はてなブックマークボタン設置サイトがトラッキングをしていた問題
2012年3月12日(月曜日)
はてなブックマークボタン設置サイトがトラッキングをしていた問題
公開: 2012年3月15日2時15分頃
2011年9月からとのことですが、正直申しまして、全く気づいておりませんでした……。
- はてなブックマークボタンは2011年9月1日より行動情報の取得をしている (d.hatena.ne.jp)
- ブログパーツやソーシャルボタンの類でアクセスログが残るのは当然だけどトラッキングされるのは当たり前にはなっていない - 最速転職研究会 (d.hatena.ne.jp)
- はてなブックマークボタンのトラッキング問題で高木浩光先生が決別ツイートをするに至った経緯まとめ (matome.naver.jp)
- はてなブックマークボタンを外しました (blog.tokumaru.org)
- はてブボタンを表示するスクリプトがスパイウェア的な挙動をしていたことが話題に (it.slashdot.jp)
- はてなブックマークを経由したトラッキングに関するお詫び (www.nantoka.com)
これは非常にまずいです。
2011年9月から、「はてなブックマークボタン」のJavaScriptに、MicroAd社の広告に利用するための行動トラッキングのコードが追加されました。これにより、はてなブックマークボタンを設置していたサイトでは、トラッキングが行われるようになりました。
これは、「はてなのサイトがトラッキングを始めた」という話ではありません。はてなのサイトではなく、はてなブックマークボタンを設置していたサイトでトラッキングが行われるようになったのです。
2011年9月以前にはてなブックマークボタンを設置したケースでは、広告のための行動トラッキングが行われるとは想定していなかったはずです。トラッキングはサイト側の意図に反するもののはずで、要するに、意図に反する動作のスクリプトが埋め込まれたのと同じ状態です。はてなのやったことは、他社のサイトに悪意あるスクリプトを埋め込んだに等しいと言ってしまっても過言ではないと思います。
特に困るのは、しっかりとプライバシーポリシーを掲げているサイトです。特に企業サイトの場合、Cookieの利用目的をはっきり限定しているケースが多く、たいていは広告目的のトラッキングはしないことになっています。
はてなブックマークボタンの説明によると以下のようにあり、明らかにCookieを使っています。
この行動情報は株式会社マイクロアドのプラットフォームを利用し、Cookie を用いて取得されます。
企業サイトでも、はてなブックマークボタンを利用している場合はあるでしょう。特に、ブログなどでは利用しているケースがそれなりにあるはずです。ブログのプライバシーポリシーも企業サイト本体に準じる扱いになっていることが多く、そうなるとやはり広告目的のトラッキングはできません。
このようなサイトでは、2011年9月から、サイトポリシーに違反する行為を行っていたことになります。即刻ボタンを外すのはもちろんですが、それだけではなく、お詫びと経緯説明のプレスリリースを出すかどうか検討しなければならないレベルです。
そして実にひどいと思うのが、除外サイトがあったという話。問題のJavaScriptには、大手ニュースサイトを中心にいくつかのドメインが書かれていて、それらのドメインではトラッキングが機能しないように設定していたというのです。
つまり、特定の企業には事前にきちんとトラッキングの話をしているわけですね。そこで「うちのサイトではトラッキングされると困るし、ボタンの差し替え作業もしたくないので、はてな側でトラッキングしないように設定してくれ」というような要望が出て、それを飲んだのでしょう。「トラッキングされると困る」という人がいるということは、最初から十分に分かっていたはずです。
ここで、2つの疑問が出てきます。
- なぜ今まで設置されていたものをトラッキングありに変更したのか? 設置済みのものはトラッキングなしのままとし、今後設置するものについてはトラッキングありとなしを選択できる、という形にする必要があったのではないか。
- なぜもっと大々的な告知をしなかったのか? 今で設置されていたものをトラッキングありに変更するなら、「必要に応じてトラッキングなし版に変更するように、それをしなければサイト側でポリシーの変更が必要になる可能性がある」といった点まで含めた大々的な告知が必要だったはずで、しかもそのことは最初から分かっていたのではないか。
はてなはこの疑問に答えられるのでしょうか。
この疑問に対しては、シンプルな回答がすぐに思いつきます。それは、「そんなことをしたら誰もトラッキングあり版を使わないから」というものです。
はてなブックマークボタン設置サイトの立場で考えると、トラッキングあり版を採用するメリットは何一つありません。告知した場合、大半の人がトラッキングなし版に切り替える可能性があり、そうなるとトラッキングをするメリットが大幅に低下します。
つまり、情報が正しく伝わると利用してもらえないから、サイト管理者を欺く形での設置に踏み切ったのではないか……と、そういう風に考えられるわけです。現状は、そう疑われても仕方ない状況にあると思います。
そうでないと言うなら (そうでないと言ってほしいですが)、はてなは先の疑問に対して、「なぜそういう選択をしたのか」というところまで明確にして答える必要があるでしょう。
※しかし、外部JS埋め込みで提供者が態度を翻す、というリスクが徳丸本 (www.amazon.co.jp)で既に言及されていたというのは面白いですね。隙がなさ過ぎます。
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