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2010年4月7日(水曜日)

企業のリンクポリシーが無茶な要求をする理由

公開: 2010年4月7日20時5分頃

日経新聞電子版始動、しかし個別記事へのリンクを禁止、違反者に損害賠償請求も示唆 (slashdot.jp)」。

またまた出ました。無断リンク禁止。このような主張は、古い企業にありがちなものですね。

個別記事にリンクさせないのはナンセンスだ、リンクするたびに連絡しなければならないなんて手間がかかりすぎる。どうしてこんな無茶な要求をするのか全く理解できない。……そう思われる方が多いと思います。

しかし、実はこの要求には理由があります。仕事柄、大企業のWeb担当の方や法務の方と議論させていただく機会もあるのですが、「なぜこんなポリシーを作ったのか」という問いに対する答えは、おおむね以下のようなものでした。

※あと、フレーム内リンクに関する訴訟の話を聞いたので (Total Newsの訴訟) フレーム内リンク禁止の規定を追加した、とか他にも色々ありますが、ここでは割愛。

前者の話はまだ分かるとしても、後者のCIの話については、ぴんと来ない方もいらっしゃるでしょう。

そもそも、企業サイトへのリンクとはどんなものでしょうか?

そう問われると、多くの方は、「ブログで製品を紹介しつつ、その製品ページへリンクする」とか、「ブログでコンテンツを引用しつつ批評し、引用元にリンクする」とか、そういったものを想像するのではないかと思います。

しかし考えてみてください。そもそも、20世紀には「ブログ」というものが存在していませんでした。トップページにはアクセスカウンターが付いていて、URLには /~ が含まれていて、ベッコアメが全盛だった、そんな時代です。そして、必ずと言って良いほどあったのが、「リンク集」というコンテンツ。どのサイトに行っても「リンク集」というページがあって、バナー画像が並んでいたものです。項目は多いほど良いと思われていたのか、関連サイトはもちろん、Yahoo! Japanや作者お気に入りのサイトなど、何でもかんでも列挙されていました。

これは、企業としては警戒するべきポイントになります。

ブログ記事での紹介と違って、リンク集には脈絡が無い場合がほとんどです。コメントがつけられていたとしても、「いつもお世話になっています」というような曖昧なものだったりすると、取引関係があると誤解されるおそれがあります。また、他の企業と並べて掲載されることもあり、そうすると前後の企業との関係性を誤解される可能性もあります。

また、リンク集にはバナーがつきもので、中にはロゴを勝手に使うような人もいました。会社と無関係な個人に、勝手にロゴを使われるのは困ります。子会社や販社のサイトであればロゴを使っても良いのですが、その場合、ロゴがCI規定に従って正しく使われているかどうかチェックする必要があります。

こういう状況で策定されたのが、無断リンク禁止のポリシーです。このポリシーによって、企業は以下のようなことを要求しました。

こうして見ると、それほど無茶な要求でもないと思いませんか。リンク集に掲載するのは1回だけでしょうから、連絡もそのときの1回だけで良いわけですし、リンク集からリンクするときは、普通トップページにリンクするでしょう。当時はこれでちゃんと目的が果たせたのです。

しかし今や、そんな「リンク集」はほとんどみかけなくなりました。「リンク」という言葉からは、「ブログ等で何かを紹介したり批評したりする目的で、企業の個別ページを紹介するもの」が連想されるようになりました。

改めてまとめると、こういうことです。

無断リンク禁止のポリシーは、今や完全に時代遅れのものとなりました。そのようなポリシーは、ただちに見直すべきです。実際、リンクポリシーを見直した企業もたくさんあります。

しかし残念なことに、時代遅れのポリシーを掲載し続けてしまっている企業があることも事実です。それは、ポリシーが適切だと思っているというよりも、見直しの機会がなかったとか、今まで問題が起きていないからとか、そういった消極的な理由であることが多いようです。

さらに残念なのは、その時代遅れのポリシーをコピーして増殖させる人がいることで……。

中には、「どうせ読まれないからこのままで良いのだ」と思われている方もいるようですが、企業サイトの一部として掲載する以上、そこに掲載された文言は企業コミュニケーションの一部になります。リンクポリシーを制定した当時の意図を理解した上で、積極的に見直しをしていっていただきたいと切に願います。

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