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自己責任論とか

2004年4月28日(水曜日)

自己責任論とか

「自己責任」問う声に反論 イラクで拘束の2人が会見 (www.asahi.com)。記事の見出しは微妙ですが……。

渡辺さんは、先に拘束された高遠菜穂子さんら3人の家族が、武装勢力が解放の条件とした「自衛隊の撤退」を政府に求めたことがバッシングにつながったと指摘。「家族が助かることを望むのは正当な権利。それを政府に反対する政策を主張していると受け取り、ゲリラの代弁者のように扱った」と批判した。

以上、asahi.comの「自己責任」問う声に反論 イラクで拘束の2人が会見 より

これは非常に冷静な分析だと思います。そもそも、この時点で家族に冷静さを期待するのは無理な話だと思いますし。

逆に開口一番「撤退はない」と言った人がいたからこそ「そりゃないだろ」という発言が引き出されたのではないか、という気もしています。端から見ればなんてことないのでしょうが、家族にしてみれば「人質は見殺しにする」と言っているも同然に思えたのではないかと……。

安田さんは、実家を取材に訪れた記者に家族が「息子をイラクに送った親の責任をどう考えるのか」と質問されたのを例に挙げ、「自己責任という言葉がどこまで考えて使われているか注意しないといけない」と話した。

以上、asahi.comの「自己責任」問う声に反論 イラクで拘束の2人が会見 より

「自己責任」という言葉の意味という話で、自己責任論というのは実は無責任論だ……という話を思い出しました。いや、あんまりちゃんと思い出していないですけれど。

※確か PL法かなにかについて論じた論文だったような気がしますが、7~8年以上前の話でかなりうろ覚え。

たとえば、「この製品は自己責任で使用して下さい」という注意書きがあったとします。使った人が責任を取る、と言えば聞こえが良いのですが、これは実は「事故が起きても製造者は責任を取りません」ということに他なりません。「自分のしたことには自分で責任を持つ」というのは、裏を返せば「他人のしたことには責任を持たない」ということでもあり、後者の方こそが本質です。何か事故が起きたときに誰も責任を取らないので、誰も責任を取らなかった結果として被害者自身が全ての責任を負うより他なくなるのです。これを自己責任、もしくは泣き寝入りと言います。自己責任を求めるというのは、被害者に泣き寝入りを求めるということとイコールです。

……というような話だったような気がしていますが、とにかくうろ覚え。

フリーソフトウェアが無責任なのは別に良いと思います。使う方もお金を払っていない訳ですから。

しかし国民は政府に税金を払っていますので、政府が簡単に自己責任などという言葉を発すると、「じゃあ税金払わなくて良いですか?」と思ってしまうわけです。国民の生命や身体の安全を守るのは政府の責務であり、私たちはその責務を果たしてもらうために税金を払っていたのではないのでしょうか? こういうときに政府が国民の生命・身体の安全に対して責任を持たないのだとすると、何のために納税の義務を果たしていたのか分からなくなってしまいます。

……ちなみに、余談かつ不謹慎な話ですが書いてしまうと、実は個人的には以下のようなシナリオになったら面白いなと思っていました。

面白いというのは文字通りの意味で、完全に野次馬的な話です。私の興味は以下のような点にあります。

まあ、負担を求めるとか言う話はいつの間にか立ち消えになったような感じなので、このような興味が満たされることはないでしょう。それはそれで幸いなことです。

※2004-05-12追記 : 支援運動は既に起きていたようです。「人質支援運動について補足」を参照。

目隠しされ、武装勢力に連行された民家では、子どもがお茶を運んできた。「生活の場で処刑されることはないだろう」と安心した。食事も山盛りのご飯や新鮮な野菜などが与えられたという。

安田さんは「(駐留米軍に)抵抗しているのは一部のテロリストやフセイン前政権の残党と言われるが、私たちが接した範囲では、地域住民が自分たちの社会や生活を守るために戦っている印象を受けた。レジスタンス(抵抗運動)と言ってもいいのではないか」と振り返った。

以上、asahi.comの「自己責任」問う声に反論 イラクで拘束の2人が会見 より

これは興味深いお話です。確かに、ビデオ映像が流れた当初から、犯人グループのそこかしこが素人っぽいという指摘はされていました。プロのテロリストではない、ということなのでしょうね。日本では自動小銃やロケットランチャーを入手するのは極めて困難ですが、イラクではそうでもないようですし……。

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