2011年9月7日(水曜日)
特許の名は「餅」
公開: 2011年9月10日13時5分頃
こんなニュースが……「サトウの切り餅」は特許侵害 知財高裁、一転認める (www.asahi.com)。
切り餅をふっくら焼き上げるための「切り込み」の特許をめぐる訴訟の控訴審で、知財高裁(飯村敏明裁判長)は7日、「サトウの切り餅」で知られる業界1位の佐藤食品工業(新潟市)が、業界2位の越後製菓(新潟県長岡市)の特許権を侵害したと認める判断を示した。
最終的な判決の前に、争点を絞り込むため特定の論点について判断を示す「中間判決」。昨年11月の一審・東京地裁判決は特許権の侵害を認めておらず、判断が逆転した。越後製菓は約15億円の損害賠償とサトウの切り餅などの製造・販売の中止を求めており、今後はこれらを認めるかについての審理が続く。
というわけで、サトウの切り餅が越後製菓の特許を侵害しているという判断になったようです。どの程度の損害賠償が認められるのかはまだ分かりませんが、請求は約15億円 + サトウの切り餅製造販売中止なので、かなり大きな話です。
この特許の中身が気になったので調べてみました。
特許は公開されていて、その内容は「特許電子図書館 (www.ipdl.inpit.go.jp)」で確認することができます。が、frameを駆使した読みづらい構成の上に、検索結果に直接リンクしようとすると、
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終了コード:[BE10602E]
とかいう意味不明なメッセージを見せつけられる羽目になります。まあなんというか、「本当にありがとうございました。もう二度と使わねぇよ、この●●サイト!!」という率直な感想を吐露したくなります。
幸いなことに、特許データをもっと読みやすい形で提供しているサービスがありますので、こちらを見るのが良いでしょう。
- 餅 - astamuse(アスタミューゼ) (patent.astamuse.com)
いきなり「餅」とあって何だろうと思うかもしれませんが、これは特許の名称です。「餅」という名前の特許なのです。こんな名前では当然のごとくバッティングするわけで、同じ会社から出ている同名の特許もあって訳が分からなくなります。
- 餅 - astamuse(アスタミューゼ) (patent.astamuse.com)
名前は全く同じ「餅」ですが、中身は違っていて、こちらは角餅ではなく丸餅に関する特許のようです。
ちゃんと内容が分かって他と区別できるようなタイトルをつけてほしいところですが、ライバルに注目されたくない時に、意図的に分かりにくい名前をつける場合があるのだそうで……。分かりにくい名前の特許は結構多いようですね。
さて、先に挙げた方の「餅」が問題の特許のようなのですが、中身を見ていくと非常に面白いです。「課題」にはこんなふうにあります。
本発明は、このような現状から餅を焼いた時の膨化による噴き出しはやむを得ないものとされていた固定観念を打破し、切り込みを切餅の立直側面に設けることで、焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず、しかも切り込みを少なくとも立直側面に沿う周方向に直線状にして対向二側面である長辺部の立直側面の双方に夫々形成することによって、焼き上がった餅が単にこの切り込みによって美感を損なわないだけでなく、逆に自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また現に美味しく食することができる画期的な焼き上がり形状となり、また今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができ餅の消費量を飛躍的に増大させることも期待できる極めて画期的な餅を提供することを目的としている。
これで一文。文が長すぎですが、「噴き出しはやむを得ないものとされていた固定観念を打破」する、「画期的な焼き上がり形状」の、「餅の消費量を飛躍的に増大させることも期待できる極めて画期的な餅」なのだそうで。
その具体的な方法は、ニュース記事にもあるように、餅の周囲に切り込みを入れるというものです。図面 (image.astamuse.com)もありますが、まあなんというかどこからどう見ても餅で (餅の特許ですから当然なのですが)、実に面白いですね。
とはいえ、先にも述べたように、これが15億円+サトウの切り餅製造中止の請求になっているわけですから、まったくバカにはできません。特許って面白いですね。
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