2012年3月9日(金曜日)
燃料プールの「幸運」の正体は偶然の重なりだった
公開: 2012年3月14日3時35分頃
この記事には驚きました……「4号機、工事ミスに救われた 震災時の福島第一原発 (digital.asahi.com)」。
東京電力福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配した4号機の使用済み核燃料の過熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった。
以上、4号機、工事ミスに救われた 震災時の福島第一原発 より
なんということでしょう。
4号機の使用済み燃料プールが「最悪の事態の引き金」として懸念されていた、という話は「官邸から見た原発事故の真実 (www.amazon.co.jp)」にも出ています。
では、この冷却機能の長期喪失という最悪の状態が起こった場合、福島原発で「最も危険」であったものは何か。
実は、それは「原子炉」ではなかったのです。
意外に思われるかもしれませんが、それは、「使用済み燃料プール」だったのです。具体的には福島原発四号機の使用済み燃料プールが、最も危険な状態に陥る可能性があったのです。
以上、「官邸から見た原発事故の真実」p123 より
続く話を要約すると、こんな感じです。
- 使用済み燃料プールには圧力容器や格納容器といった封じ込めのためのバリアが存在しないため、崩壊すれば「むき出しの炉心」になってしまい、放射性物質が容易に拡散する
- 四号機のプールには千数百本にのぼる大量の使用済み燃料があった
- そのうち数百本は炉心から取り出したばかりで、まだ高い崩壊熱を出している状態だった
そして、以下のような点が懸念されていました。
- このプール自体が水素爆発や余震による地震、津波などで崩壊するおそれがあった
- プール自体が健全でも、周囲の線量が高くなって誰も近づけない状況になると、注水ができずに冷却水が失われ、メルトダウンを起こす危険性があった
この懸念が現実のものになった場合、大量の放射性物質が拡散し、首都圏三千万人が避難を余儀なくされていた可能性があった……というのが、官邸が描いた「最悪のシナリオ」の内容です。これが起きなかった理由について、著者は「幸運」に恵まれた、と述べています。
そして、その「幸運」をもたらしたのは偶然の重なりだった、というのが今回の話です。
- 4号機の炉内は本来は4日まえに水を抜いて空になっているはずだったが、シュラウド工事の不手際の影響で水が張られたままになっていた
- 地震によって (?) 仕切り壁に隙間ができ、その水がプールに流れ込んだ
この水がなければ3月下旬に水がなくなる計算だったそうで。注水が開始できたのが3月20日ということなので、この水がなければ注水が間に合わなかった可能性があったわけですね。
こんな偶然の重なりに救われていたとは、なんたる幸運。
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