WASForum Conference 2008: パネル・ディスカッション「デファクトCIO、CTOのためのWEBサイトにまつわるITガバナンスの品格」
2008年7月4日(金曜日)
WASForum Conference 2008: パネル・ディスカッション「デファクトCIO、CTOのためのWEBサイトにまつわるITガバナンスの品格」
1日目の最後のセッションはパネルディスカッション。あまり網羅的にメモできていないので、やりとりの一部のみの抜粋という感じになっています。
※実はPCのバッテリがピンチでメモ回数をセーブしたため、ほとんどメモしていませんでした……。orz
ちなみにパネリストは、サイオステクノロジーの山崎靖之氏、サウンドハウスの中島尚彦社長、ライフネット生命保険の中川達彦氏、奈良先端科学技術大学院大学の門林雄基氏、そしておなじみ、産総研の高木浩光氏。以下のメモでは発言者名の敬称は略させていただいています。
Webを活用したビジネスでの心構えとは?
- 中島
お上からの言葉が分かりやすい。行政から「セキュリティ大事ですよ」と言われちゃったらやるだろう
- 高木
今まで2回くらい出てはいるのですが……。
2001年にXSSの問題を経産省の審議官に説明したとき、「これはワームのように広がるのか?」と聞かれた。広がらないよなぁと思いつつもいろいろ説明した。
経産省からプレスリリースは出ている。IPAセキュリティセンターの取り組み、情報セキュリティ白書などもある。しかし、中島社長の耳には届いていない。
認識のある人は注意してくれるのだが、認識のない人の耳には届かないという問題がある。
- 高木
サウンドハウスには、SQLインジェクションを知っている技術者がいたのか。
- 中島
2006年の時点でも最低2人はいた
- 高木
カカクコムの話で「技術が大切だということを知った」と言っていた。ちゃんとやれば守れると言うこと。
穴さえなければ良いのだと言うことを知っているかどうかがキーになる。
ベンダーはソリューションを売ろうとする。ハッカーセーフは有効か。
- 中島
……(何も言わず)。
この後、中島社長はしばらく沈黙。
あと、どなたの発言か忘れましたが、「リアル店舗では『なんか中国人が多い』とすぐ分かるが、Webではログを監視していないと分からない」という話があって印象に残っています。
セキュリティ対策、どこまでやれば適切なのか?
- 高木
外注と自社でだいぶ事情が違う。外注のケース、特に自治体発注で、ロクに見ずに検収してその後脆弱性発覚ということがある。
安全な作り方のスタンダードを作れば良い。
専門技術者が評価される仕組みが必要。試験ではなく、本当のプロフェッショナルをうまく評価する仕組みが必要。
- 中島
戦争なんだ、道路で人が倒れている。理屈抜きで助けてほしい。免許とかどうでも良い
セキュリティ対策コストは誰が負担するべきか?
- 中島
行政にがんばってほしい。くだらん道路を造るくらいなら援助してほしい。
- 中川
セキュリティ価格は消費者に転嫁されるが、消費者には区別がつかない。
NGNだと匿名性が少なくなるのではないか。
- 高木
(ぼそっと)NGNはダメだと思いますが
- 門林
Webは利用者に労働させることで安くしている。企業側が負っていたリスクも消費者に押しつけられている。
カード会社も16桁のカード番号と数桁のパスワードという脆弱な仕組みを使い続けたいために情報を隠蔽する。今のカードシステムは考え直した方が良いのかもしれない。もう Felica に変えてしまったら?
アメリカ主導の「カード」というシステムにこだわる必要はないのではないか。そうすることでリスク負担の構造も変えられるのではないか。
- 高木
一般市民も勉強してほしいという話があったが、話を聞くと、どうもサウンドハウスではDBにパスワードを生で格納していたということのようだ。そのような実装は非常識。
技術的な常識を全て把握していれば何も起きないはず。そういう常識を共有できる方法はないのか。
対策はしつくした、CIO、CTOができることは?
- 高木
セキュリティを分かっている人材を評価する仕組みをつくる。
- 門林
良き翻訳者になれ。経営サイドの言葉と技術サイドの言葉を両方理解すること。
- 中川
PDCAサイクルが重要。常にチェック、見つけたらアクションという流れを会社のプロセスに流し込む。
- 中島
一寸先は闇のジャングルの中にいるという認識を持つ。光がほしい。光、ガイダンスがほしい。
- 山崎
対策をしつくした状態が仮にあったとしても、環境が変化したら漏れが出る。
監視、モニターが必要。中川さんのPDCAの話に同意。
私の感想
中島社長に言いたかったことを高木さんが言ってくれたので、すっきりしました。:-)
中島社長はひたすら「行政が頑張れ」という主張を展開していましたが、高木さんは「既にやっている」と反論。「サウンドハウスには、SQLインジェクションを知っている技術者がいたのか」という質問はまさに核心ですが、これに「いた」と答える社長が凄い。「じゃあ、どうしてSQLインジェクションでやられたのですか?」……という質問は出ませんでしたが、その質問をしても建設的な感じの議論にはならなそうですね。
やはり認識が大きく違うのではないか、ということを再認識させられました。
……2日目に続きます。
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