラベル」の改善プロセス

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