弥勒の掌
2008年11月15日(土曜日)
弥勒の掌
公開: 2025年2月21日2時0分頃
読み終わったのでメモ。
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予想通り、叙述トリックが使われている作品でした。しかし、予想とは違った面白さでした。まさか、ラストで笑える作品だとは。
かなり斬新などんでん返しがあります。普通のミステリは「誰が犯人?」ということを考えて、意外な人物が犯人だったりして驚くわけです。中には、「探偵役かと思われていた主人公が実は犯人だった」などという作品もありますが、この作品は……、っと、ネタバレになるので続きは下の方で。
最後の7行は、あれですね、地球に隕石がぶつかるシーンにドリフの音楽をかぶせた有名なMADがありますが、ああいう感じの印象です。悲惨なシーンのはずなのにスラップスティックを感じる、我孫子武丸らしい読後感です。
※あと、最近無線LANのセキュリティが結構話題になっていますが、こんなところでそんな話が出てくるとは思っていませんでした。しかし、いくら無線LANのAPがノーガードでも「いとも簡単に侵入」とは行かないと思いますが……まあ、この説明はきっと誇張なのでしょう。流れるパケットを見ているだけで十分なのでしょうしね。
……さて、以下、ネタバレです。
今回は結構本気でネタバレしてしまっています。ネタバレはこの作品の魅力を大幅に削ぎますので、これから読もうと思っている方はご注意ください。
※うっかり読んでしまったらごめんなさい。
……ということで、ネタバレですが。
教師、刑事の順で章が繰り返され、読者は順に読んでいくわけですが、実際の時系列は1章、3章、2章、4章、5章の順になっています。これが1つ目のトリックで、読者は2章の事件が3章の後の出来事だとはなかなか気づかないわけですね。
それからもう1つのトリックは……これ、ひょっとして「のだめカンタービレ」で思いついたのでしょうか? まあ、叙述トリックとしては普通だと思うのですが、これは気づかなかったです。
しかし、やはり一番面白いのは最後の章ですね。思わず笑いながら「弥勒が探偵役なのかよ!」とツッコんでしまいまいした。「探偵役かと思われていた主人公が実は犯人」というパターンは割とあるので驚きませんでしたが、まさか弥勒が探偵役だとは思いませんでした。「怪しげな宗教団体をつぶす」と見せかけて、結末もこれですからねぇ。
ある意味悲惨な結末なのに、笑いながら読んでしまったこともあってぜんぜん暗い印象が残りませんでした。もちろん悪い意味ではなく、これはこれで良い感じです。
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