水無月ばけらのえび日記

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2011年5月10日(火曜日)

有限責任と巨大事故リスク

公開: 2011年5月14日18時40分頃

こんな記事が……「お金は正直、反原発運動家は嘘つき (news.livedoor.com)」。

本当に反原発運動家がいうほど浜岡原発が危険ならば、事故の確率が減るのだから株価が上がってもいいようなものです。東京電力の株価は5分の1になり、福島原発の賠償問題は未だに先が見えないのに。そういった東京電力の窮状を見れば、中部電力が抱える唯一の原発サイトが全面停止されるのだから、株主にとってそれほど悪い話ではないじゃないですか。

これにはハッとさせられました。

株式会社では、株主は出資額以上のリスクを負うことはないというルールがあります。最悪の場合には出資したお金が全く戻らなくなりますが、それ以上の賠償や補償の責任を取らされることはありません。責任の範囲が限られているという意味で、これを「有限責任」と言います。

※会社によっては社名の英語表記に "Co., Ltd." とつくことがありますが、これは "Company, Limited" の略で、有限責任の会社という意味です。

会社の資産では賄いきれないような事故が起きても、株主は有限責任です。事故の規模が一定以上になれば、どんなにひどい事故であってもリスクは同じです。株主が利潤を最大化しようとするなら、「希に起きる巨大事故を回避するためにコストをかける」という施策にはメリットがありません。中部電力の株主が原発の停止に反対するのは、合理的な行動です。

別の見方をすると、有限責任のルール自体が巨大事故リスクの軽視につながる、とも言えます。このことがあまり問題視されていなかったのは、そもそも、民間の会社がそこまで巨大な事故を起こすということが考えられなかったからでしょう。

あるいは、原子力のような事業を民間で行うこと自体を制限して行く必要があるのかもしれません。本来それは原子力安全・保安院の「指導」で達成されるべきものなのかもしれませんが……。

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原発停止のリスク

公開: 2011年5月14日17時5分頃

電力不足、全国的な問題に 浜岡原発停止で融通厳しく (www.asahi.com)」。

定期検査に入った原発は東日本大震災後、まだ全国で1基も運転を再開していない。福井県内に11基の原発を持つ関電は、3基が定期検査で停止中。さらに3基が定検に入る。幹部は「再稼働できないと関電も厳しい」と打ち明ける。

これはまずいですね。電力が不足するとまずいのは当然ですが、「原発が停止すると電力が不足する」という状態そのものに問題があると思います。ある程度の地震が来ると原発は停止するようになっていますし、一度停止すると、すぐには運転再開できません。

たとえば、2009年8月11日の静岡沖地震では、御前崎市で震度6弱の揺れがあり、浜岡原発は全機停止しています。その後の流れは以下のとおりです。

4号機は比較的早く復旧しましたが、それでも調整運転まで1ヶ月、営業運転まで2ヶ月かかっています。5号機のほうは1年以上止まっていたことになります (2006年に壊れたタービンの交換もしていたようで、地震の影響だけではないようですが)。

地震で原発が停止し、それがしばらく続くという状況は過去に何度も起きています。これは予想外でもなんでもありませんから、個々の電力会社では、管内の原発が全て止まっても問題ないようにしてあるはずです。しかし今回は、震災による「融通」の分が厳しいということなのでしょう。節電を頑張って行くしかないでしょうね。

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