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2011年11月28日(月曜日)

「科学的思考」のレッスン

公開: 2011年12月4日23時50分頃

読み終わったので。

二部構成になっていて、前半では科学的な思考法について、後半では原子力発電の話を交えつつ「リテラシー」の話が展開されます。後半は、どちらかというと一般市民と科学との付き合い方という観点で、コミュニケーションの話に近いです。「もうダマされないための「科学」講義 (www.amazon.co.jp)」と似たようなテーマの本だなあと思ったら、巻末で

何がショックといって、自分の本の校正をしているときに、よく似たねらいの、しかもよくできた本が先に出ることくらいショックなことはないです。

以上、p287 より

と、紹介されていますね。

興味深く思ったのは後半の方です。「もうダマされない……」にもトランス・サイエンスという言葉が出ていましたが、こちらでも同じ概念が紹介されています。ページ数を多く割いていることもあって、整理の仕方はこちらの方が分かりやすいと思いました。

トランス・サイエンスの問題は、大きく次の三種類に整理できます。

(1) 知識の不確実性や解答の現実的不可能性のせいで解決できない。

(2) 対象がそもそも不確実な性質をもつために解決できない。

(3) 価値判断とのかかわりが避けがたいために解決できない。

原発事故に関して生じている問題にはこの全ての特徴が当てはまるでしょう。

以上、p199 より

それから印象に残ったのはこのあたりの表現。

必要なのは、「科学がどういうふうに進んでいくのか」「科学がどういうふうに政策の中に組み込まれているのか」「科学はどんな社会的状況が生じたら病んでいくのか」についての知識です。原子力発電の場合もそうです。

以上、p210 より

科学は自分たちとは関係ないよ、という態度では駄目だし危ないという話ですね。それから、最も印象に残ったのはこのくだりです。

この方は、さらに「でも、これだけ安全ですよと言っても、安心とは別ですからね」とおっしゃいました。いくら科学的には安全だと言っても、皆さんは安心できませんよね、ということです。ずいぶん物わかりのいい言い方ですが、これはまさに、安心とは心の問題である、科学的安全性と、安心は別問題です、と言っているわけです。

以上、p254 より

「科学的には安全」という言葉を一方的に繰り返しても意味がないと。単に正しいというだけでは駄目で、何が求められているのかを考えることも含め、コミュニケーションの仕方が重要だということですね。

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