2011年7月17日(日曜日)
データセンターの冷却は人間のためなのかサーバーのためなのか
公開: 2011年7月22日21時30分頃
日経新聞にこんな記事が……「データセンターも「ガラパゴス」か 節電の夏が問う日の丸IT (www.nikkei.com)」。
データセンターはサーバーが持つコンピューター能力をインターネット経由で使う。技術的にはサーバーを遠隔管理することも可能だが、それでも「センターに出向いて直接作業」が日本では好まれる。首都圏に7割のデータセンターが集中する背景だ。
いやいやいや、誰が好き好んであんなところに出向くというのでしょうか。「技術的にはサーバーを遠隔管理することも可能」というのも凄い話で、いやもちろん正しいのですが、「技術的には」も何も、リモートでできることはリモートでやるのが普通です。日本の技術者はSSHも使えないと思われているのでしょうか……。
ただ、障害が発生してリモートからアクセスできなくなってしまう場合もあり、そのような場合には現地に行かないと解決できません。また、ハードディスクが故障した場合やハードウェアの増強が必要な場合など、ハードウェアの保守が必要になる場合もあります。そういった作業はリモートではできませんから、仕方なく現地にいって作業するわけです。
技術者はべつに趣味でデータセンターに出向いているわけではありませんので、日経新聞を読まれるビジネスマンの皆様はそこのところを誤解しないようにしていただければと思う次第であります。
「日本のデータセンターは人間が涼しいと感じるところまで室内温度を下げている。人間が作業するとなれば照明も必要になる」。こう話すのは、世界のデータセンター事情に詳しいコンサルティング会社カミノス・コーポレーション(東京・世田谷)の西川宏代表取締役だ。
いやいやいやいや。この方はデータセンターに入って作業したことがないか、あるいは極度の暑がりかのどちらかでしょう。データセンターはたいてい、人間には厳しすぎる寒さです。
一般にサーバーは気温35度の環境でも機能するが、例えば富士通の場合、センター内の設定温度は22~26度と日本の標準的なレベル。だが、西川氏は「米国では人間とサーバーを同居させない。設定温度は日本より2~3度は高い」と証言する。
「米国では人間とサーバーを同居させない」と力強く断言されていますが、米国ではハードウェア保守は不要ということなのでしょうか。もしそうなら凄いと思いますが。
とまあ、サーバー保守を経験したことのある人ならズッコケまくりな感じの記事ですが、後半は急にまともな話になります。
元ソニー幹部でグーグル日本法人の社長もつとめた辻野晃一郎氏はそんな見方をしている。
「日本はサーバーの寿命を延ばそう、壊さないようにしようと冷却にこだわるが、ムーアの法則がある限りハードは2~3年で古くなる。そうなったら捨てて新しいものに置き換えた方がいい。サーバーを耐久品ではなく、消耗品と考えれば冷却の必要性は下がる。米国はそんな風に割り切った発想をし、グーグルのPUEは1.1~1.2程度。品質を高める、ものを大事にするというのは日本人の強み、美徳だが、それがネットのネーチャー(性質)にあわず、動きが遅くなっているのは否めない」
こちらは妥当な話だと思います。しかし、「日本はサーバーの寿命を延ばそう、壊さないようにしようと冷却にこだわる」という話は「人間が涼しいと感じるところまで室内温度を下げている」という話とは完全に食い違っていると思うのですが、日経新聞はこういう矛盾点は気にしないのでしょうか。
サーバーの省電力が課題だということ、冷やしすぎではないかという議論があることは事実で、全体としては良い記事なのだと思います。ただ残念な事に、前半に明らかにクオリティの低いコメントが混ざっていて、それが全体を台無しにしてしまっている感じです。
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