原発労働記
2011年5月26日(木曜日)
原発労働記
公開: 2011年5月29日22時5分頃
読み終わったので。
- 原発労働記 (www.amazon.co.jp)
1979年に単行本、1984年に文庫で出版された「原発ジプシー」を復刊したもの。1978年9月から翌4月までにかけて美浜原発、福島第一原発、敦賀原発で日雇いの下請労働者として働いた、その経験を手記のような形で記したドキュメンタリーです。
下請労働者の現場目線で書かれているので、内容は非常に興味深いです。記憶に残った部分を順不同にメモ。
- 「ネッコー」こと熱交換機のピンホール検査が実に原始的な方法で、被曝しなくても粉塵がひどい。
- 「高圧給水加熱器」のピンホール検査を実施しているとき、これはどういう働きをするものなのか、という質問に現場の人は誰も答えられない。
- 黒煙が上がるのはNGだが透明な煙ならOK。安全のために必要だから対応するのではなく、反対されると面倒だから仕方なく対応するという発想。
- マスクが息苦しいため、作業員はあっさりマスクを外してしまう。
- 放射線管理教育の内容は原発ごとにまちまち。原発の安全性については教えられるが、マスクの付け方などの本当に重要なことは教えてもらえない。
- 管理区域から工具を持ち出すのにも検査があり、汚染されたものは持ち出せない……ので、検査をスルーしてこっそり持ち出す。
- 健康診断で駄目な数値が出ても、頼むと結構何とかしてくれる (改竄してもらえる) 場合がある。
- アラームメーターの故障で大量に被曝してしまっても、基準内の数字を報告する。
- 敦賀原発では定期検査のたびに電源敷設作業が必要になる (設計上、定期検査用の電源が考慮されていない)。
- 東電社員専用の放射線測定器がある (下請は使用禁止)。
特に印象深かったのは、きっちり定められているはずのルールが、現場では無視される状況です。全面マスクをつけなさいと言われても、全面マスクは苦しく、作業が続くと「とてもやっていられない」と外してしまうような状況。JCO臨界事故では裏マニュアルが作られ、その裏マニュアルさえ無視されるという実態が明らかになりましたが、そのような体質はずっと昔からだったのでしょう。
しかも、これはあくまで定期検査時の話なのであって、事故時の話ではないのですよね。このお話で出てくる最大の線量は、毎時100ミリレム程度。シーベルト単位に直すと1mSv/hです。それに対して、現在の福島第一原発1号機で観測されている数字は2000mSv/h。桁が全く違います。定期検査でもこれだけ壮絶なのに、今回の事故ではどんな環境になっているのでしょうか。
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