水無月ばけらのえび日記

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2003年10月29日(水曜日)

JIS素案の公開レビュー

JIS素案「高齢者・障害者等配慮設計指針 - 情報通信における機器・ソフトウェア・サービス - 第三部:ウェブコンテンツ」の公開レビュー (www.jsa.or.jp)」を軽く見てみてましたが、なんかどこかで見たような内容。まあ、WCAG1.0508条 を踏まえて作ると、必然的に似たようなものになるのでしょうけれど。

ところで「解説書2 WCAG 1.0との比較」のテキスト版が使い物にならない (「比較表の使い方」が書かれているだけで、肝心の表が入っていない!) のですが、かといって Excel も Word もインストールされていないマシンではどうしようもなく、残念な思いをいたしました。PDF 版は見られるのですが、これも表がかなり厳しいし……。

ちなみに WCAG 1.0 にないとされているのは以下の項目。

……あるんですけど、というのが何点かありますが解釈の違いなのかなぁ。リンク先は考慮されていないとか。

※入力時間制限の話は確かに WCAG 1.0 にない項目です。508条との対応表を作ったとき、これだけは対応する記述がどこにもなかったので印象に残っています。

関連する話題: Web / アクセシビリティ

「逆転」事件

ofiice さんのところ (www.office.ac)で話題になっていたのですが、判例の原文にリンクされていないようなので何となくメモ。

もっとも、ある者の前科等にかかわる事実は、他面、それが刑事事件ないし刑事裁判という社会一般の関心あるいは批判の対象となるべき事項にかかわるものであるから、事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者についても、その実名を明らかにすることが許されないとはいえない。また、その者の社会的活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判あるいは評価の一資料として、右の前科等にかかわる事実が公表されることを受忍しなければならない場合もあるといわなければならない(最高裁昭和五五年(あ)第二七三号同五六年四月一六日第一小法廷判決・刑集三五巻三号八四頁参照)。

以上、判例 H06.02.08 第三小法廷・判決 平成1(オ)1649 慰藉料(第48巻2号149頁) より

要するに、前科等にかかわる事実については、これを公表されない利益が法的保護に値する場合があると同時に、その公表が許されるべき場合もあるのであって、ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので、その結果、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができるものといわなければならない。

以上、判例 H06.02.08 第三小法廷・判決 平成1(オ)1649 慰藉料(第48巻2号149頁) より

というわけで、office さんも言われているとおり、無条件で「公開 NG」と言っているわけではない点に留意する必要がありますね。

関連する話題: メモ / 法律

チルトホイールその後

慣れてくるとサイドボタンは普通に押せるようになりました。かえって使いやすいかも知れません。

肝心のチルトホイールは、思ったより使いませんね。あんまり意味ないかも……。

あと、結構厳しいのがホイールの動きで、これがカチカチ感が全くないアナログな感じなのです。最初は特に気にならなかったのですが、なんだか妙に手が疲れる感じがします。

いろいろ微妙なり。

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パクリ系

plagiarized site (shinzlogclips.blogspot.com)」。Web サイトのデザインを丸ごと plagiarize (剽窃(ひょうせつ)、盗用) されたという話。

見てみると、確かにそっくりですね。ヘッダ部からして似ているわけですが、見出しのスタイルなんか見ると色違いなだけだったり。

たとえば六本木ヒルズと「あるサイト」の「サイト更新情報」の見出しを並べてみると、色が水色と黄色、英語部分が小文字と大文字という違いだけでほぼ同じです。

実際にデザインしているところを見たわけではありませんが、いろいろなことを考えて、検討して、試して、たいへんな苦労して完成させたデザインなのでしょう。それがあっさり使い回されて「ただ乗り」されたのでは……。

しかし、木達さんも書かれています (kidachi.kazuhi.to)が、これを法的にどうにかするのは難しいのですよね。まず、不正競争防止法を適用してどうにかなる要素はないでしょう。Web サイト自体が六本木ヒルズと混同させるようなものではないですし。見出しのスタイルなどを意匠登録したりはしていないでしょうし、そもそも意匠として登録するような性質のものでもありませんから、意匠法も論外。

可能性があるとすれば著作権法なのですが、実は紙面レイアウトの剽窃については既に争われたことがあって、「知恵蔵事件」というのがあります。これは厳密に言うと「デザイナーとの契約が切れちゃった後に同じデザインで出し続けた」という話ですが、ともあれデザイナーが発行元である朝日新聞社を訴えて裁判になりました。長いですがそのまま引用しておきます。

著作権法にいう著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるが、控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状などが配置される本件レイアウト・フォーマット用紙及び控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、編集著作物である知恵蔵の編集過程における紙面の割付け方針を示すものであって、それが知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。

以上、H11.10.28 東京高裁 平成10(ネ)2983 著作権 民事訴訟事件 より

というわけで、レイアウト・フォーマットそのものに単独で「著作物性」を認めることはできないという判断です。ただし続きがあって、

控訴人の主位的請求原因が、一九九四年版と一九九五年版の知恵蔵に使用されたレイアウト・フォーマット用紙は控訴人が制作を担当した本件レイアウト・フォーマット用紙の複製であることを前提とするものである以上、控訴人の主張も、本件レイアウト・フォーマット用紙が、そのまま知恵蔵以外の他の書籍、特に被控訴人以外の出版社刊行の書籍に使用されるものであることを前提にしているものでないことは明らかである。

以上、H11.10.28 東京高裁 平成10(ネ)2983 著作権 民事訴訟事件 より

と言っています。このケースでは全く関係ないサイトに流用されてしまったわけですから、ちょっと事情が異なるとも言えます。判決は、言い換えれば「編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情」があれば著作物たり得ると言っているわけですから、そこに可能性が残されてはいます。

ただまあ、全体として「難しい」気はしますね……。

関連する話題: Web / 法律

各党のマニフェスト

更新: 2003年10月29日

土曜日か日曜日か微妙なあたりに「どの党のマニフェストも今ネットで読めるんじゃないの?」と発言した手前もあり、各党のサイトでマニフェストをチェック。

リストに肝心の (?) 自民党がありませんが、その理由は別に書きます。

※追記: 自民党のそれは「:::::小泉改革宣言::::: (www.jimin.jp)」に出ているようです。ろばQさん情報ありがとうございます。

関連する話題: 政治

自民党の Web サイト

自民党のサイトでマニフェストを探したのですが、これがあまりにも厳しかったのでちょっと書いておきます。

まずサイトの URL なのですが、Google で検索すると www.jimin.or.jp と www.jimin.jp の両方が出てきます。www.jimin.or.jp にアクセスすると 302 が返って www.jimin.jp にリダイレクトされます。

おそらくドメインを変えて、今後は www.jimin.jp でやっていこうという事なのでしょうが……ここで 301 ではなくて 302 を返しているところが実に素人RFC2616 を見れば一目瞭然ですが、302 は一時的な移動を示すステータスですので、URL が変わったとみなされず、古い URL も依然として有効だと判断されます。Google にいつまでも古い URL が残ってしまっているのはそのためです。302 を 301 にすると、これは永久に URL が変わったという意味になりますので、Google もそのように判断します。検索結果に両方が出てしまってユーザを迷わせるようなこともなくなるでしょう。

さて肝心のサイトの内容ですが、これがまた厳しい。

まず、そもそもサーバの応答が異様に遅いです。アクセスが集中しているのかも知れませんが、301 と 302 の区別がついていない人が管理しているようですので、別に原因があるのではないかという気もします。

待つと応答はあってサイトが表示されるのですが、これがまたいきなりフレーム。いちおう noframesはありますが、中身はこれです。

このページは、フレーム形式で制作されています。

フレーム対応のブラウザでご覧ください。

This web page uses frames,

but your browser doesn't support them.

the Liberal Democratic Party of Japan

……英語が併記してあるのはちょっと珍しいと思いましたが、そういう問題ではなく……。

※ちなみに他の政党はみんなフレームなど使っておらず、いくつかの党は WCAG やらなにやらに言及していたりします。

それで、サイトのデザインにまたびっくり。まあ私のような素人がコメントしても仕方ないので、実物を見てください。とりあえずの感想としては、左フレームの一番上のタイトルを「中核派」とかに変えても全く違和感がないと思いました。それでもって右側フレームの内容がまたまた何とも。黒い背景にアニメーションするバナーだけぺたぺた貼ってあって……はっきり言います。私は反射的にこう思いました。アダルトサイトですか?

ただ、上に妙に広い空白があるので、ひょっとするとスクリプトや Flash に依存した何かがあるつもりなのかも知れません。それが表示されている環境では普通なのかも。

※追記: Flash で静止画が貼ってあるそうです。kazu さん情報ありがとうございます。

でまあ、めげずにマニフェストを探すのですが、正直これがまた良く分かりませんでした。政策らしきものと言えば、「政策・活動 (www.jimin.jp)」というページ (このページタイトルも凄い……) に PDF があるのを発見しましたが、それ以外には発見できず。HTML 版とかないのでしょうか?

※追記: ろばQさんからご指摘頂きました。「:::::小泉改革宣言::::: (www.jimin.jp)」に出ているようです。「マニフェスト」「政策」という言葉を探していたので盲点でした。ろばQさんありがとうございます。

もう何というか、「自民党は神」という結論で OK ですか?

関連する話題: 政治 / 自民党 / Web / アクセシビリティ / SEO / Flash / フレーム

公明党は WCA を元にしている

ついでに、マニフェスト探し中に思わず吹き出してしまった事。

(フォーム・スクリプト・フレーム・テーブルなどアクセシビリティに基づいたHTMLページを構成、キーボードのみで操作可能です)公明党では、上記に基づいたウェブサイトを実現するために上記内容とW3CのWCA(Web contents accessibility)を元にしたチェックシートを用い、ウェブページの作成にあたります。

以上、公明党 ウェブアクセシビリティの考え方 より

W3C の "WCA" と来ましたか。これはきっと WCAG のことなのでしょうけれど、typo だとしても括弧書きの中がちゃんと (?) WCA になっているのですよね……。

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